インタビュー

【元豊田市 伴幸俊 #3】人事制度改革のメリットとデメリット

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スペシャリストを育てなければならない

加藤:豊田市の人事がすごく先進的だと感じたのは、ジョブ・ローテーションを考える際の部署の分類です。

ジョブ・ローテーション

伴氏:役所の仕事を4系統17分類に分けています。その背景には、ジョブ・ローテーションというものが、単に課の異動をさせることではないからです。大切なことは、具体的な業務内容ですので、職員の異動部署だけでなく行った業務まで管理しながら育成していく制度としました。

 ジョブ・ローテーションの流れとしては、35歳までは自分自身のやりたいことを見つけてもらうようにしています。それから、スペシャリスト系でいくのか、ジェネラリスト系でいろんな部署を渡るのかは個人が選択できるようにしています。この制度をベースに、自分の希望の所属に異動できるジョブ・リクエストも実施しだしました。

経歴管理システム

加藤:ジェネラリスト・スペシャリストの2つの比率はどうなりますか。

伴氏:結果としてジェネラリストが8割以上と思います。スペシャリストといっても、彼らも専門部門に閉じ込めるわけではありません。たとえば税のスペシャリストになろうとした場合、財政課や企画課、議会事務局にも異動します。しかし、福祉部には来ることはありません。市の大きな仕組みは理解しながら、専門性を発揮してもらう仕組みです。

 ちなみに、スペシャリストを志望する職員が優秀とは限りません。ですから、彼らが昇進していくかどうかは別次元の問題と考えますが、好きな仕事に携わることで力を発揮して、組織力が上がり、市民サービスが向上するなら、そのほうが個人にとっても組織にとってもベターだということです。

加藤:スペシャリストが増えてほしいと思いますか?

伴氏:思います。質の高いサービスを提供するには、専門性は欠かせません。自治体の職員がそれなりの力を身につけなければいけないと思います。もちろん、部署をある程度固定したからといって、本当に素晴らしい仕事ができるようになる保証はありません。癒着のような心配もある。それでも、行政が専門知識を求められている時代です。優れた政策を立案できるスペシャリストをもっと育てるべきだと思います。

異動はスキルを高めるわけではない

加藤:自治体では、異動がジェネラリストを育て、それが組織にとって良いという考えが強いですよね。

伴氏:異動させればスキルが高まるとは思っていません。結局、「なんで公務員は育つのか?」ということですよね。これは、元大阪市の職員で、現在、早稲田大学大学院政治学研究科の稲継裕昭先生が、『自学』ということを言われていますが、私はそれに共感しています。人事異動はひとつのきっかけにはなるけど、それ自体で人が育つものではないと思います。

加藤:本人の意思やモチベーションに適い、能力に合うような異動であれば、人を育てるきっかけになりうるとは思います。しかし、そうでない場合は個人の力だけでなく、組織の力を弱めると思います。

伴氏:そもそも、異動を繰り返して色んな部署の制度を知れば、立派な公務員になれるという勘違いはありますよね。単に制度を知っても、それを正しく使いこなし成果にコミットしなければ、知らないのと一緒です。

 たぶん、加藤さんがよく会う公務員は、異動と関係なく、与えられた現場で自分なりの目標を立て行動に結び付けている。そして、日々勉強と行動を繰り返して成果を出す。そうした職員が今注目されているのではないかと思います。

人事制度改革のメリット

加藤:人事制度改革を振り返ると、どのようなメリットがありましたか?

伴氏:メリットは、まず可能性を秘めた多様な人材が採用できたことでしょうか。プロパーの公務員に刺激になるような民間経験者も入ってきたので、それは大きかったと思います。それと、昇任試験の受験資格の年齢を大幅に下げたので、若手の管理職、係長がどんどん増えました。以前の豊田市はトップで昇進しても、初めて部下を持つのが40歳ぐらいだったんです。

 今の豊田市には能力のない課長がいないと思うんです。もちろん、それなりの個性やクセはあるでしょうが、客観性も含め一定の能力をもった人材が課長になっていると思います。

 それと、個人が上司と面接をして、ミッションから行動までを具体的に共有できる組織体制が出来たことは大きいと思います。どういう行動をすれば、成果や評価につながるかが見えている状態にあり、個人が前向きに行動できますよね。目標管理がない時代に比べ、仕事のマネジメントがやりやすくなったと言う部長さんもいました。

 今また働き方改革など社会環境は変化してきており、この制度が今のままでいいとは思いませんが、当時としては、改革を仕掛けた20年前の横並びの前例踏襲型組織に変化が現れたことが最大のメリットだと思います。

加藤:逆にデメリットはありましたか。

伴氏:個人の能力成果主義を徹底すると、能力が追いつかなかった人のモチベーションが下がることはあります。また、どんな制度でもどんな改革でも、時の流れとともに形骸化・マンネリ化してしまうということはあると思います。改革は仕掛け人が入れ替わると、どこかで思いが途絶えてルーチン化してしまうのだと思います。そうなると、運用の問題であっても制度自体が悪いという話になります。仕事って制度と運用がかみ合わなきゃいけない訳です。

加藤:多少筋が悪い戦略でも、運用にあたる現場の実行力によって勝てることだってありますからね。人事配置ひとつも、言ってみれば知的労働なので、運用する個の力量も当然のごとく必要だと思います。

伴氏:そういう意味では、経営層や管理職層が、どこまで本質を理解しているかが大切だと思います。そうすれば、多少、組織によって制度の違いがあっても、その都市なりのしっかりしたマネジメントもできるはずなんです。

加藤:組織である以上、可能な限り仕組み化を目指すべきだと思います。ただし、どれだけ仕組み化しても、運用部分が仕事の質に影響する余地は必ずありますよね。個人の能力の差が出るポイントは、その仕組みを変えられるかどうかと、その仕組みの中で高い成果を上げられるかではないかと思います。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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