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鬼が仏になった里(大分県豊後高田市)「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(227)」

修正鬼会が開かれる天念寺講堂(豊後高田市)

[記事提供=旬刊旅行新聞]

大分県豊後高田市といえば、真っ先に浮かぶのは「昭和の町」であろうか。

豊後高田は、昭和40年代までは国東半島で最も栄えた商店街だったが、大型店の郊外出店や過疎化のため、一時は「犬と猫しか通らない」と言われるほど寂れた状態となっていた。この町で、2001年に始まった町おこしでは、衰退して建替えもままならない昭和30年代以前の古い町並みを逆手にとって、中心商店街の町並みを保存・再現、これを観光まちづくりの拠点にするという逆転の発想であった。

しかし、今回の目的は、この昭和の町周辺に広がる田染荘や、国東半島全体に散らばる六郷満山と呼ばれる寺院群である。六郷とは両子山を中心とした山稜の間に開かれた6つの郷、満山はそこに築かれた寺院群を指し、古くから六郷満山文化と呼ばれる独特の山岳宗教文化が栄えた。

豊後高田市と国東市の日本遺産ストーリー「鬼が仏になった里」は誠にユニークな物語である。鬼と言えば、恐ろしいものの象徴だが「くにさき」の鬼は人々に幸せを届けてくれる。おどろおどろしい岩峰の洞穴に棲む「鬼」は不思議な法力を持ち、鬼に憧れる僧侶たちによって「仏(不動明王)」と重ねられていった。火祭りの修正鬼会の晩、共に笑い、踊り、酒を酌み交わす。「くにさき」では人と鬼が長年の友のようにつながれる、といった物語である。

急峻な崖の上にある五辻不動(国東市)

国東半島の溶解岩のゴツゴツとした地形は、誠に鬼たちが棲んでいそうな異界を思わせる。地域には、鬼たちが腕力で大岩を割り、その石を積んで一夜で石段を造ったなど、鬼にまつわる伝説も数多く残されている。その鬼に出会える夜が「修正鬼会」である。鬼たちは松明を持って暴れまわり、火の粉が舞って咽るような煙が充満する。鬼に松明で尻を叩かれる荒々しい「御加地」という神事があるが、寺の講堂では、悲鳴よりも村人たちの笑い声がよく響いている。

そんな鬼たちに僧侶たちはむしろ憧れた。国東の6つの郷には、最大65カ所の寺院が開かれ「六郷満山」と呼ばれる仏の世界が創られた。平安時代、この地に密教文化が入ってくると鬼たちは不動明王に重ねられるようになる。国東では、不動明王は丸顔で優しい表情をした像が多い。怖い鬼も仏になって人々の願いをかなえてくれるという、誠に稀有な地域である。修正鬼会は、江戸時代まではすべての寺で行われていたが、現在も岩戸寺や天念寺などの寺院で受け継がれている。

11月下旬、この豊後高田に九州・沖縄全域の15の日本遺産地域が集い、その相互交流と連携を目的とするキックオフシンポジウムが開かれた。誠に広域な連携で、その方向性は全くこれからだが、「九州沖縄大国」というメインビジュアルも完成、これからいくつかのテーマによる横串しを入れて、事業ベースの連携を進める意向である。新たな試みに期待したい。

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