コラム

行政とゆるキャラ(R)のゆくえ

岩林誠6

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【岩林誠(いわばやしまこと) 経歴】
四街道市役所シティセールス推進課長。J-PHONE/ボーダフォン宣伝部、I&S BBDO(広告代理店)、はるやま商事マーケティング部等でのマネジメントを経て、四街道市初めての民間出身管理職として現職。

(記事提供=シティプロモーション超入門 )

 今回はちょっと脇道にそれて「ゆるキャラ(R)グランプリ」への組織票に関して触れてみたいと思います。

これについては、ふたつのポイントがあると思います。ひとつは「キャラクター」(マスコット)というものの活用目的に関すること。もうひとつはイベントとしての「ゆるキャラ(R)グランプリ」への組織票の是非に関することです。

確かに2011年の第1回「ゆるキャラ(R)グランプリ」を獲得した熊本県の「くまモン」の経済効果は当初の3年間だけでも1244億円、2017年に至っては1年間だけで1400億円まで伸びているともいわれていますので、なにか血が騒ぐのもわからなくもありません。

しかし問題は、地域のマスコットに何を託すのかという目的意識です。最初から「経済効果を狙います」ということであれば、それはそれで理解できます。食品やキャラクターグッズの生産や販売に活用するということであれば、それに適したマスコット開発をすればいいわけです。「くまモン」の場合、食品売上が1195億1207万円、グッズの売上が213億6213万円(いずれも2017年)とのことですので、やはり地域経済や歳入の拡大を目指すならば、これら商品開発を前提としたデザイン開発が必要とされるでしょう。

二次元で十分表現できること、小さめなデザイン処理でも視認できること、直感的に受け入れられるデザイン、商品パッケージに使いやすい色彩、ポーズのバリエーションが制作しやすいこと、着ぐるみやグッズなどの三次元にも加工しやすいもの、もちろんその地域の歴史、特長、生産物等との関係性に納得感があるものなどの考慮点を念頭に置きつつ開発を進めれば、目的に沿ったアイデアが生まれてくると思います。

しかしながら、自治体のマスコット開発やその活用は、どこまで確固たる目的設定がなされているでしょうか。かつてからそれについて疑問を感じていました。

NHK11月15日放映の「クローズアップ現代+ ゆるキャラ(R)ブームに異変!人気投票に組織票が…」では、四日市市長と大牟田市の担当者が生出演し、今回の報道に関してインタビューを受けていました。そこでは「市の思いをひとつにしたい」「市を元気にしたい、イメージを変えたい」などの発言がありましたが、私にはやや抽象的に聞こえました。

一方で「ゆるキャラ(R)グランプリ」のウェブサイトには、「開催の目的は、ゆるキャラ(R)グランプリをきっかけにした、地域活性化、経済活性化、観光誘致(=まちおこし)です。」と明確に書かれています。これはある意味、潔く、極めて実践的ですが、昨今の自治体ゆるキャラ(R)ブームを見回したとき、行政側にこれら目的意識がどこまで明確にあるのか、かなり怪しい気がしています。

ゆるキャラ(R)(マスコット)とは、ある意味、街の魅力の現し身(映し身)であるはずです。街の魅力になり代わったメタファーに過ぎません。同番組に出演していたパトリック・ハーラン氏の「主人公は地元の魅力であって、ゆるキャラではない」というコメントは的を得ていると思います。ゆるキャラそのものが独立した存在として独り歩きしすぎていないでしょうか。また、「ゆるキャラグランプリ」で上位になること自体が目的化されていないでしょうか。

「ゆるキャラグランプリ」での組織票については、常々「あるもの」として聞かされてきましたし、実行委員会会長の西秀一郎氏も「組織票を否定したこともないし、するつもりもない」とも番組で語っています。それは、盛り上げることが優先される民間企業の見解としては理解できます。

しかしながら、率直なところ、私は行政の一員として、組織票は正しいあり方ではないと思っています。なぜなら、「ゆるキャラグランプリ」は基本的に人気投票イベントであって、一般市民がそのデザインやそのいわれに共感して一票を投じるのが本来の姿であると思うからです。

ゆるキャラ(R)グランプリのウェブサイトにも「ゆるキャラ(R)さんたちの一年に一度のお祭り、それが「ゆるキャラ(R)グランプリ」です」と書かれているように、ゆるキャラ(R)という媒体を使って盛り上げよう、お祭りにしようというのが本来の趣旨のはずです。その人気投票の1位を獲得するために、人件費を含む公費を投入して、行政職員が付与された複数アカウントを用いながら虚偽の投票を行うというのは、あるべき姿ではないと思います。

「投票したくてもできないお年寄りもいる」という主旨のことも番組で行政担当者から語られていましたが、だからといって代理投票を行ってよいものでしょうか。私は「一票=ひとりの市民」という原則が軽視されているように感じます。また、それは「アカウント」の扱い方にも関係しています。

そもそもネット上のアカウントとはネットワークを使用するための権利(証明)であり、それは自ら取得して管理するものです。組織的に管理されているアカウントでない限りは、他人から付与されるものでもなければ、ましてやその使用を命じられるものでもないはずです。

申請者と利用者が異なったアカウントは基本的に不正利用であり、自分のものではないメールアドレスは架空の住所のようなものです。しかも、ひとりが他者である複数人を装うことも、人気投票とはいえども、行政人にはふさわしくない行動であると思います。

違ったいい方をするならば、行政職員ひとりが自らの1つのアカウントで毎日1票を投じ10日で10票となるのは「努力」の範疇だと思いますが、ひとりが10人分のアカウントを偽って用い1日で10票投じることは、結果は同じ10票であっても、その意味は大きく異なると思います。

マーケティング活動の一環であり、プロモーションにおいても飛び道具的なマスコット問題ではありますが、その活用の意味について改めて深く考えてみる時期に差しかかっていると思います。

次回は閑話休題、本筋に戻る予定です。

ゆるキャラ(R)という文字は、みうらじゅん氏の著作物であるとともに扶桑社、及びみうらじゅん氏の所有する商標です。

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