【岩林誠(いわばやしまこと) 経歴】
四街道市役所シティセールス推進課長。J-PHONE/ボーダフォン宣伝部、I&S BBDO(広告代理店)、はるやま商事マーケティング部等でのマネジメントを経て、四街道市初めての民間出身管理職として現職。
(記事提供=シティプロモーション超入門)
地域のブランドの考え方の整理やブランディング(ブランドの浸透作業)を行う場合、市民とのタッチポイントを考えなければならないことを前回書きましたが、今回は、市民から見た場合の地域の「ブランド」とはどのように認識していくものなのかを2回に分けて考えてみたいと思います。
一般的に「ブランド」とはマーケティング用語のひとつとして扱われています。つまり、民間企業が利益を最大化するための企業資産として「ブランド」があり、それを浸透させる「ブランディング」作業があります。これは目的が明確なので、誰も異論を唱えません。企業にとってのブランドは、その名前は製品に刻印されていますし、広告でも表示されます。
それでは、「地域ブランド」とは何を意味しているのでしょうか。産業振興の一環で商品化するならば、「○○まんじゅう」「○○牛」「○○漬け」などと名称に使われることもあったり、「○○岬」「○○港」「○○美術館」などのように観光地名や施設名として生かされることもあるでしょう。
しかし、人と地域(住んでいる場合は居住地)との関係とは、商品名や観光地名との関係だけではありません。私の勤務する四街道市もご多聞に漏れず、あまり特長のない街なので(失礼!)、産業や観光で「四街道ブランド」が形成されるとは考えにくかったりします。
それに、自分のことに置き換えて考えてみるとわかると思いますが、自分と自分が住む地域の接点はどこにあり、街の記憶はどのように形成されるでしょうか。結局それは自分の家であり、住む街であり、学校や勤務地であり、飲食店であり、街の喧騒であり、日常の風景であり…ではないでしょうか。
そして、その接点の入り口は自分の五感であり、そこにことばを使った記憶が加わり、場所に関する認識が形成されてきます。
それから、先に申し上げておくと「地域ブランド」という場合、多くの人が前提とするのは行政区域としての「地域」を指していますが、自分の感覚、行動、経験などから考えると「場」に対する認識は必ずしも行政区域に縛られていないことがわかるはずです。
私に照らしていうと、四街道市で働いていますが、居住地は四街道市内ではなく、買い物は隣の市のショッピングモールであり、食事に行くのは知り合いの多い東京都内であったりします。そんな暮らしであった場合、住んでいる市や県にそれなりの思い入れはもちろんあるものの、私にとっての「場」の認識とは、家から勤務地、家から東京都内、家から釣りに行く太平洋岸のラインが主軸になってきます。
そのように考えると「地域ブランド」というのは、やはり行政側や地域を盛り上げる必要があるステークホルダー側の考え方としての色合いが強く、市民視点では少なくとも複数の行政区域にまたがった「場」(空間)の方がなじみがあるはずです。報道で時折目にする「千葉都民」などという表現はそれを象徴しているものと思われます。つまり、現実的な「地域」や「場」とは、「私」(市民)を中心として、行政区域に依存しない広域であることを改めて認識しておく必要があろうかと思います。
では「私」を中心とした場合、「私」は「場」をどのように認識しているのでしょうか。
図では「私」が接している「場」は、身体的な知覚(五感)とことばという二重の認識手段によって切り分けられ、結果として、空(universe)、空間(space)、場所(place)、地域(region)という4つの相に分節しているという仮説を示しています。やや学問的な話題に見えますが、人が場というものをどのように認識しているかについて、少し遡って見つめなおしてみることで、新たな「地域ブランド」の発想が生まれてくることを期待しています。もう少し詳しい説明については次回とします。
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