インタビュー

【四條畷市長 東修平 #2】「働き方改革」は残業を減らすことではない

東修平 2

肝は数値目標を定めないこと

加藤:働き方改革を進めるために具体的にはどう動かれたのでしょうか。

東市長:まず、約1700万円の予算を取りました。ソフト事業費で、システム改修費などは入れない額です。四條畷市の一般会計予算は約200億円ですので、これは通常では考えづらい額なんです。本市規模において、業務支援費は普通、300万円くらい。だから、議会からは「額が大きいのではないか」とのご指摘をいただきました。

 初めての大型補正予算だったので大変でしたが、「これが将来跳ね返って来るので信じてください」と話をして、認めていただきました。しかし当然ながら、議会からはその成果をどうやって測るのかを聞かれました。例えばよくあるのは、「残業をこれだけ減らす」という目標ですね。ただ、ここが一番の肝でしたが、数値目標は決めないと言い続けました。

 というのも、「残業をこれだけ減らす」と言ってしまうと、それがゴールになるんですよ。そうすると、家に持ち帰って仕事をしたり、本質からズレていく。目標は市民に向き合える組織を作ることであって、残業時間が減るというのはその過程で生まれる結果なんです。

市民にも市の働き方改革を理解してもらう

東市長:その後、ワークライフバランス社の小室淑恵さんを四條畷市に招き、働き方改革がなぜ必要かと言う講演会を、市で一番大きなホールで開催しました。マインドセットから始めないと失敗すると思ったからです。

 その講演会に、市役所の幹部をほぼ全員集めましたが、それだけではなく、市議会議員や市内事業者の社長さん、自治会役員、民生委員、教職員、保育士の方などにも来てもらいました。市のキーパーソンの方々に講演を聞いていただいてから、働き方改革に取り組み始めたので、市役所が働き方改革をやる目的が明確に伝わり、理解が得られやすくなったと思います。

改革の風土を醸成

東市長:その後、役所の課を「窓口業務の多い課」「現場によく出ていく課」「基本的に庁内勤務の課」「団体との調整が多い課」という4つのタイプに分類しました。そして、働き方改革にチャレンジするモデル課を公募して、各タイプから1つずつ選びました。いきなり全てを変えようとすると抵抗が大きく、とん挫する危険があったので、まずは各タイプでの事例を作りたかったんです。

 また、別の取り組みとして、約40人いる市役所の課長・課長代理級といった管理職のうち、半分の約20人を公募で集め、働き方改革のリーダー研修を行い、半年間かけて働き方改革がどういうものか腹落ちしてもらいました。研修では働き方改革の重要性や考え方を学べますが、具体的な手段を教えてくれるわけじゃないんですよね。だから、それはあくまで風土作りです。

税務課の残業時間が4割減

加藤:具体的にはどのような結果が生まれましたか?

東市長:例えば、税務課では残業時間が4割減りました。ここで大事なことは、残業の目標は掲げていないにもかかわらず、それが起きたことです。実際、税務課長は始めの頃、「働き方改革? 自分には関係ないわ」という感じでした。

 でも、だんだん腹落ちして、業務の可視化を始めたり、窓口対応をする必要がない集中タイムという制度を作ったりと、効率を高めていきました。もちろん、新しい取り組みをすると、トラブルはたくさん発生するんですよ。税務課長も、部下から「見える化するための時間が逆に労働時間の上昇や!」、とかもたくさん言われたようです(笑)。

加藤:ありがちですね(笑)。

東市長:しかし、そうした声に対し、根気よくコミュニケーションを取りながら改善していった結果、残業を集計したら4割減っていた。去年行なった取り組みで、最初は積極的ではなかった職員が、むしろ推進派になるという事例作りができたんです。

うまくいかなかった部署でも次の改善につながる

加藤:うまくいかなかった部署はありましたか?

東市長:「団体との調整が多い課」のモデル課が一番うまくいきませんでした。そこは地域団体との付き合いにおける属人化の度合いが強く、課内で情報共有を行い、複数の職員が対応できるようにしても、「やっぱり、◯◯さんじゃないと」という団体の声がどうしてもあります。それがわかったので、僕を本部長とした部長級職員で構成される行財政改革推進本部という組織体の中で、「団体事務における指針」を作ることを、市として決めました。

 もし、ある1つの課だけ団体への対応を変えてしまうと、別の課での対応が違う場合に問題となってしまうので、全庁的に方針を決めるようにしました。全庁で決めたら、職員も「市のルールで決まりました」と、説明しやすくなりますよね。地味ですが、うまくいかなかったものでも、原因を突き止め一つひとつ変えていく感じです。

市民と職員の手間が削減

加藤:他にも具体的な事例はありますか?

東市長:全国初の取り組みとして、LINEを使って市民に道路の破損情報を通報してもらえるようにしましたが、最近、担当の建設課長と話していると、「これも働き方改革につながっています」と言うんです。

 どういうことかと言うと、いままで道路に問題が起きると、市民から電話がかかってきて仕事を止めざるを得なかった。また、「いつ対応するのか」「対応は終わったのか」といった電話が度々かかってくるという状況でした。でもいまは、LINE経由の問い合わせについては、データベース化され、自分たちのタイミングで課内会議を行い、対応方法を決めることができ、対応後の状況は月に1度ホームページにアップしているので、市民の誰でも確認できるようになりました。

 そうすると、市民も簡単に通報できるし、窓口に来る人や電話をかけてくる人が減って、職員も業務に集中できる。地味ですが、こういうことを広げていきたいです。

働き方改革は小手先じゃない

加藤:残業については全く目標を置かないのでしょうか?

東市長:そうなんです。「残業を」とか、「残業が」となった時点で僕は違うと思っているんですよ。本質はいかに市民にとって価値ある業務に集中し、市民に向き合える時間を作るか。

 だって、20代で多少残業してでも経験を積みたいという人もいるわけじゃないですか。僕はそこを否定したらあかんと思っていて、それはそれでやったらいい。ただ、それを全員に当てはめるのは良くない。

 働き方改革は小手先じゃないんです。このメッセージを本質から外れずに職員へ言い続けるのが僕の仕事です。

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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