インタビュー

「20代で市長になるのは不可能」を変えたい - 東修平 四條畷市長 #8

東修平8

首長には大きな権力がある

加藤:若くて地盤もない人が首長選挙に出ようとしたときに、何をアドバイスします?

東市長:まずは、なぜ出たいかが一番重要ですよね。選挙プランナーの松田馨さんともよく話をしますが、市長になりたいって人は意外といます。ただ、理由を聞くと「なんか市を良くしたい」「活性化が…」みたいな漠然としたものしか出てこない。

 でも、それは無責任です。首長は、誤解を恐れず申し上げると、権力を預かっているんです。その権限に伴う重圧とか、そういう側面をどれくらい理解しているのかも大切だと思います。よく、「当選した瞬間、嬉しかったでしょ?」って聞かれますけど、全然そんなことはありません。

 だってね、自分が市長の時に大地震が起きるかもしれないんです。市長に就任したその瞬間から、災害対応に関する全指揮の最終決定権を持つのは自分です。もしかしたら、適切ではない決定を下してしまうことで、死亡者を出してしまうかもしれない。

 去年の台風21号の時に、災害対策本部を立ち上げ、土砂災害警戒区域に住む方々に、夜中ではあるけれども避難指示を出すかどうかという場面でも、各部長がすべての情報を出し終わったあとは、全員が僕の方をみて「あとは市長が判断してください」です。その日は対応を翌朝まで行い、一晩で体重が3キロぐらい落ちました。

加藤:普通、初めて選挙に出る時はそこまで考えられない気がします。

東市長:大雨が降ると、四條畷は山があるので土砂崩れが起こる可能性があるんですよ。

 僕が市役所職員を心から尊敬するのは、災害対応時ですね。ビシっとギアが入ってすごいわけですよ。特に先の台風21号のときは、まさに総選挙の投票日でもあり、職員数の多くない四條畷市では、人員のやりくりに本当に苦労しました。そうしたなか、誰一人不満の声をあげず、災害による被害者も、選挙手続きにおけるミスも出さず、すべて滞りなく終える。これには民間から来た副市長も感動していました。

若いから選挙が有利なんてことは何一つない

加藤:「選挙に出たい」と言う若者に、出馬することは勧められますか?

東市長:はい、勧めます。

 僕の価値観の中で、昔から大切にしているものの一つが多様性です。多様性があることこそ強みだと思っているんですけど、首長の層はあまりにも固まっていますよね。

 僕自身もそうですけど、国家公務員経験者とか、市議会議員、県議会議員を経験した60~70歳くらいの人、みたいな。知事とかもだいたいそうじゃないですか。それでは自治体に多様性が生まれません。いろんな人がいることで強くなれる。

 若い人も少ない。ただ、若いから選挙が有利なんてことは何一つないですよ。むしろ本当に覚悟してくださいって感じです。不利な点ばかりです。

選挙を戦うには熱さが一番大事

加藤:どういう人に選挙に出て欲しいですか?

東市長:選挙を戦って思うのは、自分のために会社を休んでほしいとか、極寒のなかでもビラ配ってほしいとかのお願いをするのって、非常に苦しい行為なんですよね。誰しも忙がしいなか、そんなこと誰もやってくれないし、普通はお金を払ってやってもらうようなことじゃないですか。

 でも、「まちを変えるにはそれぐらいやらなあかん」っていう想いがなきゃ、選挙なんかできないですよ。たぶん誰も着いて来てくれないと思うんです。だから、選挙を戦うには“熱さ”が一番大事ですね。後はいくらでも補えると思います。

「20代で市長になるのは不可能」を変えたい

加藤:熱意があれば周りが助けてくれる。

東市長:そう思います。僕自身も、真剣に考え抜いている人がいれば、どうやってでも助けたいです。でも、もし分析力とかだけで市長になりたいと言っているのであれば、まず無理じゃないでしょうか。応援してもらえないです。

 少子高齢化が進むなか、これから行政は縮小していくんですよ。住民に我慢してもらうことが、たくさんあるんですよね。そこで、冷静な意見だけ言っていてもしょうがない。

 最近、イベントなどで登壇した時や、フェイスブックのメッセージなどで「市長になりたい」と話かけられる機会がよくあるんですよ。

「民間で働いていたけど、東市長の記事を見て『市長』もありかと思いました」みたいな(笑)。「なんで?」って聞いても、なかなか響く答えが返ってこないのが寂しい。だから、そういうことをしっかり答えられるような人に選挙に出て欲しいです。そして、20代で市長になるなんて不可能というイメージが、少しでも変わればいいなって思っています。

編集後記

 選挙についてお聞きしたのは、志の高い若者を勇気づけ、選挙にチャレンジする機会を増やしたかったからである。しかし、東市長の話を伺うと、他の人が簡単に真似のできるものではない、卓越した能力と努力がそこにあった。

 選挙報道では結果はもちろんのこと、演説や意見交換会のような露出している場面が取り上げられることは多いが、今回の東市長のお話のような戦術レベルの情報は非常に少ない。これは、東市長が仰っていた「選挙の話をすると嫌われる」という政治家の都合と、実務論に対する興味が薄く、ショーとして報道する傾向があるメディア、両者の都合によるものかもしれない。
 ただ、地方議員の不足が叫ばれる時代に質の高い政治家を多く輩出するには、そういった日の当たらない情報が伝播される必要があるように感じている。

 幸いなことに、革新的な首長が全国で生まれるようになってきたが、彼らも厳しい戦いを独自の戦い方で乗り越え今に至っているのだろう。だとすると、首長は選挙に挑戦していること自体がもっと評価されても良いのかもしれない。それは、勝者の陰で苦杯をなめた他の候補者も同様である。

 最近、首長の不祥事が立て続けに報道され、正直、がっかりすることもある。ただ、人々は時に回り道をしながらも、長期的には螺旋を描くようにより良い社会を創り出している。全国の自治体が担う責任は重いが、当然、組織のトップである首長の果たすべき役割は大きい。いつか選挙に出たいと考える若者、志の高き者がいるとすれば、「選挙は政治哲学を市民に問うもの」という東市長の考えは、強く心に焼き付けられるべきだろう。

※本インタビューは全8話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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