インタビュー

【元豊田市 伴幸俊 #2】組合員による上司診断の導入が、人事改革の布石

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達成度が低くても評価をする仕組み

加藤:伴さんは、人事制度を改革して、職員にチャレンジをしてもらうことを目指したわけですよね。

伴氏:はい。人事考課における目標設定でも、成果の大きい目標を立てるような仕組みを意識しました。一般的に目標管理制度の弱点は、難易度の低い目標を掲げ、それを安易に達成していくことから制度自体を否定されたりします。こうならないために、豊田市では「難易度が高くて、達成度が低い場合」と「難易度が低くて達成度が高い場合」は、前者の評価を高くする仕組みとしました。
 その点数の算定方法を職員に公開していますから、うちの組織では失敗してもいいから、難しい仕事にチャレンジするほうが評価されるんだ、と思うんです。

 また、ここは理解してもらうのが大変でしたが、部署の目標に対して、管理職が具体的な行動として何をするのかを書いてもらうことも注力しました。よく、管理職は組織の目標を個人の目標としてそのまま評価項目に書く場合があるんですが、「あなたは具体的に何をするのか」ということが重要です。単なる組織管理をしているだけで、部下が頑張ったのに上司がその成果を横取りするようなことはだめですから。

組合員による上司診断の導入が改革の布石

加藤:上司診断というものもこの時に設計されました。これはどういったものでしょうか?

伴氏:上司診断というのは、部下が上司を評価する仕組みです。評価項目として、「指導力」「企画力」「調整力」などを部下が点をつけるのです。漠然と指導力で何点とつけていくのではなく、「課員の前で課の今年の方針を説明しているか」など具体的な行動として部下に評価してもらいます。これなら部下も評価できますし、評価される側の行動指針にもなります。自己評価もありますので、「これをやれてなかったなあ」という反省材料になるということです。
 また、上司診断の結果を人事考課に反映する市もありますが、豊田市では部下からの人気取りになることを防ぐために、人事考課には入れませんでした。部下は上司を正しく評価できるとは限らず、「いい人だな」とか、そんな程度のことで評価されたものが、昇任や昇給、あるいはボーナスに影響するのは違うかなと思ったからです。あくまでも上司に自身を振り返ってもらうため、つまり、自己研鑽の資料として活用してもらいました。

上司診断制度を設計してみよう!

加藤:部下が上司を評価する風土を作るのは簡単ではないように思います。

伴氏:始まった当初は、怒ってきた上司もいました(笑)。実は、この上司診断は考課制度改革の布石として、考課制度を組合員、豊田市では係長以下ですが、この階層に導入する前にやりだしたものです。人事改革の一番の抵抗勢力は、職員自身であり、職員組合ということが多いと思います。どこの自治体の組合も「職員に差をつけるな」って大反対をしていましたね。
 そこでまずは職員への理解が重要だと思い、初めに組合員に上司を診断してもらったわけです。評価することは決して悪ではないということを、組合員に身を持って知って欲しかった。いい職場になるし、上司部下間でもコミュニケーションがとれるじゃないか、と。実際、いざ組合員が指摘をすると、上司がそれを汲んで変えていった。部下からの声って意外と気にするんですよ。そうすると、普段言えないことを言いやすくするツールとして、「評価する・される」ということは悪いことじゃないよね、という職場風土ができてきたと思います。

 その流れが理解を得ていくと、組合との交渉がやりやすくなります。「あなたたちも評価しているんだから、上司も部下を評価する。それが人事考課制度だよね」と進めることができたんです。豊田市の評価制度は、この一連の制度改革よりかなり以前、一度、組合と決裂して失敗しているんです。上司診断は自己研鑽のツールであると同時に、人事考課制度導入のための下準備でもありました。

加藤:その後、伴さんご自身も上司診断を部下から受けるようになったのですね。

伴氏:ありがたいことに“強み”を書いてもらうこともありましたが、“弱み”として「自分の思いが強く、他課との調整が困難な時がある」「部下育成への熱意や厳しさが、部下を萎縮させることがある。」「声をかける職員に偏りが生じている」という声も課長時代にありました。ただ、そう言う声は、自省を促すうえでとても大事なことだと思います。正直よく部下は見ているなあと思いました(笑)。

20年前に採用試験のペーパーテストを廃止

加藤:人事考課の次に何を変えましたか。

伴氏:採用制度です。おそらく、全国で初めてだったと思いますけど、ペーパーテストを廃止したんですね。最近そういう自治体も増えてきたみたいです。

加藤:当時の状況で進めるのは大変そうですよね。

伴氏:地方自治法には「採用は能力に基づいてやらなきゃいけない」って書いてあるだけで、ペーパーテストをやれとはひとことも書いてないわけですよ。それから、国や県にも聞いてみたんですが、「そりゃ書いてないけど、情実採用になったらどうするんだ」とかいろいろ言われましたが、結局、ペーパーテストしないとダメとはならなかったんです。

 だから、最初は3人ぐらいの枠を公募してみました。当時、こういう面白いことをやる自治体と言ってもらって、県外からも応募がありました。景気が良い時は、企業に優秀な人材が流れていきます。そういう人材を役所が戦略的に採りにいくために今までの制度を変えないといけないと考えました。現在は採用の半数ぐらいがこうした形態になっていると聞いています。

研修で人は育たない

加藤:さらに、研修面も変えていきましたよね。

伴氏:よく「人材育成はどうしていますか?」と自治体の人事担当者に聞くと、「研修をやっています」って返事が来る。でも、私は研修で人が育つというのは真っ赤なウソなんじゃないかと思っています。
 もちろん、自己啓発の動機づけにはなりますが、研修で人が育ったなんて実感したことは少ないです。ただ、研修がなくてもいいかというと、そうではないと思っているんですね。

 当時、アセスメント研修というものを作りました。もともとは2泊3日の宿泊研修としてスタートしました。これは、人事考課制度とも関わるんですが、アセッサーという、人を見ることのできる外部のプロが職員の議論を聞いて、その強み弱みを分析してフィードバックするんです。
 それによって、「市の求める部長像、課長像を理解してもらうこと」「自分の特徴を活かした組織貢献の方法を考えてもらうこと」を目的に実施しました。

加藤:研修はまさにきっかけで、結果として視野が広がったり、やる気を引き出すことにつながるといいですよね。

伴氏:はい。人事制度改革は職員にやる気を出してもらうことが大切なテーマです。これは私が仕掛けたことではないですが、自主研究会のグループの奨励や支援、功績表彰として研究論文や提案制度など既存の制度も活用することで、豊田市では職員のやる気を高めようとしていました。

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