若手であっても今できるベストなことを積み重ねていきたい
加藤:若手職員として、こうしていきたいと意識していることはありますか。
佐々木氏:若手でも『今できるベストなこと』を積み重ねて、活躍のできる状態に自分たちを持っていきたいです。そうすれば、みんながそれぞれの場所で、地域を盛り上げられると思うんですね。
自分に持っていないスキルは他の人の得意なことで、他の人が不得意なことは自分の得意なことで補い合いながら、一緒に良いものをつくって社会のなかに生み出していけると思っているので、身近な若手のみんなが一歩何か新しいことに踏み出して、楽しみながら一緒にチャレンジしていけたら嬉しいです。
自治体の中では沢山の人が必死に仕事をしていることも知って欲しい
加藤:民間の方と触れ合う機会も多いと思いますが、何か伝えたいということはありますか。
佐々木氏:公務員だから「どうせ頭固いんでしょ」とか、「お役所仕事だしな」とか、「公務員=マイナス」のイメージが先行しがちだと思うんですが、よくよく組織の中を見てみると、全然そんなことないです。面白い発想やアイディアを持っている方も、その道のプロで素晴らしい能力を持っている方も中にはいるし、組織というしがらみの中で個が上手く生かされていないことのほうが多いんじゃないかなと、個人的には思っています。
現に、全国に目を向けると、勤務時間外での公務員の自主勉強会の動きはゴロゴロ生まれてきていますし、まだまだ一つの組織の中で見れば少数派かもしれないですけど、公務員だからとか、民間だとかそういう肩書きとか関係なく、自分たちのまちをもっと良くしたいとか、もっと楽しくしたいとか、そういう想いで地域に飛び出し活動している公務員がいることも知って欲しいです。
官民で信頼感を醸成するということは、お互い本気で向き合って取り組む覚悟がなければ簡単ではないと思いますが、私はそういうお互いの理解や関係づくりも含めて、この立場にいるからこそできることを、これからも貪欲に挑戦していきたいなと思っています。
地方自治体は地域と向き合って仕事ができる
加藤:最後に自治体で働く『だいご味』を教えていただけますか。
佐々木氏:地域課題の解決は一市民や一個人、一団体がどうこうして全てを変えられる話ではないと思っているので、自治体が世の中の流れや状況に応じて、自分たちのまちの制度や仕組みを的確に変えたり、課題解決に向けて先見の明を持って、スピーディに動き出したりすることの意義や希望はすごく感じています。
その地域に暮らす方、想いを持って活動をしている方の顔が、国や県庁に比べてより見える関係の中で、目に見える形で大きく仕組みを変えたり、地域に寄り沿いながら喜びや悲しみを分かちあえるような仕事ができることは、だいご味の一つだと思います。
佐々木氏:また、いろいろな専門分野があって、それぞれの分野にそれぞれのステークホルダーも沢山いるので、人事異動しながら常に地域全体のことを学ぶこともできますし、仕事の中で関わる幅広いステークホルダーをコーディネートすることができるのも、この職業ならではなのかなと思っています。
ちなみに、今日のインタビューの中で「肩書きとか関係なく!」みたいなカッコつけたことをお話ししてたような気がするのですが(笑)、ぺーぺーの自分からすると、公務員の肩書きは良い意味で大いに利用すべきだと思っています。
公務員の名刺は『魔法のカード』なので、右も左もわからない若手ならなおさら、公務員という信頼性を武器に、どんどん外に飛び出して、組織や専門分野、地域をも越えて、たくさんの人と出会って話をしてみる。
佐々木氏:そうすると、私自身がそうだったのですが、見える世界がガラッと変わってきます。たとえ地方にいたとしてもできることや自分が知らなかった世界がたくさん見えてくるし、毎日がもっとワクワク過ごせるようになるのかなあと思っています。それを仕事の中にもつなげられるように働くことができるのは、大きな魅力の一つだなあと感じています。
加藤:『魔法のカード』、いいですね。確かに、公務員であることの信頼というのは、もっと活用できるかもしれないですね。
ありがとうございます。インタビューは以上となります。
佐々木氏:こちらこそありがとうございました。
編集後記
佐々木氏は入庁4年目である。自分自身の社会人4年目を振り返ってみると、ここまでの行動力と成熟した考え方を持つことができていたかは、はなはだ疑問だ。
佐々木氏のすごみには、まさしく行動量や考え方というところにある。だが、特筆すべきは一定の自己承認欲求を、既にこの年齢で満たせているということだと思う。自己承認欲求を満たしている人は、本質を突き詰める。そして、自分をひけらかすこともなければ、安易に他人を責めることもない。何か受け入れがたいことがあったとしても、その事象からできる限りポジティブな要素を抽出して向き合うことができる。
たとえば、上司に怒られたとしても、「怒られた→自分はダメな人間だ→もう嫌だ」ではなく、「怒られた→なぜ怒られたのか?→今後どうするべきか?」という本質的な観点で、未来に向けて思考を深堀りすることができる。これは、長期的に人生を生きていく上でも、大きな強みになると思う。
若手時代には自治体職員のみならず、誰もが自分の能力や価値というものの不確かさに直面する。「自分は組織に必要とされているのだろうか」「自分はこの組織で一生を終えるのか」なんていう不安の種は尽きることはない。そうした悪循環から抜け出すには、佐々木氏のいうところの『今の自分ができる最大限の行動』ではないかと思う。そういうところから、人からの評価というものは少しずつ生まれるものだ。
一方、組織における上司部下の関係性も変わってきていると思う。今の時代では頭ごなしの上意下達によるマネジメントでは、うまく新人に動いてもらうことはできないだろう。
社会人生活を10年も20年も経ると、既にそういう「自分の存在価値とはなんたるか」という命題には、良くも悪くも多くの人が折り合いをつけている。恐らく、自分が悩んでいたことすら忘れてしまっていることも、少なくはないのではないだろうか。
しかしながら、我々のような中堅世代には、そんな小っ恥ずかしい時代を反芻することが必要かもしれない。その上で、若手に対して手を差し伸べ、受け入れてあげることで、若手の渇望する『承認欲求』を積極的に満たすことができるのではないか。それは自治体の多くの仕事が、長い年月をかけて成果につながることと同じように、長い年月において若手を支援し、ひいては自治体の成果を生み出すことにもつながる。恐らく、それにかける労力や人件費をも上回る、投資対効果が生じるのではないか。
そして、賢い若手は静かに、そして注意深く先輩や上司を見ている。『気遣い』『前向きさ』『立場や年齢に関わらず誠実な対応』『自らが変わり行動する姿勢』『自分だけでなく、みんなでシェアして仲間を拡げていく姿勢』。改めて見返すと、なかなかに高いハードルではないか。
小人物である自分には身の引き締まる思いがしてきたところで、今日のところは逃げるようにベッドに身を預けたいと思う。
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第1話 地域コミュニティが衰退している現場
第2話 「文句を言ってやろうと思ったけど、熱意に負けたよ」
第3話 まちの中で一生懸命頑張っている大人たちがかっこいいと思った
第4話 若手が役所でやりたいことをするには
第5話 陰口を気にしたら、やりたいことができなくなる
第6話 若手であっても『今できるベストなこと』を積み重ねていきたい