インタビュー

【元豊田市 伴幸俊 #1】人事考課と昇任試験は市民のため

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【伴 幸俊(ばん ゆきとし) 経歴】
1982年に豊田市役所入庁。福祉課に配属、その後に財政課に異動。1996年より人事管理室に配属となり、所属した7年間で先進的な人事制度を確立した。以降、秘書課、東京事務所長、教育行政課長、市民福祉部長などを経て、2019年4月より公益財団法人豊田地域医療センター、事務局 副局長を務める。

 20年以上前に人事制度をボトムアップで改革した自治体がある。愛知県豊田市だ。当然、人事制度改革には大きな抵抗を伴う。その状況を先頭に立って打破したのが元豊田市職員の伴 幸俊さんである。伴さんはどのような意図を持って人事制度を改革し、そして、どのように実現させたのだろうか。自治体の人事をより一層質の高いものとしたい全ての人事担当職員に、そのヒントを届けるべく伺った。

課長よりも給与の高い定年間際の係長

加藤:人事改革を進めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

伴氏:私が人事の仕事をやりだしたのは、1998年。豊田市が中核市になる少し前からです。当時の中核市の人口要件は30万人以上の都市で地域の中核を担う都市でした。豊田市も都市として何か脱皮したいっていうのが、組織の中になんとなくあったんですけど、人事制度を始め旧態依然とした組織運営はあまり変わっていなかったように感じていました。

 私が豊田市役所に入ったのは1982年ですけど、新人ですから課の親睦会の幹事をやらされて、親睦会費を給料から何%もらっていく形で集めていました。そのとき課長の給与よりも、定年間際の係長クラスの人のほうの会費が高かったんです。「責任ある職位の人の報酬が部下より低い?」そんなことが、社会人になってすぐにショックを受けたことでした。
 そして、ご存じだと思いますが、豊田市にはトヨタ自動車の本社があって、当時すごく潤沢な法人市民税が入っていました。税金を有効に使うことができるような、チャレンジングな組織風土にしなければいけなかった。せっかくお金が入ってくるなら、守りの行政ではダメだと思っていたことも改革につながったと思います。

自治体の人事制度改革は市民のため

加藤:人事改革を進める際に、意識したことはありますか。

伴氏:最も大切なのは、自治体の人事制度改革は“市民のため”だということです。これだけは、決して外してはいけないものだと思っていました。平等性とか納得性ばかり気にしてはダメだということです。役所内のルールで平等性や納得性を高めることに縛られ過ぎると、市民サービスの向上に結びつけるという、制度設計本来の目的を見落とすことになるんです。

 私が20年前の時は、自治体の人事考課制度で給与へ反映したりする、本当の意味での考課をやっている自治体はほとんどなかったです。豊田市も同じです。そこで、人事制度改革を進めるにあたり考えたことは、仕事に直結し改革の骨格となる人事考課制度から手をつけようとして進めました。トータルな人事システムを考える時は、『評価』、『採用・配置』、『育成』、そして、『報酬』という4つの要素を相互に連携させることが必要ですが、まずは仕事のやり方に直結する考課制度に重きを置いたのが豊田市の特色です。

人事考課制度の流れ

人事考課制度から改革を進めた

加藤:実際に最初に考課制度から手を付けたのでしょうか。

伴氏:そこが制度改革のスタートでした。まず、組織の目標をしっかり立て、その目標から個人の目標へブレイクダウンをする。組織全体と同じベクトルで、個人のミッションを明確にしながら、年度当初に個人目標を立てるようにしました。

 その目標がどの程度困難なのか、そして、どの程度達成できたのかを見ていきます。もちろん、難易度や成果には数字化が難しいこともありますが、あえて100点満点で点数化する仕組みにしました。5段階にすると、置きにいくような安易な評価で終わることも多いし、この制度では緻密な評価を期待するのではなく、仕事のやり方をチャレンジングに変えていくことが主目的だと考えていたからです。豊田市の人事考課はアセスメントツールではなくマネジメントツールとして設計しました。したがって、なぜ65点なのか、70点なのかという根拠を職員一人ひとりが理解できるように設計することが大切だと考えました。

難易度設定でよくやる誤り

加藤:人事考課ではどのような項目を評価するのでしょうか。

伴氏:成果と能力、そして、態度で評価しました。項目としては一般的考課と変わらないと思いますが、特に成果を重視し、ボーナスに差をつけ、昇任、昇格にも影響するようにしたこと、あわせて、昇任試験も導入し制度をリンクさせ、ペーパーテストだけではなく、この人事考課の点数を加味する制度設計なしたことなどが特徴です。

給与反映をしないと・・・

 改革のスタートとして、まず変えていくべきところを人事考課と昇任試験に絞って変えていった。その中でトータルな仕組みを考えていきました。そうして進めていくと、やっぱりこれだけじゃダメだとなって、先の総合的な4つの要素を連携させて、人事制度を完成させていくことが必要だと感じたんです。しっかりした人材育成基本方針があって、改革のビジョンや具体的プランがありましたと言えればカッコいいんですけど、そうではありませんでした(笑)。

豊田市の人事考課制度の特徴

昇任試験も市民のため

加藤:他の役所の事例は参考にしたのでしょうか。

伴氏:いえ、資料はかなり集めましたが、昇任試験も当時は同規模のほとんどの自治体がやっていなかったんです。政令市はかなり以前からやっていたように思います。ただ、実態を聞いてみると落とすための試験でした。つまり、それは判例とかまで知らないと正解がだせないような試験だと聞きました。私は、昇任試験は選抜するためではなく、職員全員を成長させ、市民サービスを高めることにつなげたかったんです。そのために、落とすための難解な試験ではなく、少し勉強すれば誰でも解ける昇任試験にしました。参加率を上げて、みんなが勉強する風土を作ろうと考えました。

昇任試験 試験科目と配点率

加藤:人事制度も市民のため、昇任試験も市民のためなんですね。

伴氏:HOLG.jpの読者や取材されている公務員の方は、日々何らかの勉強をしていると思うんですけど、多くの公務員はそれほど勉強しているわけではありません。家に帰ってナイター観て、ビール飲むのが普通だったりもします(笑)。もちろん私もそういう時が多かったです(笑)。

 だけど、係長や課長という、重要な職責を担おうとする時は、やっぱり1年ぐらい真剣に勉強しようよ、と。それが難解な法律問題を勉強するのではなく、市の総合計画をふわっと理解することが大切だと思いました。総合計画をしっかりと読み込んだことのある職員って意外と少ないんですよ。でも、そこから問題を出すって言ったら、試験を受ける年には一通り読んでくれますよ。いつ役に立つか分からない難解な法律問題ではなく、市職員として知るべき大きな計画や、知ってほしい制度や仕組みを試験にした方がいいと思うんです。

職員が成長するきっかけのための昇任試験

伴氏:だから、試験は選抜のためじゃなくて、その職員が伸びてもらうために実施します。落ちた人が出ても、職員として目指すべき方向性を知ってもらうことができます。豊田市は3年ほど前に確認したころ、課長級の昇任試験の受験率が80%で合格率が20~30%。係長級の受験率も50%超で、合格率が20%程度だったと記憶しています。現在もそんなに大きく落ち込んでいないと思います。他の自治体だと、昇任試験の受験率が1割を下回る自治体があります。中間管理職になりたくないという傾向は、こうしたところにも顕著に現れてきます。自信をもって上位の職について活躍する職員がいなくなれば、市民サービスのレベルは低下していくと思います。

加藤:試験制度を作った時に、対象職員からはどういう反応があったのでしょうか。

伴氏:最初のころは、よく文句を言われましたよ。「お前、こんな面倒くさい制度入れやがって」みたいな。だけど、「いい勉強になった。こんな制度でもない限り、絶対勉強しなかった」と感謝かな? そういうことを言う人もいました(笑)。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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