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総務省消防庁コラム1

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釧路コールマイン(株)の協力による実火災体験型訓練の実施について[北海道 釧路市消防本部]

 

(記事提供=総務省消防庁 広報誌『消防の動き』

1 人材育成と訓練実施経緯

 全国共通の課題である、近年の職員大量退職、採用による急激な世代交代に対応するため、当本部も各種研修・訓練を実施していましたが、平成27年に当本部は人材育成における基本的方向性を示す「釧路市消防本部人材育成基本方針」を作成しました。
 また、平成29年には基本方針に基づき、各分野、職責ごとの研修訓練の計画と、資格取得や消防大学校・消防学校の各教育課程への入校を関連させ、より具体的で中長期的な組織運営の考え方を「人材育成プラン」として示し、共通認識とすることで各職員が目標設定し易い環境とモチベーション向上に努めるとともに、学校入校者や研修訓練修了者が指導的立場で本部研修や各職場で還元することで、消防全体の強化と人材育成に組織を挙げて取り組んでいます。
 この様な取り組みの一方、実災害での現場活動に目を向けると半焼以上になるような火災現場の件数も減少し、火災現場経験の少ない職員が増えています。
 実火災現場を再現させた訓練を実施するためには専用の施設環境がなければ難しいですが、釧路市には国内唯一の石炭坑内堀稼行炭鉱である釧路コールマイン株式会社(以下「KCM」という)があり、職員や海外からの実習生に対し採掘技術教育や炭鉱事故への対応教育訓練を実施するための訓練坑道施設を所有しています。
 釧路市消防では一昨年度から、その訓練坑道を借用し、KCM職員の施設内設定や訓練時の安全管理など全面的な協力を受けて、実火災体験型の訓練を開始しました。

訓練を実施したKCM施設

訓練を実施したKCM施設

2 実火災体験型訓練の取組状況

 訓練開始当初は貴重な機会だという思いから、参加隊を増やし過ぎて訓練スケジュールをタイトにしてしまったほか、環境調整などもうまくいかず、思い通りの訓練にはなりませんでした。
 昨年度は、前回の反省を踏まえて綿密に訓練指導者やKCM職員と打合せを行い、本部研修の「新採用職員研修訓練」と救助隊員養成研修の一つとして実施している「レスキュートレーニング」のカリキュラムの一部として、実火災体験型訓練を実施しました。
 新採用職員研修訓練では、災害現場での危険性と安全管理の重要性をしっかりと認識させることを主眼とし、事前に座学で学び、訓練当日はKCM職員、救助隊の支援を受け安全管理を徹底し、濃煙中での検索訓練と、木材に着火し、発火からの火災性状の観察と高温熱気環境を体験する訓練を実施しました。
 新人対象のため、負荷を上げ過ぎないよう実施しましたが、新人の段階で濃煙と熱気を実際に体験することは、今後それぞれの所属での訓練実施時にも実現場をイメージするのに非常に効果的であり、新採用職員研修訓練のカリキュラムの中でも新人隊員達にとって印象の強い訓練となったようでした。
 次に、数年現場経験を重ねて救助隊員を目指す職員を対象に実施しているレスキュートレーニングで行った訓練では、新採用職員研修訓練から一歩踏み込み、より実災害対応に即した訓練にしました。
 消防大学校救助科を修了した訓練指導者が事前に講義を実施して建築物ごとの火災の特性や性状についてのより専門的な知識を学習し、訓練当日は、新採用職員研修訓練同様KCM職員、救助隊支援のもと、訓練坑道内で木材への着火から、サーマルレイヤリング、中性帯が形成される過程を確認し、ガンタイプノズルを使用して効果的な消火方法の実践や放水による熱や視界の環境変化、開口部からの噴霧放水による負圧排煙の効果等を確認しました。
 訓練を通じ、専門的知識を深めるだけでなく、環境に対しての活動限界と、現場でどう対応することが重要かを各自が考え、実体験できたことで、とても有意義な訓練となり、終了後には隊員だけでなく携わった職員も充実した表情となっていました。

KCM救護隊長からの施設説明

KCM救護隊長からの施設説明

消火坑道外観

消火坑道外観

消火坑道内部

消火坑道内部

3 今後について

 今後は、実施した訓練をベースに検証、改善を重ね、より効果的な訓練へと進化させていくこと、得られた経験を組織的に共有し、各隊の共通認識にしていくことが課題になりますが、訓練研修を継続的に実施していくことで、各隊が連携し統制の執れた活動、また各火災現場に則した効率的で効果的な活動に繋がっていくと確信します。

4 おわりに

 実火災体験型訓練は各教育機関や都市部で近年積極的に導入され、効率的、効果的な消火方法についても検証されていますが、地方の中核市である釧路市でも実火災体験型訓練を実施できたことは、第一に訓練に適した施設があるKCMの全面的な協力を得られたこと、また、当消防本部で進める人材育成で消防大学校や消防学校で専門的な知識と経験を積んだ職員が増え、本部研修で還元する体制が整ってきたこと、訓練実施に向けて数年前から各担当者が調整を進めたことで実現に至りました。
 これからも民間企業との連携を生かし、各分野で専門的に学んだ職員と訓練研修を継続実施することで釧路市の消防力維持、強化に努めたいと思います。

中性帯形成の様子

中性帯形成の様子

検索訓練進入前の様子

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