人事って難しい
加藤:ちなみに人事課に来る前に、市の人事に対して不満はなかったのでしょうか?
安田氏:ありました。本当に「もっと人員配置をしっかりしてよ」と思っていました(笑)。
加藤:入ってきたらどう感じました? そらみろ、できるじゃんと思ったのか、実際には人事って大変なんだねって思ったのか。
安田氏:人事って大変だな、難しいなって思いました(笑)。職員個々の得意分野にも当然差がありますし、各課に単なる職員数が揃えばいいというわけでもありません。でこぼこが結構大きいんですよ。
加藤:そのでこぼこをどうにかパズルにはめようと思っても、全員が100%満足できる組み合わせはできないという感じなんですね。
安田氏:全員が満足できる組み合わせを目指してはいますが・・・。予測できない突発的な事象もありますので、日々苦悩しています。
なぜ公務員になったのか
加藤:パーソナルな話になるんですけれども、なんで公務員になりたいと思ったんですか?
安田氏:まず、大学で勉強してきた社会福祉の世界で、何ができるかというところを考えました。私は極限に生活に困った人たちが、最後の砦として頼りにする生活保護に携わりたかったんです。社会福祉の資格を取得する際に1か月間の実習を四條畷市で受け入れてくれてもらったことから、その後四條畷市の職員採用試験を受けるに至りました。
加藤:ご出身は四條畷なんですか?
安田氏:となりの門真市という町です。ただ門真市が採用試験を行わない年に私の就職活動の年度にあたったので、縁のある四條畷市の採用試験を受けました。
生活保護の担当課にいた頃はよく市民の方からお声をかけてもらっていました。本当に生活が立ち行かない人を支援し、生活が軌道に乗ったときなど、嬉しくて鳥肌が立ちました。もちろん、お礼を言われたくてやってる訳ではないんですけれども、ありがとうって言われるとそれだけで感動するんです。
自分のやったことがすべて市民の方に直結していく
加藤:公務員としてお仕事をしていく醍醐味を教えていただいてもいいですか?
安田氏:自分のやったことがすべて市民の方に直結していくのが醍醐味です。市民の方の反応がすぐ見えるというところが、楽しさでもあり怖さでもあると思っています。例えば、採用した職員が四條畷市ですぐ活躍すれば、市民の方々の利益にすぐ繋がっていきますし、反対に四條畷市で活躍しにくい人だったら、市民の方々の不利益になってしまいます。
加藤:税金を使うって重いですよね。
安田氏:本当に重いです。特に採用は長期的に人件費を払っていく必要がでてきますし、民間企業でも収支に見合った採用しかしませんもんね。
加藤:一定水準の給与レベルの人を、専門性が発揮できない部署に送り込むことはまずありません。幹部候補で異動後に適応できると思われている場合は別だと思いますが。
日本一前向きな市役所を目指して
加藤:最後に役所の中で実現したいことを教えてください。
安田氏:数値などのファクトベースで人事制度を動かしていきたいと思っています。職員がメンタルに不安を持ちやすい職場環境の要因分析などは、ストレスチェックの結果や職員の満足度調査の定点観測によって解決していけると見込んでいます。
また、HRテックも自治体で導入できる余地がありそうですよね。四條畷市は、市民の方々のためになるのであれば市長が思い切ったことをチャレンジさせてくれますから、日本一前向きな市役所を目指して、攻めの人事を進めていきます。
(編集=文書編集チーム、加藤年紀)
編集後記
インタビュー後、安田氏は人事課から異動した。強力なリーダーシップを発揮する東修平市長のもと、30代で人事課長として抜擢された安田氏が果たした役割は大きい。
安田氏に白羽の矢が立った理由を、東修平市長に尋ねたところ、3つの答えが返ってきた。
ひとつは、「思いがあること」。人事制度は組織のあり方そのものに直結するので、受動的でなく能動的な人材を配置することが不可欠だという。
2つ目には「胆力があること」。人事課や財政課は、庁内から批判の目にさらされる機会が多く、調整も大変な部署だからだ。
最後に、「変化に柔軟であること」。ICTなどの進化が目覚ましいなか、新たな技術や制度への感度の良さや耐性は、とても重要だという。
人事課は自治体の中では聖域化されやすい部署だ。民間企業も含め、組織のなかで批判の対象になりやすい。たとえば、「異動希望を出すとその部署にはいけない」などと、人事に対する“都市伝説”ともいえるような誤解もある。
わずかな取材時間ではあったが、安田氏が一人の人間として有する魅力が存分に伝わってきた。真っ当でフェア、しかし、温かみも感じられる。さらに、東市長が評した、強固な思いや胆力までをも兼ね備えている。これらの資質は、将来どのような仕事であれ、重責を果たすうえで求められるのだろう。
安田氏はインタビューを受けるのは初めてだとお話しされた。氏のような魅力的な方の知見を、わずかながらでも追体験できたことは喜ぶべきことだ。加えて、安田氏の存在そのものが、まだ見ぬ多くの魅力的な公務員の存在を示す証左なのだと感じた。
(文=加藤年紀)
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。