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岩林誠6

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「戦略」立案する(あるいは見直してみる)

【岩林誠(いわばやしまこと) 経歴】
四街道市役所シティセールス推進課長。J-PHONE/ボーダフォン宣伝部、I&S BBDO(広告代理店)、はるやま商事マーケティング部等でのマネジメントを経て、四街道市初めての民間出身管理職として現職。

(記事提供=シティプロモーション超入門

 SWOT分析について前回書きましたが、自己分析を行い、自分の街の強みや弱みを特定し、課題を抽出したら、戦略を立案します。戦略、戦術、ターゲットなど、軍事用語を使用することは好みませんが、マーケティングそのものが市場での「戦い」「勝利」を前提としているため、わかりやすさを優先して、ここではそのままにしておきます。
 戦略とは、大くくりにいうと、「誰に対して、どうすべきか」です。昨今のシティプロモーションの傾向でいうならば、「20代、30代夫婦に、この街に住んでもらえるようにする(転居してきてほしい)」「中高年に、この街に観光に来てもらえるようにする」「県外の市民を中心に、この街の物産を買ってもらえるようにする」というようなことです。しかし、単に「住んでもらえるようにする」では、何をすればいいのか施策を考えるディレクションになりませんので、もう少し整理してみます。
 あまり難しく考えすぎず、戦略は次のように最初は大雑把に考えたほうがいいと思います。
1.目的: 何のために計画、実行するのか
2.目標: それはどれくらいを目標とするのか
3.ターゲット: 誰に対してアプローチするのか(人口属性、心理属性、行動属性)
4.現在: ターゲットの現状はどのようなものか(行動的側面、心理的側面)
5.到達点: ターゲットをどのような地点に到達させたいか(期待する行動、期待する気持)
6.方向性: そのためにどのようにすべきか
 例えばでいうと、こんな感じです。
1.目的: 交流人口の増加
2.目標: 交流人口数50万人(現在30万人)
3.ターゲット: 20代、30代の女性中心(人口属性)、まだ居住地を決定していない(心理属性)
4.現在: 現在は未婚、実家あるいは借家住まい(行動的側面)、○○市のことはあまりイメージがない(心理的側面)
5.到達点: ○○市に遊びに来る、買い物や飲食をする(期待する行動)、楽しい街だと感じる(期待する気持)
6.方向性: ターゲットに即したタッチポイントで○○市の認知を向上させる、グルメ、観光を軸として○○市への訪問を促す
 ただし、以前のブログ(シティプロモーションの目的を見直してみる)でも整理してみましたが、シティプロモーション活動(ないしは部門)によって、どこまでを射程とするかで目的も目標も変わってくるので、自ずからターゲットや目指す到達点も変わってきます。特に「人口」に関することを目的とする場合は注意が必要なことも「定住人口の拡大」は目的として正しい?」で書きました。
 簡単にいうと、シティプロモーション部門の事務分掌にないこと、あるいは、事務分掌で制御できない目的設定はすべきではないということです。皆さんの自治体ではどうでしょうか。改めてチェックしてみることをお勧めします。
 これは精神論として積極的/消極的という問題ではなく、市民への説明責任、予算や業務の執行責任に関わるからです。シティプロモーション部門だけではできないことを目的や目標に設定しなければならない場合は、庁内の関係部門との調整、あるいは首長の強いリーダーシップ、そのいずれかが必須です。
 また、目標は、可能な限り測定可能なものにするべきです。認知率がわかっていないならば、これも前に「街の健康診断とシチズンジャーニー」で示したように、定量調査を行うなどして、現状を確認したうえで目標設定するべきでしょうし、量的に把握できないものであれば、定性的な(質的な)目標設定でもいいでしょう。
 そして、特に大切なのは5の「到達点」です。微分すると、期待する気持ち(expected perception)、期待する行動(expected action)、期待する経験(expected experience)などから構成されます。シティプロモーションの具体的な施策を企画するうえで、どのような気持ちになってほしいのか、どのような行動を促したいのか、どのような経験をしてほしいのかを明確に決めておかないと施策の立案や施策の選択ができません。「その施策でこの街が楽しいと思ってもらえる?来てくれる仕掛けになってる?」というように具体的な事業を決定するうえでの判断基準になるからです。
 ターゲットの設定もよくあるように性別、年代くらいの人口属性だけにとらわれるのもあまり芸があるとはいえません。ターゲットとする人々はどこに住み、どんなことを考え、どんな行動をとっているのか、細かすぎる設定は必要ないものの、できるだけその姿を明確にすることが賢明です。ターゲットのモデル像を「ペルソナ」と呼ぶこともあります。ペルソナの原意は仮面です。人間は多かれ少なかれ社会的な仮面を着けて市民を演じています。そのようなターゲットの姿を想定し、行政としてその人たちをどのように誘導したいのか、市民のインサイト(洞察)を見つめることがとても重要です。
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