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熊谷俊人1

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行政は「面白く」「分かりやすい」説明が必要 千葉市長 熊谷俊人#1

-千葉市が2009年に発出した「脱・財政危機」宣言が、2017年9月に解除された。その理由は、財政が危機的な状況を脱し、財政指標の改善が認められたためである。

 2008年から2016年度における千葉市の実質公債費比率の推移は20.1%から17.3%、同期間の将来負担比率は309.6%から186.2%となる。その財政健全化を主導した千葉市、熊谷俊人市長に財政健全化について伺った。

後世に役立つことが重要

加藤(インタビューアー):2009年に就任された際に、財政再建に対してどのような思いがありましたか?

熊谷市長:やはり、世代の違いが大きいと感じますが、われわれの世代はこのままではまずいという将来不安が強いと思うんです。そういう状況では、将来、安心できる状態を作る責任があると思いました。

 最悪、財政健全化のために敵を作ってしまい、一期で辞めざるをえない状況になったとしても、後世には役立つことになると当時は考えていました。ですので、とにかく人気は減るだろうなという思いの上でも、財政健全化を推進しようとしました。

加藤:一般的に財政再建の話は市民にはあまり受けません。選挙の時には強めに発信したんですか?

熊谷市長:はい、強めに発信しました。当時、二本の柱を主張したんです。一つは、前市長が逮捕されたため、市役所の体質をオープンにしなければいけない。もう一つが千葉市の財政危機です。予算の使い方を変えなければいけないと、選挙で方針を訴えました。

誰が見ても突出した数字

加藤:財政に関するお話で、市民の反応はどのようなものでしたか?

熊谷市長:当時、流れが良かったというのはありますよね。夕張が破綻して、放っておくとマズいというのが皆の中であった。

 そして、数値的には千葉市は圧倒的に悪かったんです。例えば、吉田雄人前市長がいた横須賀市や、仲川げん市長の奈良市は財政状況が良いとは言えなくとも、見た目として「やばい!」というイメージにつながりづらい。だから、「財政再建ばかりでは元気がなくなってしまう」という論調が出てきます。

 でも、千葉市は誰が見ても突出した数字ですから、さすがにみんなが「やばい」と分かる。さらに、我々が財政再建を進めている最中にギリシャの財政問題が顕在化したことも追い風になりました。正直、3期目までここまで順調に受け入れられるとは思ってなかったですね。

思っていたよりも財政再建が評価された

加藤:3選を決めた昨年の選挙で、得票率81.3%というのは異常ですよね。

 クレバーな市長に多いのは、人気が得られる政策を進めながら、地味で不人気であっても重要な政策もしっかり進めているように思えます。

熊谷市長:仰る通りです。人気のないことをやるために、普段しっかりと支持され、人気につながるようなものをコンビネーションでやっていく。もともとはそういうつもりだったんですよね。

 これが基本的な政治スタイルですけれども、意外にも財政再建を評価してくれた人がたくさんいて、それもトータルではプラスに働いていることが分かりました。これを見て、やはり千葉市民はすごいと思いましたね。

千葉市議会が財政再建に理解を示す

加藤:議会との関係はどうでしたか?

熊谷市長:市議会が財政再建路線に反対をしなかったこと、これはとても助かりました。もし、千葉市と市議会で世論を二分するような状態になっていれば、今のようにはできていなかったです。事業を進める手法の違いはありましたけども、大方針における政治的な対立軸はなかったんです。

加藤:もともと千葉市議を務められ、議会との関係が強かったというのもあったのでしょうか?

熊谷市長:いえ、私個人として議会との対話を心がけましたが、それぞれの会派の影響力を持つ人が、もともと財政再建に理解があったというのが大きいと思いますね。

揉めない行政運営

加藤:職員の給与減額なども含め、改革をしている割に敵がいないですよね。

熊谷市長:周りと揉めていないんですよ。だから、マスコミ的には面白くないかもしれません(笑)。方針争いはほとんどしてない。

 細かい事業では色々ありますけども、大きな方向性について9年間、方向がズレていることはないんですよ。ですので、本当に千葉市はすごいスピード感でここまでこられたと思いますね。

加藤:市民に対して財政再建を訴える時に、どういう手法が重要でしたか?

熊谷市長:一番はリアルな対話ですね。ひたすら対話会をやりましたから。対話会を毎年やり続けることが一つだと思います。また、市政だよりの一面の市長メッセージでも、細かい財政状況の話は、4月号で予算を、11月号では決算の進捗を必ず伝えていました。地味ですがそれは確実に広がっていきます。

行政には「面白く分かりやすい説明」が必要

加藤:対話会や市政だよりは、比較的に高齢の方にリーチしているでしょうか?

熊谷市長:そうです。一方で、若い方にはブログやツイッターとかで共有する感じですね。若い人の方が将来に対する関心がありますから、少し話をすると理解してくれる人も多いです。

加藤:情報発信の際に課題に感じることはありますか?

熊谷市長:大事なこととして、僕ら行政は「なぜこうなのか」という話をもっと分かりやすく噛み砕いて、かつ、面白く説明しなければいけない。特にこの「面白く」が大事だと常々思います。

 行政は正しいことを発信しているんです。でも、面白くないから全く読まれない。有権者に選ばれた立場として、有権者の頭に入るような形で面白く、分かりやすく説明していく。それは僕らの仕事だと思いますけどね。首長や議員がその意識を強くすれば、関心のある人たちには広く理解してもらえると思います。

※本インタビューは全3話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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