研究成果をどう活かすか(パネルディスカッション風景)
[記事提供=旬刊旅行新聞]
年度末の3月下旬、広島県呉市で日本遺産をテーマとする学術交流シンポジウムが開催され、参加させていただいた。
このシンポジウムは、鎮守府日本遺産の4都市(横須賀市・呉市・佐世保市・舞鶴市)の連携交流事業の一環として、昨年の舞鶴市に続き2度目のシンポジウムである。4都市の工業高等専門学校を核に、関連大学の理系の先生方による研究成果の発表と交流の場となっている。建築・土木・機械など、それぞれの専門領域の先生方による、いわば「理系で読み解く日本遺産」を目的とした珍しい試み。従来、日本遺産に係るこうした研究は、考古学や歴史、文化、都市政策など、社会科学・人文科学の先生方による研究が多いなか、誠に異色の試みと言える。
当日は、4都市6研究機関(チーム)の先生方が、この1年の研究成果を報告したのち、パネルディスカッションを行った。その研究成果の全体をご紹介することはできないが、未解明の産業遺産などの三次元測量技術や計測の難しいエリアでのドローン飛行探査による写真測量と3Dモデルの作成、建物の構造特性に着目した解析的研究など、歴史文化財の保存・活用を目的とした基礎的研究が多数報告された。
その報告を受けて、「調査と活用の良い関係」と題してパネルディスカッションを行った。一般市民の方々にもわかりやすいように、「研究成果から見えてきたこと」「研究成果をどう活かすか」という2つのサブテーマに沿って、討議を進めた。
鎮守府4市では、これまでにも各都市のガイドさんたちが互いに他都市を学ぶ交流研修、普段見られない施設などを一斉公開して各都市を巡っていただく「日本遺産ウィーク」事業、優れた企画や事業創造のために、各都市の信用金庫などが連携した支援事業など、他の日本遺産地域では見られない、さまざまな試みを行ってきた。
今回の研究交流は、地域に眠る歴史文化資源の発掘とその意義、保全・活用に向けた手法開発などの点で大きな成果につながる可能性を感じた。また高専・大学といった教育機関として、これらの研究に参画する学生たちはもとより、地域の子供たちの学習機会にもつなげられる。そして何よりも、地域の市民・事業者の方々の地域理解が深まり、地域に対する誇りと新たな事業への取り組み意欲を高めるという意義もあろう。
今後は、こうした技術系の研究だけでなく、都市・歴史・観光・文化といった社会・人文科学分野の研究者たちとのダイナミックな横連携による研究交流も課題である。
次年度は、佐世保市でのシンポジウム開催が決まっている。各地域の研究機関の皆さんのさらなる研究成果を期待するとともに、これら成果を生かす新たな仕組みや体制づくりも進めたい。
(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)
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