補助金はハード系が多く ソフト系が少なかった
加藤:復興時のお金の使い方というところをお聞きしたいです。復興のための様々な補助金のメニューがあったと思いますが、被災自治体は補助金を効率的に使えていたという印象はありますか。
久保田氏:どこの自治体も、当時用意されたメニューを前提とすれば、多分効率的に使っていたと思うんですね。そして、額の面ではかなり手厚く分配されたと思うんです。けれども、あの時用意されたメニューは、インフラなどのハード系のものが多く、ソフト系のものが非常に少なかったため、使い勝手が悪かったとは感じます。
東日本大震災と同規模の財政支出は不可能
加藤:災害時に一定の復興財源が捻出されるべきだと思うのですが、無尽蔵にお金があるわけではない。このバランスはどう考えれば良いと思いますか?
久保田氏:単純に東日本大震災が出し過ぎかというと難しいところではあるんですけれども、もし、首都直下地震が起こったときには、同じレベルの財源を国が支出することはもはや不可能だと思います。
費用対効果は意思決定に含まれていない
加藤:もっと財源の費用対効果を高める方法はありますか?
久保田氏:防潮堤のコストも市役所からすればタダだったんですよ。なぜならばこれは県の事業だから。そして、県は防潮堤に関しては国から100%の財源をもらうことができる。だから、市ではお金の議論はなく、あくまでも作るか作らないか、そして、高さはどれぐらいかの希望を話すわけです。
つまり、費用対効果で考えないから、役所は作る方を選択するんです。タダで作れますから。そこはちょっと一種のモラルハザードに陥っていると思いますね。これは基本的な仕組みですけども、「防潮堤を我が町はいりません」と言ったとしても、その防潮堤で浮いた何百億、何十億のお金を別のことには使えないんです。もし防潮堤の予算を、起業支援だとか中小企業対策とか、コミュニティ対策とかに自由に使えるならば、結論は変わっていたでしょう。
加藤:たとえば、自治体に総額だけ割り当てて、使い方は自由に任せてもいいですよね。
久保田氏:一つのやり方はそういうことですよね。
いまの補助金の在り方は地方を信用していない
加藤:お金出す人と、意志決定をする人が違うことによる弊害は大きいと感じます。
久保田氏:そうなんです。ただ、もし自由裁量にすると、自治体の能力によって、復興の在り方とかまちづくりなどに大きな差が出てくると思います。特に、市長さんがしっかりしているところと、そうじゃないところですね。
いまだったらメニューが一緒だから、ある意味で公平な復興がなされていると思うんですけれども、自由度を認めたときに、ある町はすごく工夫して良い町が作られ、他の町はそうではなくなる。
加藤:出てきますよね。でも、そのほうが自治体の自主性を尊重することになるので、総合的には良い気がします。他も良い事例は真似すれば良いですから。
久保田氏:本来、地方自治はそういうものなのかと思うんですけどね。だから、ある意味裏返しですけど、いまの在り方はあまり地方を信用していないとも言えると思うんです。
ただ、市長さん側にも一律の補助金メニューのほうが良いという人も少なからずいると思います。自分が責任を取らなくて良いじゃないですか。「国が進める通りにやりました」と言い訳をしたい市長さんも現実にはいるんです。陸前高田の戸羽太市長は自分で決めるタイプだから、使い道を決めたいと公言していますけども、必ずしもそれにみんな賛同しているという状況ではないですね。
▼「地方公務員オンラインサロン」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111482
全国で300名以上が参加。自宅参加OK、月に複数回のウェブセミナーを受けられます
▼「HOLGファンクラブ」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111465
・月額500円から、地方公務員や地方自治体を支援することが可能です
※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 内閣府から出向 副市長として復興を進める
第2話 2,000人の地権者の同意を得る
第3話 古本屋と組んで4000万円の財源を確保
第4話 遺族からの追及 埋まらない溝
第5話 復興時に財源とどう向き合うべきか
第6話 復興庁は被災地に置かれるべき
第7話 国はがんじがらめ 地方行政はフロンティア