インタビュー

【北九州市 井上純子 #1】バナナ姫ルナ 無理を言われたら乗り越えたくなる

井上純子1

井上純子 経歴
北九州市役所市民文化スポーツ局文化企画課主任。過去に所属した観光課で『バナナ姫ルナ』のコスプレをして活動。NHKの全国放送などをはじめ100以上のメディアに掲載され、北九州市の観光振興に貢献。北九州市の職員功績表彰、『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員2018』を受賞。

-自治体職員で『バナナ姫ルナ』を知らない人は少ないのではないだろうか。自治体職員が業務でコスプレをするという発想は、今までになかったものだ。派手に見えるこの活動だが、どのような経緯で『バナナ姫ルナ』としての活動が始まったのか。また、活動の裏でどのような困難があったのか、さらに、今後、なにを目指していくのかを井上純子氏に伺った。

企画会議でコスプレすることが決まる

加藤(インタビューアー):バナナ姫になられた経緯を教えていただきますか。

井上氏: 2016年の7月から1年8か月、バナナ姫として観光業務を行いました。私はバナナ姫を始める前から観光課に配属されていまして、いかに北九州市に観光で来てもらえるかを目的として、観光情報の発信などを行っていました。

 しかし、北九州市は有名な観光地とは違い知名度がありません。、「北九州市はどこにあるんですか?」と聞かれる方もいます。

 他県でイベントを開催し、ハッピなんかを着てPRをすることもありましたが、それだと、他の自治体と同じで振り向いてもらえない。だったら、もっと目立たないといけないと思いました。

加藤:根本的に課題意識があったのですね。

井上氏:課題は日々感じていながら、「次何すると?」と、上司と相談していました。そして、少人数の企画会議をしている時に「井上さんならコスプレで盛り上げられるんじゃない?」という話が出てきました。

 もともと私はコスプレイヤーではないんですけど、地元小倉のハロウィンイベントで『小倉ハロウィン』という仮装コンテストに毎年出ていて、2015年にグランプリをいただきました。それを当時の上司も知っていたんです。北九州は今サブカルチャーやポップカルチャーのコンテンツでまち起こしをしていて、その発信にもなるんじゃないか、ということでした。

 その話から、まずコスプレをすることが決まりました。バナナ姫ありきではなく、その次に「何のキャラクターをする?」と考え、当初はアニメやマンガのキャラクターが案に上がったんですけど、それを自治体が使うとなると版権などでお金がかかる。当時、観光課にはそんなに予算がなかった。そこで目をつけたのが、門司港(もじこう)という観光地のキャラクターでした。

バナナ姫ルナのコスプレが決定 リリースは個人情報満載

井上氏:門司港は昔、国際貿易港として栄えていました。今もまち起こしに使われ、伝統芸能のような形でバナナのたたき売りが行われていますが、他にもクッズだったり、お土産だったり、スイーツなども売られています。

 その門司港バナナをPRするキャラクターで、バナナ姫ルナというキャラクターが既に制作されていました。どうせなら北九州に関連するオリジナルキャラクターの方がいいということで、私の方からこのキャラクターだったらやりますと上司の方に伝えました。

 ただ、いざバナナ姫のお披露目時のプレスリリース案を見たときに、私の個人情報がすごく出ている。部署名だけでなく、名前も年齢も書かれていて(笑)、ちょっと目が点になりました。当時28歳の市職員が、名前を出して姫を名乗るってどうなのか、とすごく戸惑いました。

「名前や年齢を伏せられないですか?」とずっと交渉しましたが、上司の熱のほうがすごかったんです。コスプレと公務員という対極のものだから、尖ったリリースにしたい。そのためには、なぜ、井上さんがコスプレをするのか理由が必要だ、と。もうこれは逃げられないと思いました(笑)。

加藤:それは、課長・部長クラスの方ですか?

井上氏:いえ、40代の係長でした。

加藤:さらに上職の課長や部長によく話を通しましたね。

井上氏:すごく熱がこもっていて、話をどんどん通される。仕事としても人としても信頼があり、内容も市の観光PRという目的に沿っていました。

個人が組織の中で隠れてはいけない

加藤:その後、どのように進んだのでしょうか。

井上氏:この企画が2016年6月に生まれて、翌月の7月にはお披露目されました。実は、市長が存在を知らないままお披露目したんですが、役所の中でもどんどん広まって、市長も「職員の頭にバナナが付いていてびっくりした」と(笑)。

加藤:市長は好意的だったのですね。

井上氏:そうですね。他の職員もこうあってほしいと好意的に応援してもらえました。もちろん、同じようにバナナを頭につけてほしいわけではなく、「職員一人一人が市のセールスパーソンになってほしい」「個人が組織の中で隠れるんじゃなくて、自分がPRするんだと、前にどんどん出ていってほしい」という声をいただき、それで、より活動しやすくなりました。

 ただ、お披露目の時に上司やメディアがどういう反応になるかすごく不安でした。その頃に丁度、「女性軽視だ!」と動画で炎上している自治体もあって、バナナ姫に関してもそういう声があったらどうしようと、ずっとヒヤヒヤしていたんです。

無理なことを言われたら乗り越えたくなる

加藤:戸惑いながらも、コスプレやバナナ姫を演じることにしたのはなぜですか?

井上氏:無理なことを言われたら乗り越えたくなるタイプなんです。他の方がしたことがないことをしたい性格でもあります。ただ、やると決めたからには中途半端な衣装で出たくない。

井上純子1 insert

 発注して一部衣装を作ってもらったんですが、自分で手を入れて加工もしました。髪の毛もウィックを買って、緑から黄色にバナナがグラデーションしているように塗るんですけど、それも油性ペンのマッキーと除光液で塗っています(笑)。洗うたびに緑が取れるので、すごく手がかかりました。

 手作りでクリーニングとかに出すわけじゃないので、家で私がずっと手洗いしてアイロンして、ボンドでくっつけたいものを、ボンドでつけ直すなんてこともずっとしていました(笑)。派手だと思われがちですが、イベントなどに出ている時以外は普通の公務員としての事務仕事をして、地味な部分も多かったと思います。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

他のインタビュー記事を読む

ネイティブアド



頁トップへ