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【渋谷区 永田龍太郎氏:第1話】ゲイをカミングアウトして 体が軽くなった

【永田龍太郎氏の経歴】
1975年、福岡県生まれ。東京大学を卒業後に、東急エージェンシーに就職。その後、ルイヴィトンジャパン株式会社(現:LVJグループ株式会社)、ギャップジャパン株式会社を経て、2016年より渋谷区役所で3年間の任期付職員として、総務部、男女平等・ダイバーシティ推進担当課長に就任。渋谷区役所にてLGBTを含む多様な性の共同参画事業を推進している。ギャップジャパン株式会社に在籍中に自身がゲイであることをカミングアウトしている。

―2015年、全国に先駆けて同性カップルに対してパートナーシップ証明書の発行を進めた渋谷区は、条例というハードの面だけでなく、幅広い啓発や庁内連携の促進といったソフト的な面でも質の高い事業を行う必要性が出てきた。そのため、永田氏に3年間の任期付き職員としてオファーを出し、2016年9月より同氏を採用した。
 今回のインタビューでは、永田氏が入庁して1年弱の間にどのような事業を行ったのか。自治体はLGBTにどう向き合うべきか。さらにはご自身の具体的な経験や、そのお考えについてもお聞きした。本稿が自治体内外問わず、LGBTの理解を深めることに少しでも寄与できればと思う。

20年間民間で宣伝・広報の仕事をしていた

加藤(インタビューアー):早速ですけども、渋谷区役所でお仕事をされる前に民間でお仕事をされていました。その経緯を教えていただけますか。
永田氏:約20年間民間でしてきたのはマーケティング、いわゆる宣伝・広報・セールスプロモーションのお仕事でした。最初の東急エージェンシーは広告会社でしたので、いろいろなクライアント様のご事情に合わせて、プロモーションなどをお手伝いさせていただきました。
 その後、ルイ・ヴィトン、Gapと移って、その2つの企業では企業自身の宣伝・広報というのをして、お客様に直接触れるという経験を沢山しました。加えて、店舗のスタッフのモチベーションをどう作っていくかとか、課題に対して組織内の認識と理解をどう醸成していくかという、インナーマーケティング的な経験が沢山できたというのは、少し今に繋がっているのかと思っております。
 実は宣伝・広報という外向きと思われるものでも、結局、中の人たちと幅広く連携していかなければいけない。どんなにプロモーションという武器を作っても、手に取ってくれない限りは、全く生きてこない。そういった意味で、組織内の連携、コミュニケーションの重要性を実地で学ぶことが出来ました。

ハラスメントが発覚した時点でクビになる環境

加藤: Gapにいらっしゃる時に、大きな変化があったそうですね。
永田氏:はい。Gapには都合9年いました。もともとLGBTの当事者が働きやすいから受けたわけではなかったんですね。ただ、入ってみたら日本支社の中にもオープンにしているゲイの方が自然にいらっしゃって、周りの人もそれに対して自然なんですね。アメリカの本社にも沢山いらっしゃった。
 入って知ったのですが、Gapには「ゼロ ミーンズ ゼロ」という、あらゆる差別(国籍、人種、肌の色、年齢、性別や性別認識、性的志向、宗教、妊娠の有無、障がい、学歴など)は許されないという、非常に厳しいルールがありました。
 ハラスメントが発覚した時点で基本的にその人はクビ。直属の上司からハラスメントを受けた場合は、そのもう一つ上の上司に対して面談を申し込む権利を全員が持っている。さらに、それがダメな場合は他のライン長や人事に相談ができる。
 ハラスメントに対して「ノー」と言えるようにしていくところが、非常にシンプルに規定されている会社だということに、入ってから気付きました。
加藤:すごい仕組みですね。

24時間続いた臨戦態勢

永田氏:カミングアウトしていない状態というのは、ストレス状態がうっすらと、しかし24時間続く臨戦態勢なんですね。「LGBTって、ベッドの上のことでしょう?」と言われがちですけれども、それは違う。ゲイの友達とみんなでバーベキューに行った週末の話、それができないだけで、話せなくなることが沢山あるんです。
 異性愛の人が職場で結婚や子どもの話をするのはよろしくない、となったら変ですよね? 性のありようは社会生活そのものに直結しているんです。それが話せないということは、24時間何かしらその話をすり替えて話さなければいけない。同時に、何か話さなければいけない機会が24時間いつ来るか分からない。その中に生きているというのが、ストレスになるし、地域社会や職場や家族に対して帰属意識を持つ妨げにもなっている。

ゲイをカミングアウトして体が軽くなった

加藤:24時間準備し続けなければいけないというのは、とても大きなストレスだと思います。
永田氏:「こんなに体が軽いんだ」っていうのは、ゲイをカミングアウトしたあとに分かりました。Gapに入ってオープンにしている人たちが近くにいて、臆することなく同僚とプライベートを交えた会話を楽しんでいる。こちらはまだカミングアウトしていない、となった時に「ま、別にいいや、楽そうだし」と思って、徐々に近しい同僚からカミングアウトをしていきました。

友人からLGBTの取り組みに関する相談

加藤:どういうきっかけでLGBTに関するお仕事をされたのでしょうか?
永田氏:カミングアウトした後に、「GapさんはアメリカでLGBTフレンドリーだから、日本でも何か取り組みを支援してもらえないかな?」といった相談を、友人経由でいくつか頂戴しました。
 最初は「これは難しいかな?」というものが多かったので、個人レベルで「難しいと思うよ」というような返答をしていたんですが、だんだん来るお話の規模が大きくなってきて、社として判断しておかないと、あとあと自分の責任問題になっては大変だ、と思うようになりました。

LGBTの勉強会を開催し パレードに協賛

永田氏:そういう流れで、当時の部門長に話をしたところ、「このブランドが、お客様に対しても従業員に対しても公平性をもって接するカルチャーであることは、日本の従業員の間では浸透している。が、日本のお客様には全くといっていいくらい知られていない。LGBTの取り組みからブランドを好きになってもらうきっかけになるかもしれない」ということで、「まずは勉強会を」という話になり、社内ボランティアとして社内外に向けたLGBTの取り組みの立ち上げをリードすることになりました。
 自分としては「どう断りましょうか?」という後ろ向きの相談をしたにも関わらず、「何ができるか考えてみようか?」となったんですね。私自身が特に手を挙げて推進するつもりは全くなかったんです。
加藤:すごく懐が深い会社ですね。
永田氏:はい。それで勉強会を始めたりしている内に、東京でLGBTのパレードがゴールデンウィークにあるのですが、宣伝部の予算の中で実験的に参加をしてみることになり、2014年に初めてパレードなどに協賛をおこないました。

永田龍太郎パレード

渋谷区としてもパレードに出店している

日本支社で開発したロゴ 本社の承認を取る

永田氏:その時にレインボーのGapのロゴを日本支社で開発しまして、アメリカ本社の承認を取りました。
加藤:海外子会社がロゴをいじって米国本国に認めさせることなんて、なかなかないですよね。
永田氏:前代未聞でしたが、当時の支社長が、「これはすごく素晴らしいことで、本社でもやってないこと。僕はこのプロジェクトを120%サポートするから」と言ってくれたんです。
 ロゴを新しく作って承認を取るというのは誰もやったことがなく、どういう承認プロセスを取ればいいのかも分からない状態でした。でも、上の人たちがすごく頑張ってくれて、そのロゴが原宿店の外観を飾ったのが、2014年でした。その評判が良かったことから、2017年までずっと取り組みが続いています。

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※本インタビューは全8話です。

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