情報は欲しいところに集まる
加藤:中田さんが市長のときに、ネーミングライツの取り組みなど、新しいことをされました。アイデアはどこから得ていたのでしょうか?
中田氏:情報というのは欲しいところに集まってきます。財政健全化という方向性が周りに伝われば「これができますよ」「あれができますよ」と情報は集まってくる。逆も真なりで、どんどん借金して財政を膨らまそうという方針が見えれば、「こんなことにお金使いましょう」と、次から次へと情報が集まってくるわけです。
当時、僕が市長になってすぐサッカーのワールドカップがあり、サッカー関係者とよく会う機会があったんです。そこで、川淵三郎さん(当時の日本サッカー協会会長)が、「中田さん、横浜国際総合競技場でネーミングライツをやればいいんだよ」と言われて背中を押してくれました。
でも、たとえばトヨタカップを日産スタジアムでやるのは無理があると思ったから、「競技上の名前に企業名が入ったら使用率に影響が出ませんか?」と聞くと、「そういうときはマスキングって言って、一時的に『横浜国際総合競技場』に名前を戻したり、スタジアムのロゴを消す例もある」と教えてくれました。そういう話をいくつも聞いて、できることは改革していくようにしました。
民間企業の力を使わない手はない
中田氏:当時、役所だけの力ではなく、「民の力が存分に発揮される社会」が重要だと話していましたが、行政だけでやらなければいけないことなんてそんなに多くはありません。
転入の際に区役所に行って住民票転入届を出しますよね? そのときに暮らしの便利帳みたいな、区役所の電話番号とか各種手続きが書いてある冊子をどの役所も渡していたんですよね。
それを役所で作るにはお金がかかるから、民間企業が冊子に広告を入れて作ればいいと思って入札にかけたら、実際に手を挙げる事業者が出てきました。広告が出ているから批判も受けたけど、「広告のページだと書いて分かるようにしておけばいい」と進め、全国で瞬く間に広がりました。
民間事業者が自分たち自身のビジネスになる場合、どんどん勝手に広げてくれます。そういう力は使わないといけないですよね。他にも横浜市として、株式会社の保育園参入を認めたら、これも瞬く間に全国に広がっていき多くの視察がありました。
視察は有料にするべき
加藤:中田市長時代に横浜市役所で視察受け入れを有料としたところ、他自治体から批判が出たと聞いたことがあります。いまでも、これはあるべきかたちだと思っていますか?
中田氏:はい。日本の自治体には、いまでもそうして欲しいと思います。当時、ゴミの削減や、市役所のデッドスペースを使って広告にする事業をおこなって、視察が相次ぎました。しかし、横浜市役所は横浜市民のために働く組織です。他の市からやってきた人のために、数時間を使うというのは本来の税の使い方としては正しくありません。
さらに本音を言えば、当時、地方議員の視察は真剣に自らのまちに活かそうとしているのかも怪しいと感じました。市民のために使うべき時間を割き、市民のために作ったパンフレットを彼らに配るとしたら、それも市の歳出です。やはり、有料にすべきだと思っています。
日本ではあまり知られていないですが、ヨーロッパで視察をするにはまず有料です。僕は日本もそうすべきだと思っています。良いモデルを作ることによって、全国や世界から視察が来ることがビジネスになるくらいでも良い。少なくとも職員の人件費やその他のコストを賄うくらいにはして欲しいですよね。
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 就任後に6兆円の借金が判明
第2話 徹底して行財政改革の方針を伝える
第3話 視察は有料にするべき
第4話 首長がスキャンダルを回避する方法はない
第5話 『全国一律』を排するために道州制が必要
第6話 変化に対して能動的な人を増やしたい