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総務省消防庁コラム1

事例を知る 防災

お手軽一畳サイズ 発掘実習ミニブースの開発[和歌山市消防局予防課]

 

(記事提供=総務省消防庁 広報誌『消防の動き』

1 はじめに

発掘実習ミニブース

実習中

 和歌山市は、紀伊半島の北西部に位置し、北はみどり豊かな和泉山脈ののどかな山並み、西は紀淡海峡と風光明媚な温暖の地です。
 市域は東西29㎞、南北17㎞、面積209㎢、中核市に指定された県都で、市中心部にそびえる和歌山城は、春は桜、秋は紅葉を楽しめるなど国内外の観光客をはじめ市民に広く愛されるシンボルとなっています。

 消防の規模は、3署、2分署、6出張所、職員数400人です。

2 火災調査技術の向上を求む声に

 組織再編に伴い火災調査の事務の一部を本部から署に移管して数年、研修を重ねてきましたが、とりわけ若年職員から「現場で発掘調査をしたことがない。」「どのように現場で進めたらよいかわからない。」「発掘の実習をしてもらいたい。」といった声があがるなど、経験不足を効果的に補う方策が求められていました。火災調査技術の向上には発掘実習が効果的です。発掘実習というと、消防大学校や府県消防学校で行われる「模擬家屋」がイメージされますが、「費用がかかり過ぎる」「場所がない」「処分をどうする」など課題が多く実施不能となってしまいがちです。今回作成した「発掘調査ミニブース」は、これら課題をクリアしつつ、実習の効果も高く、手軽に実施可能なのでご紹介させていただきます。

発掘実習といえばコレ?

3 発掘調査ミニブース

 ベースは、コンパネ(一畳サイズ)3枚です。廃材の利用により制作費0円も可能です。床と壁2面だけの簡単な作りです。処分のことを考え、できるだけ材木は少ない方が良いです。コンセントを取り付けたり、家具や家財を配置したりして完成です。手持ちの材料に合わせて部屋の隅をイメージして自由に作成します。

ベースはコンパネ3枚

垂木3本で接合、コンセントを設置

棚、物干し、ゴザ、家電、座布団などで部屋の片隅を再現

水道ホースで鎮火可能でした

現場さながらな燃やし後の状況

4 実習方法

●発掘前
 警察役と居住者役を立てます。居住者には前日からの行動について時系列で聴取し、出火室の家財の配置や火源となるようなものを聞いていきます。居住者からの聞き込みを終えたら、発掘範囲や手順を考えさせます。発掘に入るまでの聞き込みには時間を取り過ぎないようにするのがコツです。つい詳細に聞き込んでしまいがちですが、発掘しながら聞いていけば良しとして大まかに聞くように指導します。

聞き込み内容を共有します

相談することは大切です

撮影ビデオによる答え合わせ

●発掘中
 写真撮影や図面の作成を実際に行うこともできます。時間がなければ省略可能です。
●発掘終了
 経験の少ない職員が行うと時間がかかるはずですので、うまく予定時間に収まるようコントロールします。発掘を終了したら、職員同士で相談させ、関係者へどう説明するのかを検討させます。
●居住者への説明と答え合わせ
 居住者に原因を説明したあと、燃やし時のビデオを全員で見ます。推定した出火原因と異なる結果になることもありますが、なぜ違ったのかをよく検討させます。また、焼けの方向が実際の出火箇所を示さない焼け方をすることがあります。このような場合は、ビデオの映像は特に参考となります。

5 優れた点

●移動可能
 軽トラックの荷台に乗ります。燃やし場所と実習場所とを別にすることができます。
●繰返し利用可能
 発掘を開始する前に受講者に「元に戻せるように」と声をかけ、終了後、元に戻します。灰は少し減りますが、意外と元に戻ります。移動が手軽なので、各消防署での巡回研修などいろいろな場所で使用できます。
●複数ブースも可
 今回は2ブース作成しましたが、1つでも良いですし、たくさん作成すればさらに良い実習ができます。
●処分
 2ブース分のゴミ処理ですが、グラインダーで10cm幅ほどに切り刻み、ゴミ袋から突き抜けないよう布団綿で包みゴミの日に出しました。20袋程度になったと思います。6人で1時間ほどで処理できました。
●出火原因
 電気ストーブへの洗濯物の落下と壁付きコンセントのトラッキング出火で実施しましたが、たばこ、ローソク、カセットコンロ、裸電球への衣類接触、半断線箇所への綿ぼこりなどは簡単に出火させることができます。

トラッキング現象により出火

●目当てを設定
 警察との打ち合わせ方、発掘に入るまでの説明、写真のとり方、図面の引き方、焼けの見方、簡易鑑定、使用立証、電気配線の追い方と撮影方法、番号札、丸印、白鎖の使い方、油分検知管の使い方、復元、床洗浄、居住者への原因の説明、損害届出書の説明など様々なことをこのブースで習得させられますが、時間に限りがあるので目当てをしぼりたいですね。
●燃やし
 県の消防学校をお借りして燃やしました。煙や臭いの発生により、燃やし場所の確保が難しいですが、ブースは模擬家屋よりもかなり小さいので、燃やし場所を確保しやすいです。

都会は燃やし場所の確保が最も難しいかもしれません

6 丸ごと参考にしてください

 「はじめどこから手を付けてよいのかわからなかった」「この狭い範囲でも出火箇所の特定を迷った」「現場の流れがわかった」などの声が聞けました。  発掘実習ミニブースの利用による実習は、小規模消防本部や都会の消防本部においても比較的実施可能なものです。どうぞ丸ごと参考にしていただいて、気軽にチャレンジしていただけたら幸いです。

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