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【北九州市 井上純子 #2】過熱する報道と抱えた不安

NHKの全国放送を皮切りに取材が絶えなくなった

加藤:バナナ姫は100回以上、メディア露出につながっていると聞きました。メディアの注目度は最初から高かったのでしょうか。

井上氏:最初に市の記者クラブに情報提供しましたが、お披露目のときからマスコミの注目度は高かったと思います。NHKの地元の放送局に取り上げてもらった際、よくあるのは北九州エリアだけの放送で終わるんですが、なぜかバナナ姫はその日の夜の全国ニュースに出たんです。

 以降、他の民放や新聞が追うように取材してくれました。中には「上から行けと言われて来ました」という方も何人かいました(笑)。後日聞いたのは、ネットニュースで記事のアクセスが思った以上にあったらしいんです。

 そこで、常に何かをする時は先に話をくれと、いろんなところから声をかけられるようになりました。他とは違う画を撮りたいから、自分たちだけに先に情報くださいとか。

加藤:メディアが情報の取り合いをするんですね。

井上氏:そうなんです。マスコミさんの熱のほうが明らかに高くなっていて、次に何しようかみたいな感じで言ってくれるんです。だから、北九州市の観光PR動画は他の自治体と大きく変わっているわけではないんですが、バナナ姫が出ていることで話題にしてもらいました。

出張先でもメディアへ売り込む

加藤:1年8か月の活動の中で、取材のピークはいつ頃でしたか?

井上氏:出始めの2、3か月が一番多かったです。大体、福岡の民放全社、新聞、それ以外にも地元のマスコミから取材を受けていました。

 さらに観光課の業務で、他県でイベント・キャンペーンを行う際にも「北九州市のPRに来ました」とメディア周りをしました。ローカル紙の一部にキャンペーンレディとか、ゆるキャラが載っていることがよくあるんですけど、大阪のイベントでは「私はこういう風に市の取り組みでやっています。挨拶に行かせてください」と言って、朝日新聞に訪問したりしました。

 そういう時、普通、自治体はキャンペーンレディを連れていったりするんですが、公務員が自分でコスプレしているとなると、記者さんも最初は「え?セルフ?」みたいになります。

 ただ、「ちょっと考えますので来てください」と言ってもらえて、いざ私がコスプレして行くと記者さんも戸惑う。その記者さんの驚きが記事に反映されてボリュームも増え、その時も大きくカラーで出させてもらいました。

加藤:2、3か月後も安定して取材を受け続けられたわけですね。

井上氏:そうですね。メディアに取り上げられると、また他のメディアが来る。そこからイベントの依頼も付随して増えて、それがまたメディアに出る。その連鎖でした。ただ、イベントに関しては、お断りする物も多かったです。所属部署の役割から、観光PRに結びつかないものはお受けすることができませんでした。

「傷つくから見ない方がいいよ」

加藤:記事の中には否定的なものもありましたか?

井上氏:「公務員が仕事中にコスプレしていいの?」みたいに、尖ったタイトルをつけられることはありました。

加藤:煽っていますね(笑)。

井上氏:そういった記事がアクセス数も伸びて、その後はまとめ記事がいっぱいできていく。『NAVERまとめ』にも記事が出ていました。まとめ記事がいっぱい増えて、2ちゃんねるのスレッドなどにも出て来ましたが、ある程度はエゴサーチをして確認していました。

加藤:2ちゃんねるの内容を見るのは少し怖いですね(笑)。

井上氏:見た目に特化したことを言われますし、仕事で活動してもここまで言われるんだな、と。上司には「傷つくから見ない方がいいよ」と言われましが、知り合いから「2ちゃんねるで見たよ」って声をかけられるんです(笑)。

 もう、気にしないのが無理だから、ちょっと見たりして。最初の数か月はずっとヒヤヒヤしながら、そして、落ち込みながらやっていました。市民や市の職員から遊んでいると言われるのも怖かったですし、熱烈なお電話や手紙もありました。

加藤:結婚して下さいとかですか?

井上氏:「いつ婚姻届けを出しに行こうか?」みたいな。

加藤:なるほど(笑)。

注目が集まることへの不安

井上氏:だから、色んな恐怖がある中で、誰かが梯子を外したらどうしようと常に不安でした。私は末端の職員なんです。ヒラの職員がここまで注目を受けて、目立ってしまっていいのかなという不安がいつもありました。役所にメディアが出入りすることも多かったので、そういうことでも迷惑をかけたと思います。

加藤:他の自治体でも取材を受ける人が文句を言われると良く聞きます。でも、それが仕事で地域のPRにつながるから、むしろ市としては喜ぶべきことですよね。

井上氏:庁内の目がそうなったことには、さまざまな経緯もあると思うんですよね。たとえば、活動を開始して半年ほど経った時に、私は北九州市役所の職員表彰を受けました。その時、課のライン全体で受賞という話もあったようですが、最終的に人事や市の幹部の方が私個人の活動として好意的に評価していただいたため、私一人の受賞になりました。そういうことなどもあって、私を快く思わない人がいることも理解できる部分もありました。

加藤:たしかに禍根を残しそうな経緯ではありますが、井上さんが気にすることではないような気はします。

いつも孤独だった

加藤:職員彰式では庁内の反応はどうだったのでしょうか。

井上氏:バナナ姫の活動中はいつも孤独だったんです。表彰式もずっとずっと辛くて、会場のフロアで他の部署の受賞者はみんなで集まって写真撮ったりしている。

 でも私の場合は職員1人の受賞でした。しかも、当日はバナナ姫の衣装で来てもらうように言われていたので、1人バナナ姫の姿で会場に行き、受賞するギリギリのタイミングでまっ黄色の衣装で登場して、賞状をもらって逃げるように帰るという感じでした。

 そんな中でも、イベントに出ているときはテンションをあげて、市民の方や子どもが喜んでもらうようにする。喜んでもらえると嬉しいので、私のモチベーションがあがる。好意的なお手紙も多く、それで本当に励まされていました。

 どうにか自分の気持ちを維持しながらも、「このままいったら私はどうなるのかな」「どこかで終わらないといけないんだろうな」と、少しずつ考えるようになりました。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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