インタビュー

【前横浜市長 中田宏氏 #4】首長がスキャンダルを回避する方法はない

中田宏4

スキャンダルを回避する方法はない

加藤:裁判は既に勝訴されていると思いますが、スキャンダルを捏造されるようなこともありました。首長が普段からそういうことに巻き込まれないような方法は現実的にあるのでしょうか?

中田氏:一言で言えば『ノー』ですね。悪意を持った人はそういうニュースを捏造できますから。横浜市のような大きなお金が動く自治体だと、メディアを利用した捏造も出てきます。

 金銭的な賄賂、汚職だとかも噂を流されたり、悪意ある印象操作をされることもありました。「中田が逮捕される」なんていう説は何度も流されたし、そういう意味では不愉快にも思ったときもありましたし、生きた心地がしないこともありました。

 最近、ある地方でも財政を立て直した市長が落選の憂き目に遭ったんです。それも怪文書が郵送で送られてきたり、山ほど出て来るような始末だったんです。

改革は納得されるものではない

加藤:改革をすればするほど、敵が増えていったのでしょうか?

中田氏:難しいのは、利益をむさぼっている悪徳な人たちから“あぶく銭”を奪うというような改革であったとしても、毎年、真面目に文房具を納品していた事業者へ発注するのを節約した場合でも、同じように利益を減らすことになるんです。
 人は自分の利益が減ることに敏感なんです。それによって生活設計が狂ったり、事業計画が狂ったりするわけだから、コストを削減することに正当性があったところで、好かれる話ではありません。

 そういう意味では改革をやっていく中で説明を尽くし、理解をしてもらったとしても、納得まではしてくれないですよね、それが現実です。

脅迫された場合はオープンにするべき

加藤:職員の方から「死ね」というようなメールが何通も届いたり、脅迫めいた手紙を受けることもあったそうですが、今もどこかでそういったことに遭っている首長がいるのかもしれません。そういう方に向けて何かアドバイス出来ることはありますか?

中田氏:その事実をオープンにした方がいいですね。職員から「死ね!」「お前ふざけんなこの野郎」「分かってねえくせに、馬鹿!」とか本当に来るんですよ。しかも、なりすましじゃなくて、実在する職員番号で、実在する名前で送ってくるんです。
 なぜそんなことが出来るかというと、絶対クビにならないってことを知っているからなんですよね。もちろん、組織全体から見れば一部の人達ですよ。

加藤:ほんの一部の人だと思いますが、あまり想像できないというのが正直なところです。

中田氏:民間だって社長に「ばか死ね、お前」と言っても、即刻クビというわけじゃないかもしれません。だけど、社内における評価や立場を悪くしますよね。

 橋下徹さんが大阪府知事時代に改革に乗り出したときにもそういうことがあって、「そんなのは民間であり得ますか?」と世間に公表したんです。それで私も呼応して、「私のところにも来ていたよ」と言ったけれども、それまで僕はそういうことを表で言ったことはなかった。実際、僕を脅迫して逮捕された職員もいます。「殺してやる」と、脅迫電話をしてきたのです。
 ただ、事実をオープンにする目的は、送って来た人を血祭りに上げるためではなくて、「人の道に反する」ことを理解してもらうのはもちろん、「他の職員や職場の士気にマイナスである」ということを理解してもらうためだと思っています。

メディアにはもっと財政に注目してほしい

加藤:メディアにはどうあってほしいですか。

中田氏:ある企業がブラックなのか、そうじゃないのか、社員が人生を良いものと実感できるような会社なのか、そうじゃないのかを評価するのは難しい。それと同じようにメディアが「自治体の何が良い施策で、何が不要な施策なのか」ということを判断するのは確かに難しいですよね。

 ただ、財政をどれだけ健全化して、次の世代にバトンタッチできるようにするかというこの1点は、問われるべきだと思います。将来の住民の負担などについて、もっとメディアはちゃんと評価しないと駄目だと思います。

 財政は本当に重要です。後任の市長にも「財政だけはしっかりと守ってほしい。それは将来に対しての責任だ」とだけは伝えました。それは、厳しい財政状況の中で横浜市民にとって求められていることだからです。選挙権を持っていない次の世代もいる。その人たちの分まで我々は勝手にツケを先送りするのはおかしな話で、ここには大義があります。

政務活動費の目的と金額が明示されることが必要

加藤:メディアからは政務活動費についても話題にあがります。こちらはどうお考えでしょうか。

中田氏:自治体によって金額はまちまちですが、政務活動費は政治活動の名目がつけば基本的に何にでも使えます。そもそも政治はお年寄りから子供まで、社会問題全てを扱います。しかも、政治は公私の境界線が曖昧なために、政務活動費の私的な流用が増えてしまう。

 たとえば、子供たちが非常に好きな漫画があって、その結果、子供の行動様式が変わっているなら、その漫画を買って読んで政策に活かすことはありうる話です。政務調査費があらゆる領域に使うこと自体は否定できません。
 では、政務活動費の私的流用をどう食い止めるかというと、国会議員も地方議員も政治活動に使った記録を残し、説明責任を果たすようにするべきだと思います。漫画を買ったのならば、その目的と金額が明示されることが必要です。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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