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地方自治体は人口減少に向き合うべき

自治体は人口減少に向き合うべき

加藤(インタビューアー):自治体の現場の課題として特に重要だと感じるものは何でしょうか?

三海氏:やはり人口減少ですね。人口動態は社会環境の最も基本となるものだと思いますが、人口増から人口減へとパラダイムシフトしました。これは社会のあらゆる面に影響が及びます。そして、その流れは基本的には変わりません。仮に出生率が大きく改善したとしても、効果が出るのは先になりますし、それ以前の実数ベースの減少幅が大きすぎるので、人口減少そのものを止めることはできないからです。

 人口減少対策は「緩和」と「適応」の両面から考える必要があります。「緩和」と「適応」は地球温暖化対策や気候変動対策で使われる言葉ですが、「緩和」は温暖化のペースを緩やかにすること、「適応」は、実際に起こる事象への対応のことを指します。例えば、氷が溶けて海面水位が上がったり、豪雨が増える、農業の適作地が変わる、こういったことにどう対処することが出来るかということですね。

 その視点が人口減少対策にも必要だと思います。「緩和」は人口減少のペースを緩やかにすること。「適応」は実際に人口が減ってしまったときに、例えばどう集落を維持していくのか、交通対策や買い物、地域の担い手などをどうしていくのかを具体的に考えるということです。これまでの人口減少対策は、少子化対策や移住政策など「緩和」を考えることが多かった。その最たるものが地方創生の総合戦略でしょう。出生率の向上と出生数の増加には限界があるので、多くは移住による社会増で人口を維持していく計画になっている。その結果、全国の計画人口を足すとものすごい数字になってしまいます。

 これでは現実に向き合っているとはいえません。人口減少は社会にとって大きなリスクです。その意味で人口減少対策をリスクマネジメントととらえれば、リスクを把握し、評価していくことが何よりも重要になります。社会保障・人口問題研究所の推計通りに人口が減ったら何がどう変わるか、財政や人的な面でどれだけ多くのものが存続出来なくなるのか、それを把握したうえで、どう「適応」していくのか、真剣に考えるべき時期にきているのではないでしょうか。それがこれからの自治体にとっての大きな課題だと思います。

加藤:私も減少を食い止めるより、減少していく社会で何が必要なのかを考える方がよほど生産的だと思います。今までの制度が、人口が増えることを前提に作られてきただけなので、人口減少社会に必要な仕組みが求められる転換期なのだと思います。

楽しいと感じる瞬間

加藤:仕事をしている中で、楽しいと思う瞬間はどういうときでしょうか?

三海氏:自治体の現場で具体的に何が起こり、何をしているか具体的に聞くことができるのは非常に楽しいですね。また、編集者として研究者の方たちに寄稿していただいたり、政治家や専門家の方などに話を聞いて、これまで思いもよらなかった新しい視点を提示してもらえたときはうれしい。後はそれを読者にどう伝えていくかが、編集者の役割になります。

 『ガバナンス』編集長の千葉も話していましたが、最近は自治体職員として活躍する人がたくさん出てきているので、そういう人たちの活動をできるだけ取り上げていきたいですね。先駆的なことをしている人は、どうしても役所の中で浮いたりしがちです。そうした人たちが『ガバナンス』出ることで認知されたり、外から評価されて、役所の中でも認められていくことにつながればいいなと思います。

加藤:『ガバナンス』は、すごい情報量が詰まっていますよね。

三海氏:「文字数が多過ぎる」と言われることもあります(笑)。ただ、千葉も言っていたように、みなさんがすべてを読むわけではないので、どこかに“刺さる”記事があればいいと考えています。そのためできるだけ選択肢を多く提示したい。また、自治体の現場で悩んでいる人のところに雑誌が届いて、記事などを参考に事業化されたり、施策が改善されていけば、それはそこに住んでいる人たちの生活が良くなったり、幸せにつながっていきます。そうなればすごく嬉しいですね。

加藤:本当にそう思います。今日はありがとうございました。

三海氏:こちらこそありがとうございました。

―『ガバナンス』という雑誌は素晴らしい志を持った方々によって生み出されているのだと感じた。実は、自治体の勉強会などに参加すると、よく三海氏にお会いさせていただくことがある。

 HOLG.jpはウェブサイトが生まれてから1年と少しだ。一方、『ガバナンス』は2001年に創刊している上に、株式会社ぎょうせいはそれ以前からも地方自治に関する情報を発信し続けて来た。なんと、株式会社ぎょうせいの創業は1893年だ。

 そのような歴史の違いがありながらも、三海氏とお会いした際にはいつも誠実に接していただき、色々な知識を教えていただくことも多い。これは編集長の千葉茂明氏も同様だった。

 お二人の話を聞くと、改めて地方自治というものは非常に面白いものだと思う。正直に言って、私は1年前まで地方行政のことは全くわかっていなかったし、今の今でも理解できていない部分は多い。

 ただ、魅力的な人たちが自治体には沢山いることははっきりと体感しているし、職員個人がより活躍していくトレンドになっていくことも間違いないと考えている。であるならば、その到来を少しでも前倒しできるような役割を、業界の端から少しでも果たせればと願うのである。(記=加藤年紀)

※本インタビューは全3話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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