インタビュー

【浜松市長 鈴木康友氏 #3】『行財政改革推進審議会』が悪者を買ってくれた

鈴木康友4

ごまかしができない体制があった

加藤:職員の定員適正化は、何をもって適正として進めたのでしょうか?

鈴木市長:私はいま、5000人体制を目指しているんですが、何人が適正かというのは難しいですよね。ただ、定員数を減らしていくと、いままでやっていた効率の悪い余分な仕事も減るんです。だから、人がいっぱいいたときよりも、今の方が残業が少なくなったりする。

 それと、民間委託したり、臨時の職員に代替したりする場合もありますが、そういうのは人件費じゃなくて物件費になります。一見、人件費は圧縮されるけど、トータルのコストがあまり減らないこともある。すると、『行財政改革推進審議会』はそこをちゃんと指摘してくるわけですよ(笑)。

加藤:素晴らしいですね。

鈴木市長:そうなんです。だから、ごまかしができない。

加藤:行政側からもそういう指摘ができるレベルの情報開示をしていたということですよね。

鈴木市長:もちろん、もちろん。職員の人たちは真面目だから、方向を示せばそれでしっかりやってくれるんですよね。

住民を説得してインフラコストを削減

加藤:インフラの圧縮はどう着手されたのでしょうか?

鈴木市長:まずは、もう無駄な道路は作らない。さらに言うと、先手先手で“長寿命化”をしていく。今までは不具合がでてから手を打つのが行政のやり方でしたが、そうではなくて、早いうちに手を加えておくことで寿命を長持ちさせるようにしています。

 そして、やはり箱物の圧縮が大きいですよ。合併前はそれぞれの自治体が文化施設や体育館、公民館などを持っているわけだから、それを統合していく。すると、「合併したから切り捨てられる」とか、必ずそういう議論になる。でも、それは違うと粘り強く説明したり、いろいろなデータを見せたりして、説得していかなければいけない。

 たとえば、私は、旧浜松市の町に住んでいますが、8,000人もの規模なんですよね。だけど、ホールがあるのかと言ったらない。体育館があるのかと言ったらないわけです。公民館併設の小さな体育館と小中学校の体育館を夜間に利用したりするだけです。でも、自治体が独立していると人口が数千人の規模でも学校の体育館はある、立派な専用体育館はある、ホールはあるはで、そんなに必要なのかと思うんです。実際、稼働率が低い建物もたくさんありましたからね。

「そんな施設あったっけ?」

鈴木市長:あるプールを廃止するときも、「統合した先のプールに高齢者が通えない」という理由で、送迎バスを用意する話になったんですね。でも誰もそのバスを使わないんですよ。

加藤:実際にバスは用意したけれども乗る方がいなかった…。

鈴木市長:はい。私は利用されないと思いました(笑)。

加藤:乗らなかったので、バスを出すのも止めていく。

鈴木市長:そうです。止めることになりました。

加藤:それも必要なステップの一つだったのかもしれないですね。

鈴木市長:そうですね。施設を無くして一年もたつと大体、「そんな施設あったっけ?」となるんですね。

財政健全化は他でやってくれ

加藤:統合する際の説明は、財政的な観点から行いますか? たとえば、「このままだと市役所の経営は立ち行かない」と。

鈴木市長:基本的にはそうです。「箱物も2000を越え、道路は8500㎞もあり、橋は6000橋もある」と。「50年間で1兆円を越えるようなお金がかかるけど、皆さん、全部負担できますか?」とはじめに話をします。

 ただ、あまり「財政、財政」で説明すると反発も大きいから、あの手この手ですよ(笑)。「ここの地域はこんなに人口がいても施設がありません。あなたのところはまだ恵まれていますよ」と言ったりするわけです(笑)。

加藤:財政の話を住民に言っても通じないことが多いわけですよね。

鈴木市長:総論としてみんな、財政健全化には納得してくれます。でも、自分のところではなく、他でやってくれみたいな(笑)。大体、『総論賛成各論反対』なんです(笑)。

保有施設の処理

加藤:所有していた施設はどう処理されていくのでしょうか。

鈴木市長:維持費が無くなることが本質的なメリットで、なかなか売却できるものは少ないです。周辺地域の物件になると資産価値が大きくない。更地にして売れるものは売りますけど、それは大した収入にはならないですね。

 学校ですと、地元の人たちの思いもあるので、行政で活用する用途がなければ地元の皆さんに活用方法を聞く。地元の皆さんからも活用方法が出てこない場合に売却するか、民間に貸し付けます。

『行財政改革推進審議会』が悪者を買ってくれた

加藤:外郭団体の整理統合で大きな改善につながったところは、具体的にどういう組織だったのでしょうか?

鈴木市長:大きなものは土地開発公社ですね、塩漬けの物件を持っていたので、そういうものを全部一気に整理しました。いらないものは売却し、最後は市で引き受けて、土地開発公社も2013年12月に解散しました。

加藤:開発が絡むので、抵抗が強い組織の気もします。スムーズに進められましたか?

鈴木市長:抵抗はもちろんありますけど、強いという感じではなかったです。たしかに、議員の中にも「借金して金を使え」なんて人もいましたが、ここでもありがたいのは、『行財政改革推進審議会』の存在なんです。悪者を買ってくれていましたから。
 それによって、私は『行財政改革推進審議会』の答申通りにやらなきゃいけないという立場になれました(笑)。

 

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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