インタビュー

【渋谷区 永田龍太郎氏:第4話】今までLGBTの人たちは透明人間だった

永田龍太郎4

LGBTに興味がない人が 副次的に学べる講座も運営

加藤:啓発講座について、渋谷区ならではの特徴はありますか?

永田氏:今、LGBTに関心がある人向けの啓発講座だけではなく、副次的にLGBTについて学べるというような形の切り口も意識しています。

 震災という切り口もそうですが、コミュニケーションスキル講座にも一工夫してみました。アサーティブコミュニケーション(自分も相手も尊重するコミュニケーション)やアンガーマネジメントなどを取り上げていますが、ワークショップのロールプレイングのケースとして、LGBTや女性が直面する課題を取り上げることで、LGBTについて知っていただくきっかけをご提供しています。

 部分的にLGBTが挿し込まれるようなテーマ設定は、アイリスならではかと思っていますが、これまでLGBTに関心のなかった人に知る機会を作ることは、理解の裾野を広げるという意味において、有効ではないかと考えています。

企業に対しても啓発講座を行っていく

永田氏:職場という空間は1日の中でも3分の1ぐらいの時間を占めています。ですから、企業でのお取り組みの推進も、とても大事なんじゃないかと思っています。そこで、今年度は区内の企業や事業所でのLGBTフレンドリーな取り組みの後押しに取り組んでいこうと思っています。

固定的性役割が LGBTの社会的困難に繋がる

永田氏:また、区の施設やお申し出のあった企業さんや学校に展示できるよう、条例についての啓発パネルを今年作りました。

 一番右、紫のボードの一番下ですが「多様な性の共同参画社会」と書いています。どうしても、男女共同参画とLGBTというのが別の柱のように捉えられがちですが、実際、LGBTの中でのさまざまな社会的困難というのは、男女のジェンダーギャップや差別、固定的性役割が根っこにあるものが沢山あります。男女共同参画とLGBT、どちらが欠けても、どちらも推進出来ないんです。

啓蒙パネル

月に2回電話相談を受け付けている

加藤:渋谷区では電話での相談を受けられていると思います。これはどういう取り組みでしょうか。

永田氏:「にじいろ電話相談」というものをやっております。月に2回、当事者の方、もしくは当事者の周りにいらっしゃる方からの相談を、お電話で受け付けています。

今までLGBTの人たちは透明人間だった

永田氏:行政がLGBTを支援するというのは、当事者にとってイメージしづらいんですよね。なぜなら、今までLGBTの人たちは透明人間だったわけです。いないものとして扱われていた。行政がある日突然いろいろな支援事業を始めても、情報が届かないんですね。

 ですから、なかなか電話の数が増えづらい状況に当初ありました。今は徐々に入電が増えてくる傾向にはあります。

加藤:1日の中で、相談件数はどのくらいあるんですか?

永田氏:1桁です。全然まだまだですね。なかなか相談の件数を増やすのに時間もかかるでしょうから、複数の自治体が連携をして実施するというのもいいと思います。実際にそうやっている自治体もあります。

LGBTは セーフティネットから遠い場所に置かれている

加藤:電話相談をされる方は、どのようなことをお話されるのでしょうか。

永田氏:困難に陥っているLGBT当事者で、困っているということを話す相手もいない方が、まずは話を聞いて欲しいというケースが多いです。

 もちろん、適宜「こういった相談先や支援情報もありますよ」という案内もしますが、話をされたらそれで満足して切電される方も多いです。

 いかに社会的なセーフティネットから遠い場所にLGBTが置かれているのかというのは、電話相談からも見えてきます。

加藤:お電話での相談は、永田さんが直接受けられるわけではないですよね?

永田氏:はい。業務委託です。他でも電話相談を受託されているNPOさんにお願いしています。

行政のさまざまな窓口がLGBTに対応できていない

永田氏:少々話がそれますが、行政のさまざまな窓口がLGBTに対応できていないんです。例えば、『女性・子育て課』といった所管名で男女共同参画を担当している場合です。そこで、DVの相談なども受けている場合、異性愛の女性が前提なので、ストレート男性のDV被害者だけでなく、ゲイやレズビアンの同性カップルも相談ができないんですよね。

加藤:なるほど。そういったことは他にもありますか?

永田氏:レズビアンカップルでお子さまをもうけられている方が実は多くいらっしゃるんですけど、そういった方の子育て相談対応や、トランスジェンダーの方の乳がん検診について対応体制が周知されているかとか、行政のさまざまな仕組みの中で受け入れ態勢が強く求められてゆくのではないかと思います。

渋谷だったら理解してくれるんじゃないか

永田氏:以前に、他自治体で生活保護のご相談をされたトランスジェンダーの方が、自認する性を尊重して対応してもらえなかったそうで、怒ってこちらにいらっしゃったという例があります。渋谷だったら職員も理解してくれるんじゃないかという思いでの来訪でした。

 トランスジェンダーの方は、自分の自認している性に応じてシェルターの利用ができない場合が殆どかと思います。もしくは、窓口でどんな無理解な対応をされるのか分からないので行けないとか、そういう壁があります。

 とはいえ、施設が男女で分かれているので、「全てご期待に添えるか分からないけれども、最大限ご支援します」ということで、内部で申し送りをして対応させてもらい、後日、その方からお礼のお電話を頂戴しました。

既存の行政サービスが LGBT対応することが効果的

永田氏:実はお金をかけて何か新しいことをやるよりも、既存の福祉サービス、セーフティネットが、ジェンダーやセクシュアリティの隔てなく対応できる体制になるほうが受益者は広いです。しかも、一銭も追加のお金をかけずにできることです。

 どうしても、パートナーシップ制度が注目されがちなんですが、受益者の数は限られています。LGBTの中で、同性愛者でパートナーがいて、さらに将来を誓い合っていて、さらにアウティング(暴露)のリスクを乗り越える覚悟も出来ている。とても少数です。

男性がDVを受けても 相談することができない

永田氏:これは、LGBTではないですけれども、DVは男性が被害者になる場合もあります。その場合に相談しづらいというのも、課題だと思っています。

 DVは女性が受けるものだという意識が前提にあって設計されていますが、誰でもさまざまな形の被害者や、社会的困難に陥る可能性があるという前提で取り組めている自治体は多くなく、渋谷区でも課題です。

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※本インタビューは全8話です。

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