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【内閣官房参与 岡本全勝 #1】復興庁の役割は『暗闇の中の灯台』

【岡本全勝(おかもとまさかつ)経歴】
1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒。自治省入省。富山県総務部長、総務省交付税課長、内閣総理大臣秘書官、自治大学校長、東京大学大学院客員教授、2011年に東日本大震災被災者生活支援特別対策本部次長、2015年より復興庁事務次官を務め、2016年から内閣官房参与。

―2019年3月10日、丸ビルホールで開催された「よんなな会」。400名の参加枠は募集後まもなく定員に達し、全国から国家公務員、地方公務員が集まった。翌日に3月11日を控えていたこともあり、登壇者の一人は元復興庁事務次官で、現在、内閣官房参与である岡本全勝氏。同氏から東日本大震災の経験について、そして、40年にわたる公務員の経験から得た知見が語られた。

前例がないからこそ、立ち向かう

岡本氏:公務員になって現役で38年働きました。そのうち、地方公務員は11年です。今は非常勤の公務員で福島の復興に携わっていまして、公務員生活が40年となりました。

 まず、最初に東日本大震災の復興について振り返ってみたいと思います。平成の30年が来月終わろうとしていますが、マスコミでいろんなことを振り返る特集記事が掲載されています。そのうちの一つに必ず出てくるのが大災害の時代です。

 阪神淡路大震災、そして東日本、その他にも熊本地震、あるいは豪雨災害。本当に大災害が続いた時期でした。みなさんお若いので、阪神淡路大震災のことを覚えておられないと思うんですけども、初動が非常にまずかったんです。大きな批判を受けました。
 それ以来、想定外のことが起きるたびに、経験を積み重ねてきました。大災害というのは、前回とは違うものが来るんです。前回と同じことが起きたら、公務員たちは上手に対応します。東日本大震災は、千年に一度の大災害と言われました。それから、日本として初めて経験する原発の事故が起きました。

 これまで被災者支援、復旧・復興に携わってきました。君達の先輩にいろいろ指示をするんですね。そうすると、ときどき、「前例がありません」と言う職員がいるんです。
 昔の僕だったら書類を投げつけたのですけれども、だんだん人間が丸くなってきて、怒らずに「大宝律令を読んで探してくれ」と言うようにしています。千年以上前のものだから、そこまでさかのぼれば前例が出てくるか‥‥と。

会場:(笑)。

岡本氏:それでも気づかない職員がいるんですね。前例がないから、復興庁の仕事がある。前例がないから、それに立ち向かうんです。

遺体に配慮し、がれきを片づける

岡本氏:スライドを見ながら、思い返してもらいましょう。宮古市田老地区の写真です。合併前は田老町という町でした。万里の長城と言われた巨大な防潮堤がありました。何度も津波を経験したので、長い年月をかけて造りました。この盤石と言われた防潮堤があったにもかかわらず、町の家屋が全部潰されました。阪神淡路の時は、がれきを片付けたらそこに自宅を再建すればよかったんですが、ここは津波が来る恐れがあるので、住宅の建築を禁止しました。

 それ以前に、がれきの片付けが大変だったんです。新聞は復興が遅いといろいろ言いますけれども、復興はそんなに簡単なもんじゃない。地元の市町村長さんたちと当時、「このがれきを片付けるのに3年かかるだろうか、それとも5年かかるだろうか」という議論をしていたんです。
 環境省は、国費でがれきを片付ける作業をしてくれました。しかし、がれきの片付けはブルドーザーではできない。下に埋もれているご遺体があるかもしれないからです。人力でやらざるを得ない。そこにあるご位牌、写真やアルバム。全てを失った家族にとって、それは非常に貴重なものです。
 ところが、他人様の家に断りもなしに入っていって、物を片付けるわけですよね。本来は、所有者の了解を取って作業する必要がある。しかし、元の居住者がどこにいるかわからない。そこで、特例を作って進めました。

24時間稼働を続けて、『暗闇の中の灯台』となる

岡本氏:政府の本部で私が指揮をとった場所は官邸の向かい、今の8号館が建っているところに、プレハブの建物がありました。原子力事故・災害対応は総理が官邸でされる。津波・地震の方は私の方が引き取って、そこでやりました。事務所には寄せ集めの会議机と椅子が70席ありましたが、立って仕事をしている人もいました。椅子と机が足りなかったからです。各省の職員、そして自衛隊・消防・警察にも来てもらって、24時間のコールセンターを設置しました。

 本当は、私も震災の現場に行って手を動かしたい。だけど、私がする仕事はそれじゃない。当時、目指したのは『暗闇の中の灯台』になることです。どういうことかと言うと、各県庁や市町村役場、あるいは各省のいろんな部局が、断片的な情報をいっぱい持っています。しかし、彼らは誰がどこでどんな情報を持っているかわからない。それを、ここに来れば全て分かる状態にする、と。
 震災直後の避難者数47万人という人数も、違うという自信がありました。新聞記者にもそう言いました。「今はこれしか数字がないんだ」と。避難者を数えている暇があったら飯を送らないかん。棺桶を送らないといかん。暗闇の灯台は、情報を集めて必要な人に流したわけです。食料が足りない、薬が足らない、お医者さんが足らない、と。70席が24時間稼働していました。

よんなな会では今後以下の日程で、イベントを開催予定です

・2019年9月15日(日)よんなな会in関西 甲南大学岡本キャンパス
・2019年11月16日(土)よんなな会@渋谷ヒカリエ

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