インタビュー

【前横浜市長 中田宏氏 #2】徹底して行財政改革の方針を伝える

中田宏2

行革プランの作成プロセスによって方針が浸透

加藤:幹部である局長級の方には、市長の行財政改革の方向性をすぐに理解してもらえたのでしょうか?

中田氏:2年目3年目くらいまでは理解できなかったと思います。先ほどの行革プランを作っていくプロセスの中でようやく実感として伝わったのだと思います。

 恐らく、当時の局長や部長とかは部局内の軋轢を調整するのが大変で、部下から「市長に『出来ない』と言って下さいよ」と言われることもあったと思います。だけど、各部署が水道なら水道、バスならバス、地下鉄なら地下鉄の具体的なプランを作らなきゃいけない。

 そのタイミングで、私もそれぞれの局長や部長たちと会う機会が増えました。その時に四の五の言って、なかなか動かない局長だったりとか、こっちの言わんとしていることは分かっているはずなのに、何とかかわそうとして小出しにしか話を持ってこない人もいた。ただ、毎年着実に浸透して、最終的にはおおむね理解してくれていました。最初が一番大変です。

市長よりも職員のほうが長く組織に関わる

加藤:先ほどの局長や部長の幹部層から、さらにその先の係長のレイヤーまで理解が進むには、また時間がかかるのでしょうか?

中田氏:そうとも言えなくて、係長クラスは30代後半から40代くらいで若く、メッセージが一番伝わりやすい人でもありました。

 市長になって最初から言い続けたのは、「横浜市役所というこの船に乗るのは僕らより皆さんのほうが長い。やがて、後悔する結果を生んでは皆さんにとってマイナスだ」と。
 加えて「将来的に、さまざまな点を見直さなければいけないという自治体が、日本には溢れかえってくる。そのときに、仕方がないからやるのではなくて、今のうちから先回りをした方が、後々、横浜市役所で働くことが心地良い職場になる。そのことを考えて長い目でやってほしい」ということも言いました。

徹底してメッセージを伝えなければいけない

中田氏:だから、幹部層にはフェイストゥフェイスで業務の個別事案を進めるなかで伝えていくのと同時に、それ以外の方法で役所全体にメッセージを伝えていかなければいけない。

 そのために、私から直接全職員にメールを送ったりもしました。局長から平の人まで全員、3万人に同じ文章で送る。それで、返事をくれれば直接僕が見る。「他の人は見ないから、どんどん送ってくれ」と言いました。

 他にも年に数回、本庁の市役所だけじゃなくて区役所などにも庁内放送でメッセージを送ったりもしましたし、一度、横浜文化体育館に職員を集めて、オフサイトミーティングみたいな形で直接話をするということもやりました。
 当時は繰り返し言ったつもりですけど、まだまだ甘かったですね。もっともっと言わないと駄目だったといまは思っています。

職員が市長宛てにメッセージを送ることができた

加藤:職員から直接メールを受けつけました。告発案件などもあったかと思いますが、何に気をつけてどう対応しましたか?

中田氏:まず、ダイレクトメッセージへの返信は若い人からのものが多かったです。係長クラスなど、仕事の責任を持ちたいけれども組織の中で動けず、問題意識を抱えているような人ですね。

 私の基本的スタンスとして、不正だとか人事などの問題については、送られてきた内容だけでは鵜呑みにできないところがあります。よって、匿名のものは信用せず、実名の場合でも、人を貶める内容は冷静に見ていました。
 まずは「この部署でこういうことが起きているかもしれない」と、頭の中に入れておくことが重要です。その後に、他からもそういう話があると、調査の指示を出すなど、個別にその問題が解消するように動きました。ただし、私が細かく指示するというのは相当大きな課題があると疑いを持った場合のみです。
 また、いずれも誰から情報がきたかは漏らしませんでした。漏らすと、次からそういった話が出て来なくなるからです。

メッセージを受けて職員を表彰することができた

加藤:お話できる範囲で、ポジティブなことにつながった事例はありましたか?

中田氏:ある日、「同じ部署の職員がYシャツに血をつけて出勤してきた」というメッセージがありました。線路に落ちた人をホームに引っ張り上げて血がついて、駅員や警察などの調査に協力して市役所の始業に遅刻したそうなんです。ところが市役所にやってきたら、人命救助が全然評価されていなくて、「それはおかしいのではないか」とメッセージをもらいました。
 これは私が直接話を聞いて、結果的には後日、表彰することになりましたが、そもそも、公務員は良いことをしてもあまり表彰されないですよね。横浜市役所の中でも表彰制度はありましたが、全く使われていなかったのです。同僚のメッセージがあったおかげで、その人を表彰することができました。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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