【林 有理 経歴】
1980年、大阪府島本町生まれ。元リクルート/スーモマガジン編集長。退職後、リノベーションまちづくり分野で推進協議会事務局や事例紹介サイトの立ち上げ、講師や研究活動に従事。平成29年10月1日、四條畷市と民間サービス会社が連携して実施した全国公募により、四條畷市初の女性副市長に就任。現在3歳の娘の子育てに奮闘しながら、働き方改革を柱とした前例主義に縛られない「日本一前向きな市役所」をめざし、組織改革に取り組む。日経ウーマンオブザイヤー2020受賞。
様々な業務領域において、先進的な取り組みを実現する四條畷市。その躍進を、副市長の立場からサポートするのが林有理副市長だ。東修平市長の公約で行われた副市長公募を経て、2017年10月に就任。なんと、約1700名の中から選ばれた。
東市長の目指す「市民中心のまちづくり」「日本一前向きな市役所」の実現のために、林副市長はどんな組織を作ってきたのだろうか。就任後約3年の月日を重ねたタイミングに詳しく伺った。(※取材はオンライン)
約1,700人の中から副市長に選出
加藤(インタビュアー):2017年の10月に副市長の公募によって、約1,700人の応募者の中から林さんが選出されました。当時はどのような思いで応募されましたか?
林氏:当時の私は出産直後で、ちょうど仕事を休んでいる時期でした。家事をしながら聞いていたニュースで、副市長の公募を知ったんです。
それまで第三者視点という外側から住宅産業やまちづくりに関わる仕事をしていましたが、その知見を内側から役立てたいと思うようになっていた時期でした。
加藤:そういうタイミングで副市長の公募を知ったのですね。
林氏:はい。公的なプロジェクトに関わりたいとは思っていましたが、まさか副市長の道があるとは思いもしませんでした。そこから家事や子育ての合間にスマホで志望動機を書いて、締切ギリギリで応募をして、まさかのご縁をいただいた形です。
市長が作りたい街の姿を最優先
加藤:最初はどんな業務をされていましたか。
林氏:まずは自分のスタンスを決めるところからでした。というのも、他市の副市長などを見回しても色んなタイプの方がいて、それぞれの特色を活かして役割を担っているんです。ですので、私はどのような特色を生かしてやっていこうかと。もちろん地方自治法上の副市長の役割は押さえながらですけれども。
結果として、市長がつくりたいまちの姿を最優先に考えました。
加藤:それはつまり、市長マニフェストの実現ということでしょうか。
林氏:そうですね。ただ、公約に書かれている文章を読んでいるだけでは、自分の中に叩き込むレベルにならないんですよね。ですから市長と徹底的に会話して、市長の言葉をたくさん拾い集めながら、自分の中に同じ像が描けるように努めました。
それを少しずつ職員に投げかけてみて、実現までの課題感やスパン、具体的な手法などを明確にしていく。そんなことを半年ぐらいは重点的にしていました。
副市長は市長の翻訳者たれ
加藤:市長と職員では視点が大きく異なるので、間で伝えるのは大変そうですね。
林氏:なかなか大変ですが、副市長は「市長の翻訳者たれ」だと思っています。まず最大の理解者であるべきですし、同時に職員に対して絶対にミスリードしてはいけないですよね。
四條畷市の場合、公約で「市民中心のまちづくり」と「日本一前向きな市役所」の2つが掲げられているので、そこだけは間違わないようにしていました。
加藤:軸をぶらさないことはとても大事ですよね。その上でどのように翻訳されたのでしょうか。
林氏:基本的に「市民中心のまちづくり」は対市民の話で、「日本一前向きな市役所」は対職員の話ですが、であればその内容を市民の皆さんや一職員まで具体的に理解してもらいたいですよね。それをお伝えするための言葉を引き出すために、たくさん市長に壁打ちをさせていただきました。
それを職員に話してみて反応を見ながら、時にひんしゅくを買いながら(笑)、続けていきました。その中で、市長が目指す世界観で「この分野は一年じゃなく数年かかるな」とか、「意外とこの辺には納得度が高いな」とか把握して、ゴール設定を明確にしていきました。
社長と市長の違い
加藤:ところで林さんは民間出身ですが、社長と市長にはどんな違いがあると感じましたか。
林氏:社長にも色々な人がいるように市長にも色々な人がいると思うんです。市長についてまず理解すべきなのは、選挙がベースにある点ですよね。会社の社長と比較すると、行政のトップである市長はそこに立つまでの経緯がまったく違っています。
ですから職員にとっては外から来た市長を理解するという意味で、特に東市長のように一期目となると「どんな人だろう?」から始まるわけです。
加藤:たしかに経緯の違いは大きいですね。
林氏:はい。だからこそ、やりたいと思うことを実行していく決断が非常に難しい。その前提を踏まえた上で、副市長としてどんな方法で市長の実現したいことをサポートできるのか考えることが大切だと思います。
(取材=加藤年紀 編集=小野寺将人)
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