[記事提供=旬刊旅行新聞]
2001年4月から04年3月まで、窓を開けると眼下に広がるのはオランダの町と海のパノラマというところに住んでいた。
なんのことはない、01年長崎国際大学という大学に教授として着任した僕に社宅として与えられたのが、ハウステンボス(以下HTB)を見下ろせる丘の上に立てられた新品のマンションだった。大学はそこから歩いても15分くらいのところにあった。
本当に贅沢な待遇で、HTBの景観は見飽きなかったし、教職員、学生には無料パスが支給されているので、朝から晩まで自由に出入りできた。
やはり、HTBは朝ぼらけが一番。パーク内のホテル居住者と僕らのような関係者だけが正式開門時刻前に入ることを許された。午前7時前くらいにパークに入ると、爽やかな風が通り抜け、お店は1つも開いていないが(本当はよい香りのするパン屋さんくらい開いていてほしかったけど)、レンガの道を踏む自分の足音がきれいにリズミカルに聞こえる。
これがHTB創業者の神近義邦さんが作りたかった静謐で、心豊かで、清々しく、エコロジカルな都市というものだろうな、と感じてたものだ。神近さんはそれを千年王国と呼んでいた。
当時、東京ディスニーランドをしのぐスケールで開業したHTB創業者、神近さんが9月5日、長崎県・西彼町で静かに息を引き取られた。
今振り返ると、この2200億円の巨費を調達した時の神近さんは、50歳になる前だった。その若さで興銀から融資を引き出し、自分の夢を実現した体力、気力は大変なものだ。僕は雑誌の編集者としても、大学関係者としても神近さんにお会いする機会が多々あった。とくに、エコロジーに関する弁舌は熱意があふれていたなあ。
護岸をコンクリートにせず、石積みで行った結果、白鳥なども容易に上陸できて一つの景色になったし、排水を真水に戻す水質管理システムは今でも日本のトップクラスではないか。排出するCO2を森に還元することなどもやっていた。
神近さんは、それなりのあくの強さを感じないこともなかったが、帰り際にさりげなくプレゼントをしてくれた。高価なものではなく、売店で売っているようなものを、但し、神近さん自ら相手の履歴、好みを事前に推測して選んでいたそうだ。やはり、人心収攬術は一流だった。
その後、さまざまな経緯を経て現在はHISの経営のもと、次々と娯楽施設を導入し、大規模アミューズメントパーク化しているのは、ご案内の通り。
神近さんは潔く一切のコメントを発しなかったようだ。神近さん、千年王国の夢を、こころいくまでみてください。
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