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岩林誠6

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「定住人口の拡大」は目的として正しい?

【岩林誠(いわばやしまこと) 経歴】
四街道市役所シティセールス推進課長。J-PHONE/ボーダフォン宣伝部、I&S BBDO(広告代理店)、はるやま商事マーケティング部等でのマネジメントを経て、四街道市初めての民間出身管理職として現職。

(記事提供=シティプロモーション超入門 )

 地方自治体のシティプロモーション幼年期には、コミュニケーション関連業務に集中すべきだろうと前回書いた。それでは次のような目的設定はどれが適切なのだろうか。

 

 シティプロモーションの推進で、

  • 定住人口の増加を図ります!
  • 市のイメージアップを図ります!(そもそも「イメージアップ」という言葉自体、正確さのない和製英語である)
  • 観光客数を増加させます!
  • 企業誘致を推進し、法人税収の拡大を目指します!
  • 認知度向上を図ります!

 こんなことを目的とした「シティプロモーション戦略」は少なくない。時にはこれら項目を複数設定している自治体も少なくない。もちろん、各自治体の現況が異なるため、多様な目的設定となってしまうのは当然のところだ。しかしながら、最も気になるのは「身の丈に合わない目的」を目指していないかということだ。

 もう少し正確にいうと、「身の丈に合わない目的」とは、その目的の遂行に制御しきれない多くの種類の変数が関与している場合のことだ。もっとも典型的なものとしては「定住人口の拡大」だろう。

 たとえば、定住人口を増加させる因子について、思いつくものを挙げるならば、その地域の地価、働ける企業・職場の有無、勤務地までの距離、交通の便、商業施設の有無、自然環境、教育環境、学校までの距離(特に高校以降)、医療機関の有無、道路の整備状況、自動車や航空機の騒音、行政の子育て施策の充実度、公共施設の充実度、レジャーや観光スポットの有無、地域のイメージ等々、とても多くの要素が関係していることは想像に難くない。

 それに、地域特性によってはこれら因子の中でのキードライバー(目的を実現するために最も重要なカギとなる因子)も異なってくるし、人によって重視するポイントも異なってくる。

 また、行政職員の方ならすぐにわかるだろうが、上述の要素は、都市、福祉、教育、環境、産業、観光等々、行政内部でも担当部門が分かれている。しかも、定住に大きな影響を与えていると思われる地価や住宅価格などについては行政の政策、施策で関与できる部分は小さく、ほぼアンコントローラブルだ。

 にもかかわらず、シティプロモーションの目的は「定住人口の拡大」であるべきなのか?

 もちろん、「定住人口の拡大」をシティプロモーションの目的にすることを否定するものではないが、だとするならば、かなりの覚悟とマネジメント改革をもって臨まなければならない。

 広報広聴部門を母体に設立したシティプロモーション部門の場合、それを担わせるのは、正直なところかなりの困難さがつきまとう。困難というか、市民への説明責任を考えた場合にはお勧めできない。

「定住人口の拡大」を本気でシティプロモーションの目的と設定するならば、一部門にその重責を担わせるのではなく、全庁挙げたプロジェクトとして組織横断的な取り組みとしなければ、その達成はあり得ないと言っても過言ではない。

 このことは「観光客数の拡大」でも「企業誘致」でも「イメージアップ」でも同様である。目的の設定をする場合は、その達成にはどんな要素が関わっているのかきちんと要因分析し、関係部門と連携する(できる)前提が必要である。

 例えば、観光客数の増加因子ならば、観光スポットの魅力度、フォトジェニック度、娯楽性、交通の便、都市圏からの距離、宿泊施設の有無、食べ物のおいしさ、子供向けサービスの充実度、高齢者向けサービスの充実度、ペット対応の充実度、等々であり、関係部門としては、観光振興、産業振興、都市、こども福祉、広報部門等であろう。

 本当に連携してシティプロモーションに取り組める?

「定住人口の拡大」はお勧めできないというと、消極的に聞こえるかもしれないので、逆に実現するための処方箋も書いておこう、やや乱暴ながら。

 私が考えるのは次のふたつの方法だ。

1) 剛腕な首長がその牽引力を生かしてシティプロモーション主導の体制を作る、あるいは、そのようなマネジメントを行う

2) 行政にありがちな縦割り組織を解体し、他部門と連携しやすい組織統治を行う、あるいは、シティプロモーション組織を他部門より上のレイヤーに置く

 1は首長のキャラクターやそれができる環境に依存するだろう。本来は2の方法が望ましいが、これには既存体制側の抵抗もあるだろう。

 しかし、言っておくと、他部門と連携して同じ方向を向いて組織全体が動くということは、民間企業では当たり前のようにやっている。もちろん、上手くできない場合も多いが、経営者がしっかりしていれば、少なくともそのような考え方や方向性に抵抗することはない。そういう意味ではシティプロモーションの導入とは、行政組織のマネジメントを再考するいい機会だ。これについてはまた別の機会に書こうと思う。

 話を戻すが、シティプロモーションの目的設定を行うには、そのカタカナ言葉の耳当たりの良さに踊らされてはならない。目的とする事柄が本当に実現できるものであるのか、実現するための要因はコントローラブルなのか、目標やKPIが大きすぎないか、そのフィージビリティスタディ(実現可能性の検証)を事前に行うことがとても重要だということである。

 フィージビリティスタディなく、安易な目論見でシティプロモーション活動に取り掛かってしまうと、のちに「シティプロモーションで人口は増えたのか?」という、これまた安易な議論になりかねないのである。

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