区の再編を目指す
加藤:行財政改革を進めていく中で、思っていたよりうまくいかなかったものはありましたか?
鈴木市長:そうですね…。大体いまのところは予定通り進んでいます。ただ、これから手を付けようとしていることが大変なんです。
加藤:それは何でしょうか。
鈴木市長:区の再編をやろうと思っているんですよね。これは2018年の大仕事です。それが最大の課題で、不退転の決意でやらなきゃいけません(笑)。
浜松市内7区を 2~3区にしたい
加藤:区を減らして、庁舎や人員も減らすのでしょうか?
鈴木市長:そうですね。これは将来的には非常に効いてくるんですよね。どうしても固定化された区があれば、区役所も作らなきゃいけない。それに合わせて人も貼り付けなきゃいけない。そこで、合区して区役所の数は減らしますが、一方で公民館のような市民に近い場所で、行政サービスを充実させていこうと考えています。
加藤:ご自身の立場における政治的なリスクもあると思います。どういう流れでそれをやろうと思ったのでしょうか?
鈴木市長:これもやはり『行財政改革推進審議会』の提言なんです。方向性が出ている最後の大物ですよね、全国初ですから、実現できればインパクトがあります。
加藤:具体的にはどのように再編するのでしょうか。
鈴木市長:いま浜松には7区ありますが、国の定めで政令市は最低2区は必要なんです。私は2区か3区にしたいと考えています。2017年にその素案を提案して、議会の特別委員会で議論をしてもらっているところなんです。
賛成と反対に分かれる議会
加藤:市議会からの反応はどうでしょうか?
鈴木市長:反対をするところ、賛成をするところに分かれていますね。
加藤:民間企業のトップを中心とした『行財政改革推進審議会』の答申をもとに提言が上がってきていますよね。一方で、その民間企業が議員を支援している部分もあると思います。そういう背景があると、議員が反対しづらい面もあるんでしょうか?
鈴木市長:それはそうです。ただ、合区にした方が選挙がやりやすいという議員さんもいますし、大きなエリアで戦いたいという人もいます。本音はさまざまあると思います。
いずれにせよ、否決されたときどうするのかということも含めて、私が腹をくくっていかなきゃいけないと思っています。
審議会をやるなら魂を込めなければならない
加藤:いままで鈴木市長が浜松市で進めてきたことの中で、他の自治体に真似してほしいものはどれでしょうか。
鈴木市長:全部です。ただ、表面だけ真似て『行財政改革推進審議会』のような会議体を作るけれども、“魂”が入っていないケースも多いんですね。やるなら腹の据わった人たちを呼んで、徹底的に詰めたうえで公開審議に臨むようなことをやらなければいけない。
年に2、3回学者や先生が集まってきて、あーだ、こーだ、勝手なことを言って、役所の人間がそれをまとめて、具体性や実現性のない提言を出すのでは駄目ですよね。かなり細かいレベルまで突っ込んで、「ここはどうなってんだ」「こうしなきゃ駄目じゃないか」と具体的に提言してもらえなければ意味がありません。
全国すべての市町村が審議会を作る必要はない
加藤:そうなると、浜松市のように民間企業の力を借りるというのが、非常に有効な手段ですよね。
鈴木市長:そうですね。民間企業の人は日常的にやっているわけですから、そういう感覚で行政を見てもらえばいいんでね。
加藤:立地の問題で、スズキのような大企業の人材が使えない自治体もあります。その場合、市長であればどのような体制を作られますか?
鈴木市長:全国すべての市町村が審議会を作る必要はなくて、既に浜松や他のまちがやった取り組みを真似してもらえばいいんです。そんなに難しいことじゃありません。毎年の借金返済以上に借金を増やさないだけでいいんです。そうすれば借金は減っていくわけですから。
50万~100万人規模の自治体に再編をしていくべき
鈴木市長:ただ、小規模自治体が大変だと思うのは、改善できる幅が小さいことですね。浜松市は人口80万人ですけど、私は自分で市政運営してみて50万人くらいはほしいと思います。規模の利益というか、規模があることによっていろいろできる。浜松市は十二市町村合併をしたから、たくさん統合できるインフラがあったし、逆に林業の振興などは、合併でダイナミックにやることができるようになりました。
これは物議を醸し出す意見かも知れないですが、私の持論は全国の市町村を50万~100万人規模の自治体に再編をしていくべきだと思っています。100万人を超えると逆に大き過ぎますが、50万~100万くらいの規模に全国の自治体を集約してしまえば、県がいらなくなります。そうなって初めて、道州制にも移行できるようになると思うんですね。
よく合併すると、きめ細かな行政サービスや住民自治が破壊されると言われるけど、そんなことないですよ。浜松も合併したけどコミュニティーを潰しているわけじゃない。合併前の自治体でも、その枠の中に小さなコミュニティーがいくつもあるわけですよね。そうしたものを維持してくことと、自治体の組織を合併して効率的にすることとは全く意味が違います。
▼「地方公務員オンラインサロン」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111482
全国で300名以上が参加。自宅参加OK、月に複数回のウェブセミナーを受けられます
▼「HOLGファンクラブ」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111465
・月額500円から、地方公務員や地方自治体を支援することが可能です
※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 「財政改革」と「財政健全化」は一丁目一番地
第2話 『浜松市行財政改革推進審議会』はどう機能したか
第3話 『行財政改革推進審議会』が悪者を買ってくれた
第4話 50万~100万人規模の自治体に再編をしていくべき
第5話 自治体財政が脚光を浴びれば 健全化せざるを得なくなる