コラム

シティプロモーションの定義~民間企業を参考にしてみる

岩林誠5

【岩林誠(いわばやしまこと) 経歴】
四街道市役所シティセールス推進課長。J-PHONE/ボーダフォン宣伝部、I&S BBDO(広告代理店)、はるやま商事マーケティング部等でのマネジメントを経て、四街道市初めての民間出身管理職として現職。

(記事提供=シティプロモーション超入門 )

 さてさて、それでは「シティプロモーション」とは一体どんな領域の仕事を指すのか。私自身の経験もあって、民間企業での部門名を参照してみると、自治体のシティプロモーション、シティセールスとはどんな定義が妥当なのか、何をミッションにすればいいかが見えやすくなるような気がしている。 

 「シティプロモーション」や「シティセールス」の業務が、民間企業の「広報」「宣伝」「セールスプロモーション」に近く、「マーケティング」ないしは「ブランドマネジメント」の一部にも関わっているのではないかと前述したが、民間企業では、おおよそ次のような業務を担っている。

 民間企業での「広報」は、職務を大きく分けるとふたつ。ひとつは企業広報、もうひとつは製品広報である。これに加えてIR(株主向け関係づくり)やCSR(企業の社会的責任に基づく顧客やステークホルダーとの関係づくり)を同じ部門で行っているケースもある。

 広報活動の主なアプローチ先は、テレビ、新聞、ネット等のメディア企業(広報業界では媒体社と呼ぶことが多い)の記者や編集担当である。つまり、テレビ局の報道担当者や新聞記者に企業情報や製品情報を提供して、ニュースや記事にしてもらうということだ。なので、コミュニケーションのあり方としては、いわゆるB to Bである。

 ただし、最近は広報活動のあり方が大きく変わってきている。やはりそれはインターネットの普及によるところが大きい。ウェブサイト、メール、SNS、動画サイト等のプラットフォームを用いることで、マスメディアを経由することなく、顧客や一般消費者、市民に情報をキャスティングできることができるようになったからだ。この場合のコミュニケーションは、B to Cである。

 20世紀までの広報活動は、ほぼ報道対応を指していたが、現在の広報活動は、非マスメディア対応、すなわち消費者や市民へのダイレクトコミュニケーションの比率が高まっているのは言うまでもない。ただし、今もなおマスメディアの情報の到達力はあなどれない。Twitterや検索エンジンの上位ワードは、やはり「今」放映中のテレビの報道だったり、テレビドラマやテレビで見かけるタレントに関する話題が多い。つまり、インターネット上でバズを引き起こすための「情報の振り出し」のような役割である。

 一方「宣伝」だが、広義では広告活動に広報も含んだものを総称して宣伝と呼ぶ場合があるが、ここではわかりやすく「宣伝=広告+販売促進(セールスプロモーション)」と定義して、広報とは分けておきたい。

 広告は、企業や製品の情報をマスメディアやインターネットなどを通じて広くアピールすることである。その名の通り「広く告知する」こと。広告は、テレビ局や新聞社などの媒体社から媒体(つまり、コマーシャルを放映する枠や新聞の広告スペース)を購入して、そのなかに広告を出稿するという活動が主である。

 また、販売促進活動(セールスプロモーション)とは、ポスターやPOPを使った店頭での製品・サービスのアピールやイベントスペースなどでのデモンストレーションや製品体験などを指す。抽選で賞品が当たるキャンペーンなども販売促進策のひとつである。要は「売り場」に近い接点(コンタクトポイント、タッチポイントなどと言う)で、より直接的に「売り」をプッシュするような活動全般を指している。

 つまり、広報が「事実の伝達」を主な業務としていることに対し、宣伝は企業や製品をもっと「魅力的に見せる」「欲望を刺激する」ためのクリエイティブを付加した活動だと言える。

 広報のコンタクト先が媒体社であり、ニュースや記事の露出のあり方は媒体社の編集作業に依存するのに対し、宣伝のコンタクト先は消費者や市民直接であり、広告表現も好きなように創作できる(もちろん、どういったメディアでも広告表現に関する考査がある)。ただし、広報活動がプレスリリースの制作等、比較的低コストで運用できるのに比べ、広告や販売促進活動は、多くの場合、媒体を購入する費用と広告のアイデア開発、広告制作やツール制作の費用がかかってくるため、高コストになるのが一般的である。

 ただし、近年、前述したように、ダイレクトに世界に向けて情報発信できるインターネットが普及したことで、広報活動と宣伝活動の境界があいまいになってきている。以前は多くの人々に情報を届けようとした場合、大きなコストを費やしてマスメディアを利用するしか方法がなかったわけだが、今はオウンドメディアと言われている自社のウェブサイトや無料で使えるSNSや動画共有サイトなど、比較的低コストで利用できるメディア環境が整ってきている。そのため、民間企業でも広告を中心とした宣伝活動と広報活動の連携の必要性が高まっている。

 それから、シティプロモーションが民間企業における「マーケティング」や「ブランドマネジメント」という業務に一部関係すると書いたのは、次のようなことだ。

 マーケティングに関する4つのPについては、改めて述べることにするが、シティプロモーションの業務の中に「開発」の領域が入ってきた場合、つまり、新たな観光拠点の開発、新たな地域名産品の開発、新たな地域ブランドの開発等々の業務は、民間企業では通常「マーケティング」の領域であることが多い。

 また、市章デザインの管理、新たなロゴマークの開発、タグラインと呼ばれるコンセプトワードやフレーズの開発、これらの使い方に関するガイドライン作成や庁内での運用管理等々の業務は「ブランドマネジメント」の領域である。

 つまり、行政にとって未知の領域でもある「シティプロモーション」であるが、様々な自治体の「シティプロモーション戦略」に目を通してみると、民間企業では、広報、宣伝(広告+販売促進)、マーケティング、ブランドマネジメントと専門が分かれている業務領域が、自治体のシティプロモーションのミッションのなかに部分部分混在しているような状況であることがわかる。

 「ブランドマネジメント」は、広報や宣伝のようにコミュニケーションの領域に近い業務であることから親和性は高いものの、「マーケティング」の一部である「開発」に関する業務が事務分掌などに入っている場合は、なかなかタフな作業になってくる。つまり、街を売るための「ネタづくり」もやらなければならないからだ。

 シティプロモーションの業務として「ネタづくり」まで踏み込むか否か。これは大きな分かれ道である。

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