(文=市川市 鳥羽 稔)
この度、学陽書房様より機会をいただき『自治体の人事担当になったら読む本』を刊行しました。
本書は、新たに自治体の人事担当者となった方に、日々の仕事に役立てていただくために執筆しました。
今回は、HOLG.jp様のご厚意で、本書をご紹介する機会をいただきましたので、この場をお借りして、本書執筆の背景、本書の特徴をご紹介します。
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「自治体人事に関しての知識を凝縮した一冊」をつくりたい
自治体の人事の仕事は「人事行政」とよばれ、行政運営に必要な人材を確保し、その人材が持つ能力が十分に発揮されるよう意欲を高める、総合的な取り組みです。
人事の仕事と一言でいっても、「職員を採用する」「採用後の配属を決定する」「人事異動を行う」「研修を実施する」「人事評価を行う」「給料を支払う」「勤務時間・休暇などの勤務条件を運用する」など、幅広く、一つ一つが専門的な内容です。
筆者は、前職の国家公務員時代を含め、17年余り人事行政に携わってきました。
ただ、実務を進める中では、自治体人事に関する書籍が地方公務員法の解説が中心であり実務に沿っていないこと、各分野が専門的であり、書籍が分かれていることから、初学者が人事の仕事の全体像を把握することが難しいと感じていました。
さらに、組織運営のための人材活用、いわゆる「人材マネジメント」に関しての書籍の多くは、民間企業を題材としたもので、自治体組織、職員にそのまま適応しづらいとも感じていました。
今回「担当者になったら読む本を書いてほしい」との依頼を受け真っ先に思ったことは、「自治体人事に関する法令・仕組み」だけでなく、「働く人の意欲向上」「新しい働き方への対応」「心構えや仕事術」など人材マネジメントの部分も含め、「一冊で必要な知識が凝縮された本」にしたいということでした。
人事担当者は、まずは全体像、関連性を把握しよう
自治体の規模によって異なりますが、それぞれの仕事は、係や担当者ごとに割り振られていることが一般的だと思います。
それぞれの仕事を進めるにあたっては、地方公務員法、条例規則、労働法令の理解が必要です。また、国に準拠する必要があるため、国家公務員に適用される人事院規則も押さえる必要があります。では、仕事を進める上で、割り振られた仕事のみ理解を深め運用すれば十分なのかといえば、そうではありません。
それぞれの仕事は、関連し合って、職員の意欲、職場環境に影響を与えています。例えば、採用、昇任、退職などの日々の任用手続には、給与や共済などの手続きも伴います。それぞれの関連を十分に理解せずに仕事を進めてしまい、職員の生活に思わぬ影響が出れば、人事部局への信用に関わります。また、人事担当者としてキャリアを築いていく中では新たな人事施策を検討する場面も出てきます。その際にも自分の仕事だけでなく、人事部門全体の仕事を把握していく必要があるでしょう。
本書では、第1章で、まず業務の全体像・スケジュール・全体の仕組みを解説したうえで、第2章より採用退職、給与制度、人事評価・異動、職場環境、多様な人材活用、人材育成と、それぞれの分野について紹介しており、全体像の把握に役立てていただければと思います。
「働く人」と「新しい働き方」も理解しよう
自治体人事の仕事は、「人事行政」という行政活動の一環です。したがって、人事担当者の仕事は、法令・規則に沿って行うことが原則となります。
実際の運用に際しては、人事行政の目的である「意欲を高める」といった点を踏まえ、「目の前の仕事が、職員の意欲にどう影響を与えているのか」といった視点も大切です。
特に、近年、人口減少社会の到来、新型コロナ禍によって新しい働き方が広がったことにより、職員一人一人の働き方の意識は多様化し、新しい働き方へのニーズも高まっており、「働く人の理解」「働き方の変化」についても、人事担当者に必須な知識となってきています。
これを受け、本書ではワークモチベーション・リーダーシップを押さえたうえで、各章やコラムにて、キャリア理論など働く人の内面にもスポットを当てています。また、外部人材の活用、テレワーク、副業など「働き方の変化」についても、職員の気持ち、職員同士の関係性などを踏まえた上で、導入時の留意点を紹介させていただいています。
人事担当者のスキルは「職員の幸せ」に影響する
言うまでもなく、自治体の行政サービスを支え、日々現場で奮闘しているのは、職員一人一人です。
そして、その職員の活動を支え、報いることが、働きがいのある組織であり、それを実現することこそが人事担当者のミッションです。
いいかえれば、私たちの仕事は、職員一人一人が働くことで幸せに感じる組織づくりを担う、重要な仕事といえるのです。
そのようなミッションを担う、全国の自治体人事担当者の皆さんにとって、本書が、日々の仕事の一助になれば望外の喜びです。是非、一緒に頑張っていきましょう!
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