遺族からの追及
加藤:現場でお仕事される中で、何がもっとも大変でしたか。
久保田氏:やはり遺族から追及された場面ですね。2013年から2014年にかけて、震災を振り返る検証委員会というものを設置して、『陸前高田市東日本大震災検証報告書』を仕上げたんですね。
陸前高田は当時1800人近くの人が亡くなり、その内、指定避難所で303~411人が亡くなっているんです。指定避難所は基本的には安全なはずの場所に作られていて、そこに逃げれば大丈夫だと市が呼びかけています。だけど、そこで亡くなった人がいるために、市の責任だと住民や議会から追及されました。
自分は検証委員長でしたので追及を受ける立場でしたが、やりきれない部分がありました。追及されるのがきつかったというのもあるんですけども、遺族の人も怒りの矛先がないことがわかるからです。市からすれば、もちろん反論はあるんですよ、当時のハザードマップでは来ても1メートル程度の津波しか来ないはずの場所だったところに10メートルの津波が来たんです。正直、想定できる範囲ではなかったとは思いますが、安易に「想定外だった」で片付けてはいけないんです。
埋まらない溝
加藤:裁判にもなったのでしょうか。
久保田氏:裁判まではならなかったです。基本的に、裁判になっても市が負けることはないとは思うんです。私もいろいろ自分でも調べてみたんですけども、当時の防災の責任者が何かさぼっていたわけでもないし、過失があったわけではない。住民が反対するのを押し切って、そこを無理矢理避難所にしたわけでもないんです。
当時の時間を巻き戻してみれば、その決定に妥当性があった。結果としては危険だったというのは後で分かったことなんです。だから、遺族の気持ちは分かるけれども、単純にご遺族を納得させるためだけに、事実をねじ曲げて過失があったという内容の報告書にはできなかったんです。でも、いまでも遺族は納得してくれていないと思います。そこは埋まらない溝なんです。
加藤:そうですね。いざ自分が身内を亡くしたらやりきれない思いがありますよね。
久保田氏:そうです。自分だってそっち側に加わっていたかもしれません。
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 内閣府から出向 副市長として復興を進める
第2話 2,000人の地権者の同意を得る
第3話 古本屋と組んで4000万円の財源を確保
第4話 遺族からの追及 埋まらない溝
第5話 復興時に財源とどう向き合うべきか
第6話 復興庁は被災地に置かれるべき
第7話 国はがんじがらめ 地方行政はフロンティア