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【渋谷区 永田龍太郎氏:第5話】常にドキドキする場所は 病院と役所

レインボーのシンボルマークを作成して庁内で啓蒙

加藤:役所内での啓蒙としては、どのような活動をされているのでしょうか?
永田氏:去年の11月に、「レインボー・アイリス」というマークを作りました。渋谷区の区の花である花菖蒲のマークをLGBTのサポートや支援、ないしはプライドを表す6色のレインボーで彩ったものになります。

渋谷区 レインボーバッジ

渋谷区役所の職員に配られているバッジ

 推進のシンボルマークとしてバッジを配布していますが、今後もいろいろな形で活用していきます。職員にもこのバッジを配っています。強制はできないので、お願いベースでの着用、案内ではありますが。

映画の試写と当時者とのトークによる研修

永田氏:職員向けの啓発の一環として、2017年1月に映画「かもめ食堂」の荻上直子(おぎがみ なおこ)監督の、『彼らが本気で編むときは』という映画と啓発事業としてコラボさせていただきました。これは、ジャニーズの生田斗真さんがトランスジェンダー女性を演じられた映画なのですが、試写研修として職員に見てもらい、その後、監督とトランスジェンダー女性をお迎えしてアフタートークを開催しました。

常にドキドキする場所は病院と役所

永田氏:その際、トランスジェンダーの当事者の方が「常にドキドキする場所というのは病院と役所です」とおっしゃいました。
 それは、役所や病院では身分証の確認があったり書類に性別が書かれていることが多いので、見た目と戸籍の性別が違うことで、すごくジロジロ見られたり、別室に連れていかれたりする。
 「そういったことがあるのが病院と役所なんです」とおっしゃっていました。やっぱりその言葉は職員にとってはショックというか、皆さん、それなりに考えるところがあったようです。

窓口の人にバッジをつけている人がいると安心する

永田氏:研修の際「当事者でない人たちがフレンドリーな姿勢を、何かしら見える化することが効果的ということをお伝えしたところ、職員のアンケートで、「机の中に入れてしまっていたバッジを、明日からは付けたいと思う」と書いてもらえたこともありました。少しずつ職員の意識も変わってきています。
 特に窓口の職員がバッジを付けていると、窓口にいらした当事者の方に安心してご利用いただけるサインになるので、「検討いただきたい」と案内しています。

庁内で講師やワークショップを行う

永田氏:庁内のLGBTの理解促進のための内部講師や、所管の事業内容に即したLGBT対応ワークショップを開催することもあります。教育委員会から依頼を受けて、先生方の研修の講師に伺ったこともあります。
 これは教育委員会の事業ですけれども、今年度から3年間、LGBT当事者の方を渋谷区内の小中学校に派遣して、主に先生方の研修としてお話していただくのですが、それを具体化していくにあたっての支援もしています。
 一つひとつ、こういった形で支援をしていって、最終的には先ほど申し上げたような窓口とか、社会的な地域のセーフティネットが、ジェンダーやセクシュアリティの隔てなく対応していけたらと思っています。

バリアフリーの観点にLGBTの視点を

永田氏:庁内での取り組みでは、LGBTの視点を挿し込んでいくお手伝いもしています。現在、バリアフリー基本構想を策定しようとしていますが、通常だと肢体障がい者の方ですとか、視覚や聴覚障がい者の方などをイメージしますよね。そこに「LGBTの視点もちゃんと入れていきましょう」ということで、私が情報提供をしています。例えば、トランスジェンダーの方を中心に、自分が自認する性別のトイレを使えないという問題などがあります。

役所の書類から性別の項目を無くす動きがある

加藤:LGBTというより、手続きの簡素化の意味合いが強そうでしたが、奈良市では役所の一部の書類で、性別欄を無くしたという話もありました。
永田氏:そうですね。それは渋谷区でも今進めています。LGBTという観点でなく、個人情報の取扱いに関連して不要な情報は取らないという流れの中で、各種申請書類や証明に関して、不要な性別の記載をなくすべく取り組まれている自治体がほとんどだと思います。
 しかしながら、結果としてトランスジェンダーの方にとって困るようなケースが減る、というところにも繋がっています。

既存の自治体でできるLGBT対応

加藤:他の自治体が渋谷区のように何かLGBT対応をしたいと思った時に、どういうことなら、取っ掛かりとしてできそうでしょうか?
永田氏: LGBTが直面する社会的困難の中で、サポート体制を整えやすい生活保護とDVの相談窓口だと思います。ここが、トランスジェンダーであろうと、同性カップルであろうと、ストレート男性のDV被害者であろうと、対応できるようにするといいと思います。

月から金までは男の恰好で頑張ってみたら?

加藤:ソフトの部分を変えれば対応できるということですね。
永田氏:真偽の程は分からないのですが、トランスジェンダー女性が生活保護の相談をされた際に、なかなか仕事に就きにくいと言った時に、「じゃあ、月から金までは男の恰好で頑張ってみたら?」と言ってしまうような対応が少なくないと聞きます。
加藤:それは、身体も性自認も男性の人が、「週5日は仕事のために頑張ってスカートを履きなさい」と言われることと同じなわけですよね。
永田氏:はい。理解し、尊重していれば、「じゃあ、LGBTに理解があるような企業が、どこがあるかな?」とか、そういった対応もできるはずなんですよね。

自分がやって来たことはどんどん共有したい

加藤:率直に感じたのが、渋谷区には永田さんが奇跡的に存在していて、今の活動ができるのかもしれないですけど、他の自治体がそういう人材を探すのは結構難しいのではないかとお話しながら考えていました。
永田氏:今はまだ事業構造を模索しているフェーズなので、求められるスキルセットも特殊な上に、国内に参考になるものはなく手探りで大変です。しかし、ある程度のルーティンとして回せる時期になれば、むしろ、当事者でなくても優秀なプロパーの方でも十分に取りまわしていただけると思っています。私も3年でお役御免ですし、やって来たことはどんどん共有できればと思いますので、好きなだけ参考にしていただければと思います。
 公務員の方の責任感と信念を持った仕事ぶりは本当にすごいと敬服しています。しっかりと整えたバトンをお渡しできれば、しっかりと回していただけると信じています。

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※本インタビューは全8話です。

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