コラム

行政は地域ブランディングの旗振り役~ブランドディレクションのすすめ

岩林誠6

【岩林誠(いわばやしまこと) 経歴】
四街道市役所シティセールス推進課長。J-PHONE/ボーダフォン宣伝部、I&S BBDO(広告代理店)、はるやま商事マーケティング部等でのマネジメントを経て、四街道市初めての民間出身管理職として現職。

(記事提供=シティプロモーション超入門

 今回は、地域のブランドとはどのような要因から作られ、どのような手法で管理できるのか、今までのまとめのひとつとして、その全体像を観てみたいと思います。

 企業のブランディングは消費者の関与を除けば、ほぼ企業側でコントロールできます。商品を開発する、自分の店舗で販売する、コールセンターを運営する、広告活動を行う、イベントを実施する、等々、自社で管理できる活動でブランディングを推し進めていくことができます。近年ではネット上での商品評価やクチコミがブランディングに大きく影響を与えますが、それでもその根源はほぼ企業側の手中にあるといっていいでしょう。

 そのような前提に基づき、民間企業の場合は「ブランドマネジメント」という発想が生まれます。つまり「ブランドを管理する」という活動が可能になるわけです。そのためのツールとしてブランドブックを作ったり、ブランドマネジメント部を設置したりします。

 一方、地域のブランディング(プレイスブランディング)の推進役は、行政、市民、ステークホルダーと多様であることは前々回の記事で述べました(企業ブランディングと地域ブランディングの違い)が、そもそもその背景にある環境要因そのものが、当然ながら行政の統制下にはないということです(図1参照)。

プレイスブランディングの構成要素

<図1>

 各地域の農林水産業や商工業等の経済活動は自律的に行われています。また、市民の日々の暮らしや社会活動も行政の管理とは別にいろいろな形で日々繰り広げられているわけです。

 もちろん、自然環境はほぼ与えられた条件であって、地形や天候などを大きく変えることは難しいわけですし、自然、街並み、建造物などから構成されている景観も行政が関われる部分は小さいものでしょう。

 その地域の歴史的な出来事や祭事を含む催事も、その地域の時間の流れのなかで形成されてきたものであって、地域のブランディングに大きな影響を与えます。名所旧跡、歴史的な建造物、過去の偉人、祭り、花火大会、音楽祭、アートイベント、季節の風物にまつわる様々な催し等々、そういったコンテンツも、地域の認知やイメージ形成に大きく影響しますが、これらについても行政の関与は極めて限定的です。

 ですので、行政内部では「シティプロモーショ始めます!」とか「地域のブランディングを推進します!」などと盛り上がっているとしても、次のふたつのことをきちんと押さえておくことが大切です。

 ひとつは、行政が地域ブランディング(プレイスブランディング)に貢献できる部分は限定的であるということを認識すること。つまり、あたかも地域のブランドづくりを行政がすべてリードできるかのような錯覚に陥らないことが重要であって、逆にいうと、行政が関与しにくい領域についてきとんと分析し、強みは強みで生かす、弱みは弱みで受け流すことが大切でしょう。

 もうひとつは、そうはいってもブランディングをけん引する役割やはり行政が担うべきだということです。前述したことと矛盾することをいっていますが、やはりブランディングにはリーダー役あるいはガイド役が必要です。「みんな、こっちに向かうぞ!」という旗振り役は必要なのです。多くの場合、その役割は行政が担うべきでしょう。

 いみじくも「旗振り役」といいましたが、そのリードの方法には工夫が必要です(図2参照)。

ブランドマネジメントとブランドディレクション

<図2>

 企業の場合は、左のモデル図のようなブランドマネジメントが可能です。当然ながら、企業の目的は利益追求あるいは企業存続であるわけですから、ある意味ブランド管理は統率的に行うことが可能です。企業のトップが明確に「こっち向け」といえば、利害関係が一致している社員はそれに従うでしょう。

 地域のブランディング(プレイスブランディング)の場合は、右のモデル図のように、行政、市民、ステークホルダーが微妙に違う方向を向いている場合が往々にしてあります。

 行政は「子育てファーストの街」とブランディングしていきたいと考えたとしても、市民は「自然と都会のバランスのいい街」と知人に紹介したいと考えている。また、地元企業の経営者は「地元で働きやすい街」として雇用安定と経済の活性化を図りたいと考えている。こんな「想い」のズレが出てきたりします。

 しかしながら、同じ街で暮らしているならば、この三者がまったく違う認識を持っているということにもならないのが現実ではないでしょうか。前述の例でいうならば、「自然と都会のバランスがよくて住みやすい、だから子育てにもいいし、地元に仕事もあるので家庭を持つのにふさわしい街」というストーリーが出来上がります。

 この例のように、おおよそ似たような方向を多くの人が向いているならば、「ある程度、うまく方向づける」ことで、行政、市民、ステークホルダーが同じような意思統一を図ることができるものと思います。それを「うどん県」や「おしい!広島県」のようなスローガンで集約するのか、駅から保育園への送迎をしてくれる仕組み(送迎保育ステーション)などの象徴的な子育て施策でリードするのか、ゆるキャラ中心に街をまとめていくのかは、地域によっていくつもの選択肢があると思います(私なりに考える適切な選択肢、適切ではない選択肢はありますが)。

 つまり、地域のブランディングでは、民間企業のような統制のとれた「ブランドマネジメント」は遂行できないので、「ある程度、うまく方向づける」ことが重要だということです。これを「ブランドディレクション」と呼びます。やや解釈が異なるかもしれませんが、若林が著書「プレイスブランディング」で提唱していること(1)にほぼ同意するものです。

 違ういい方をするならば、行政は、

1)街の状況をきちんと分析しながらも、

2)適度にゆるく街の目指すべき方向を指示して、

3)それをリードするシンボルを作り上げ、あるいは発見して、

4)それに共感するフォロワー(市民、ステークホルダー)を誘導する仕組みを用意する

 ということです。

 ですので、行政はツアーガイドのような「旗振り役」になることを目指すべきです。行政だけで地域のブランディングを引っ張ろうとしてもそれには無理がありますし、逆に市民任せにしてしまうのは無責任であり、地域のブランドの方向性を見失わせてしまうことでしょう。

 プレイスブランディングこそ、まさに市民協働の事業です!

(1)若林宏保,徳山美津恵, 長尾雅信(2018),プレイスブランディング(有斐閣)

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