インタビュー

[地方自治20年]変わったもの 変わらなかったもの

三海厚TOP2

大きな変化の中で

加藤(インタビューアー):三海さんはこの20年近くで地方自治の何が変わったと感じていますか?

三海氏:これまでお話したように分権改革によって地方自治のあり方は根本的に変わりました。また、制度以外でも自治体を取り巻く環境は大きく変わっています。その最大のものは人口減少と少子・高齢化だと思いますが、ほかにもグローバル化や気候変動、災害の多発、また最近の第4次産業革命といわれるようなIT社会の進展など、非常に時代の変化が激しくなっています。自治体組織や地方行政という点では、市町村合併やそれに伴う人員の削減と非正規化、財政の逼迫、民間委託等のアウトソーシングの進展などが挙げられると思います。また、東日本大震災は災害への向き合い方や、自治体間の連携、自治体職員の意識などさまざまな面で大きな変化をもたらしたのではないでしょうか。

課題は意識の変化

三海氏:逆にこれだけの変化の中で変わっていないものがあるとしたら、それは地方自治の本質にかかわるものか、もしくは課題として残されたものではないかと思います。

 課題の面で感じるのは、職員の人たちの「意識」ですね。もちろん多くの自治体では地方分権社会を意識し、先進的な取り組みをしている人たちが多いと思います。その一方、前例踏襲で決まった仕事だけをこなせばいいと考えている人たちも少なからず残っている。そういう人が管理職などについていると、部下のモチベーションが下がって、組織の活力が失われていきます。特に最近は人口減少や地域の衰退に直面している自治体などで、地域の将来への危機感を抱いている若手職員が少なくありません。そうした職員を育て、伸ばしていくためにも、時代の変化をきちんととらえていく意識を持つことは大切だと思います。

広がる自主研やネットワーク

三海氏:ただ逆にそうした意識を持った自治体職員の活動が大きく広がってきたのも最近の特徴ではないかと思います。『ガバナンス』では2009年から「もっと自治力を!」という自治体職員の自主研究グループやネットワークの取材記事を連載していて、すでに80回を超えています。当初はここまで続くとは思っていませんでした(笑)。

 もともと自治体学会という全国的なネットワークがありましたが、分権改革を踏まえ、政策法務や自治体職員有志の会などの活動が始まりました。これらは、どちらかといえば実務や政策などを研究・実践する専門性の高いものでしたが、その後、連載を開始したころから、もう少しハードルの低い活動が増えていきます。実務的な研究よりも、情報の共有や交流、ネットワーク化などを目的とするもので、その代表格が、こちらでも紹介されている山形市の後藤好邦さんなどが発起人の東北まちづくりオフサイトミーティング(OM)ですね。OMの先駆けともいえる滋賀県のチョウチョの会の設立は少し前ですが、神奈川のK33ネットワークや首都圏のノンパ、中野区のNASなどがこのころできてきた。また、東北OMの活動はその後、九州や四国、上州(群馬)などのOMに広がっていきました。

 面白いのは割と同世代の人たちがこれらを立ち上げていたこと。話を聞くと、採用が抑制され庁内に同年代が少ない人たちが、自治体を取り巻く環境や自らの地域、自治体職員としてのあり方などに危機意識を持って、外の自治体職員とつながっていったことなどが共通していました。こうした活動が広がり、継続しているのは、インターネットやSNSなどをうまく活用して、自主研同士、ネットワーク同士が交流し、刺激を与え合っているからだと思います。そうした中から、熊本県で誕生したSIM2030や福岡市の今村寛さんの財政出前講座の全国的な広がりなども出てきました。

 もちろん取材をしたなかには、その後活動が停滞しているところもありますが、一方で新しい取り組みも次々と生まれてきています。例えば8月号で紹介した静岡市の「シズママ」は育休中の女性職員が中心となって立ち上げたものです。子育ての悩みや仕事との両立、職場復帰への不安などを解消していくための情報共有など行っていますが、赤ちゃんを連れて登庁して、若手の男性職員に抱っこしてもらうイベントなども実施しています。こうした活動は素晴らしいですよね。勉強会などで学んだことをすぐに仕事に活かしていくのは難しい面もありますが、そうした知識やネットワークの人脈はその人の財産といえるものです。いつか活かせる時があるはずなので、ぜひもっと広げてほしいと思います。

 前佐賀県武雄市長の樋渡啓祐さんが、よくTTP(徹底的にパクる)といっていましたが、民間企業と違って自治体の先駆的な取り組みは情報共有できるものです。後発の強みを活かして、より良いものにブラッシュアップしていけば、全体として進化していきます。

 自主研だけでなく、昨年度第11回が開催された全国都市改善改革実践事例発表会なども自治体職員の意識や自治体の現場を変えていく取り組みだと思いますし、早稲田大学マニフェスト研究所の人材マネジメント部会や、今年度は募集しないようですが、東京財団の週末学校などが果たしてきた役割は大きいのではないかと思います。

※本インタビューは全3話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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