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【渋谷区 永田龍太郎氏:第3話】ロンドンオリンピックは 大LGBT祭

パートナーシップ証明書を 合計20組の方に交付

加藤:パートナーシップ証明について教えていただけますか。
永田氏:はい。パートナーシップ証明は法律上の婚姻とは異なります。戸籍上の性別が同じお二人が、男女の婚姻関係と近しい関係を構築していることを「パートナーシップ」と定義し、一定の条件を満たした場合に証明書を発行するものです。
 2015年11月に交付開始し、1ヶ月に1組ぐらいのペースで合計20組の方に交付をしております(※2017年8月時点)。渋谷区は手間がかかる仕組みになっていますが、他自治体と人口で比較しても悪くない数字かと思っております。

パートナーシップ証明書の取得には公正証書が必要

永田氏:渋谷区のパートナーシップ証明書は、他の自治体さんのパートナーシップ制度と違って、公正証書を2人でお取り交わしていただく必要があります。
加藤:具体的にはどういう公正証書が必要なのでしょうか。
永田氏:はい。一つが合意契約。もう一つが任意後見契約とになります。公正証書発行に関連する費用だけで最大6万円近くかかります。公正証書のひな形もホームページも掲載はしてはいますが、実際には司法書士さんなどにご相談に行かれる方もいらっしゃるようです。
 そういったお金や手間暇にもかかわらず、逆にこれだけの数の方々に申請をいただけているというのは、同性カップルでの切羽詰まったニーズに改めて気づかされると共に、価値を見出していただいていることに感謝しています。

同性カップルの困りごとに対して後押しを

加藤:なぜ、渋谷区では公正証書を求めるようにしているのでしょうか。
永田氏:条例の検討会議で、具体的な同性カップルの困りごとに対して、後押しをできるようにするための議論がなされました。
 困りごととして主に想定されていたものは二つありまして、一つがお2人でお部屋を借りる時。もう一つが病院なんですね。病院におけるニーズは「パートナーの方が入院された時に、入院の許諾書にパートナーの方がサインさせてもらえるか?」、「パートナーが病状について医者から説明を受けることができるか?」もしくは、「自分がICUに入る事態になった時に、パートナーがICUに入れるか?」など、特に深刻です。
 そこで、公正証書という契約をお取り交わしいただき、さらに区が証明書を出すことによって、2人をカップルとして扱ってもらえるように、区内の事業者に対して最大限の要請をしようという、議論の背景があります。そのため、他の自治体さんとはちょっと違う仕組みになりました。
 そもそも、同性カップルが公正証書を取り交わして二人のパートナーシップ関係を定義する、ということ自体は、全国でずいぶん前から行われていますので、全く新しく編み出した仕組みという訳ではありません。

不利益な状況があった際 渋谷区が事業者に理解を求める

加藤:公正証書やパートナーシップ証明書があったとしても、今、挙げられた問題が100%起きないというわけではないですよね?
永田氏:ではないです。条例にも書いていますが、最大限の対応をお願いするのであって、強制力がないんですね。
加藤:パートナーシップ証明を取得した人が、不動産を借りる時に問題があった時、渋谷区が間に入ったりするということはあるんですか?
永田氏:お申し出があった場合には、区として当事者の方の置かれている不利益な状況を最大限解消すべく、事業者に理解を求めます。実際にはまだお申し出がないので、そこまでは行っていませんが、その事業者の理解が得られず、誠意ある対応が見られない、どうしようもない場合に限定して「事業者名を公表する場合」があります。

証明書の取得を躊躇されている方が相当数いる

加藤:パートナーシップ証明書に関する課題はありますか?
永田氏:深刻な課題だと思っているのが、パートナーシップ証明書を取ると、住民票や戸籍に追記されてしまうのではないか、と不安を感じている人が多数いることです。
 「戸籍や住民票に何か追記されますか?」という質問に、「申し訳ございません、ありません」とお答えすると、「ああ、良かったです」と、ホッとしたようなお答えがすごく多いんです。扶養控除や相続における考慮を期待しての質問だと思って答えたら、記載が無いことに嬉しい反応が返ってくるなんて、とても不思議ですよね。というのも、もしも記載されていたら、住民票の写しや戸籍の写しを取った時に、意図しない形で家族や親せき、もしくは職場などでバレてしまうかもしれない。それを危惧されているんです。
 こういった声から、渋谷区全体の空気がLGBTフレンドリーにならない限りは、パートナーシップ証明書を申請されるカップルの数も増えないという現実が見えてきました。
永田龍太郎6

人権に関する啓発講座を開催

加藤:渋谷区ではLGBTフレンドリーの機運を醸成するために、どのような事業をされているのでしょうか。
永田氏:アイリス講座と申しまして、いわゆる啓発講座をやっております。男女平等、共同参画、もしくはLBGTというところで、その時々のトピックを取り上げています。

LGBTは震災弱者

永田氏:去年は「LGBTと震災」なども取り上げました。東日本大震災の時に、震災の災害弱者として女性が非常にクローズアップされたかと思うんですが、そのさらに向こう側にLGBTがいるというお話でした。
 それは単純な差別偏見だけではなく、同性カップルが仮設住宅に一緒に住めないとか、別々で暮らしているパートナーの安否を調べることができない場合があるとか、避難所でのトランスジェンダーへの配慮とか、ハードや仕組みとしての対応が求められる部分もあります。

カミングアウトしているオリンピアンの数が倍増している

永田氏:「オリンピックとLGBT」は丁度リオの直後にやったんですが、ロンドンオリンピック、リオオリンピックでカミングアウトをしているオリンピアンの数が倍増しているんですね。ロンドンで20数名、リオで50数名。
 おそらく今の勢いでいけば、東京オリンピックの時にカミングアウトしているオリンピアンというのは多分、3桁になるんですね。100名をゆうに超える可能性もあります。

オリンピックは大LGBT祭

永田氏:オリンピックが国際的に成功したかどうかの一つの評価の尺度として、「どれだけLGBTに対して社会全体がフレンドリーになったか」も国際社会においては重要になりつつあるそうです。
 パラリンピックが成功するのはボトムラインであって、ダイバーシティの最前線はLGBT。そこができていなければ、国際社会で100点の評価はもらえない。
 ロンドンオリンピックが評価されている理由として、開会式などで、LGBT当事者の方々が沢山登場してLGBTダイバーシティ&インクルージョンを大きくアピールしたことが挙げられます。実は大LGBT祭りだったんですが、日本の報道では一切それに触れられていなかったので、ご存じない方が多いとは思いますが。
 2020年に世界中から東京にやってくるレズビアンやゲイなどのアスリートを、胸を張って迎えられる東京になって欲しいと、一当事者として心から願っています。

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※本インタビューは全8話です。

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