インタビュー

【四條畷市長 東修平 #5】納得はされなくても、理解はされなければならない

東修平 5

適切な権限移譲が目の前の市民を救う

加藤:自治体職員が活躍するために何が重要だと思いますか?

東市長:それぞれの部署や年齢などの違いもあるので一口には言い表せませんが、いま僕が目指しているところでいくと、権限の移譲です。

 公平・公正であることと、真に困っている市民を助けることはぶつかることがあって、非常に難しい。ある特定の困っている方に対応しようと思うと一律のルールでは対応できない。行政にとって、公平性は金科玉条であり、特例をホンマに嫌うのでみんな同じ対応にする。でもこうした対応のみをやっている限り、真に困った人に対応ができないんですよ。

 公正・公平を大原則としながらも、特別に対応しなければいけないという時に対応できる組織体制にする必要があって、それに必要なのが適切な権限移譲なんです。それをどうルール化していくのかは難しいんですけどね。

加藤:いま、自治体の中でも一人の困っている人を救って、それをルールにして汎用化させていくという考え方も出てきましたよね。

東市長:職員は本来、目の前の困っている人を救いたいと思って公務員になっているわけですからね。

一人ひとりが喜びを実現できる世の中にしたい

加藤:ご自身が人生の中でやり遂げたいことはありますか?

東市長:僕が市長になる前、政治家としての自分のコンセプトを1枚の原稿にまとめました。その一行目が「一人ひとりが、その人にとっての喜びを実現できる社会をつくる」というもので、それが僕の究極のゴールなんです。

 だから、それを果たせる場ならどんな環境でも良いですね。いまのこのフェーズでは、行政がいままでのしがらみをリセットすること。公平で透明な価値基準やルールを持つことで、誰もが正しいと思う目標を立て、それを低い予算執行率で実行できる仕組みを構築することです。

 絶えず地域住民の声が吸い上げられ、協働によって課題を解決する仕組みを作るのって、どの自治体でも本来できることです。だって、それは新しくて理解が難しい概念とかの世界じゃないですよね。だから、まずそれを徹底的にやりたいですね。

答えがないものに24時間向き合っている

加藤:市長のお仕事の醍醐味を教えて下さい。

東市長:民間でも地域でも解決できなかったものが行政、公務員に回ってくるわけじゃないですか。そして、公務員の中でも課員、課長、部長、副市長までで解決できなかったものが僕に上がってくる。

 答えがあるものは現場で解決してくれますから、僕は答えがないものと24時間向き合っているんですよね。それに対して4年間、常に向き合う権利が与えられていることが醍醐味だと思います。

納得されなくても、理解されなければならない

東市長:いま、市内小中学校の小規模化に伴い、統廃合を進めていますが、自分の子どもの通学時間が15分から40分になる地域もあるんですね。意見交換で、それをある保護者の方を中心にガンガン色々言われて、時間も延長して、質問が出なくなるまでやったことがあります。

 意見交換会が終わって会場を出たら、その保護者の方が自転車で帰るとこやったんです。そしたら、開口一番「おー、市長やん。言っとくけどな、私、全然さっきの納得してへんからなー!」言うんです(笑)。ただ、続きがあって「でも、あんたがたくさんの人の話を聞いて、色んなこと考えて、真剣に取り組んでいるっていうのが分かったから、そのままやってくれたらいいで!」って言い残して、チャリに乗って去って行かれました。

 そのときが、市長をやっていて良かったと思う瞬間です。「真剣に取り組んでいる」って言われたら、一番嬉しいですよね。

 行政ができることには限りがあります。特に、人口減少が進むいま、常に「ありがとう」と言ってもらえることばかりではありません。仮に、「A」と「B」という施策のどちらかしかできない場合、やらなかった施策の理由についても責任を負う。

 「A」を重んじて「B」をできなかった場合に、「B」の施策についても市民と向き合って説明をする。「B」であれば利益を得られた人たちには、納得まではしてもらえない。ただ、なぜ市として「A」を選んだのか理解されなければならない。僕は、できなかったBの施策について「理解はした」と言ってもらえることが、市長として究極的に喜びを感じる瞬間です。

編集後記

東市長の言動から、合理性のもとに行動していることが見て取れる。また、その進め方について、状況を冷静に見極めていることから、状況判断能力が極めて優れている方だと感じた。それもそのはず、東市長は京都大学院工学研究科修士課程(原子核工学専攻)を修了し、その年の国家公務員試験で該当する受験区分の受験者においてトップの成績を収めている。

 東市長の特筆すべき点はその地頭の良さのみならず、コミュニケーション能力が卓越していることもある。秀才タイプの人間にありがちなのは、論破することを目的としたり、人間の行動原理におけるコミュニケーションの重要性を低く見積ることだ。しかし、東市長はコミュニケーション能力を最大限生かしながら、多くの試みを着実につなげているように見える。

 最たる例は、住民や既得権益者とのコミュニケーションであろう。学校の統廃合の話や、商工会の話、そして、オープンな場でフラットに利権団体と意見交換する。このような試みは一見地味だが、その価値は非常に高い。

 私には利権というものに対する嫌悪がある。1995年から2期に渡り三重県知事を務めた北川正恭氏も、その利益誘導にまつわる利権構造を鋭く指摘したが、東市長の登場は時代の変化の兆しを感じさせる。

 東市長は対話会を通じて利権を解消する動きをとり、かつ、それを今回の記事のように表に発信することのできる力強さがある。それができる政治家はほとんどいない。無所属で勝ち切った選挙の強さと、優れたコミュニケーション能力が相まっているからだろう。「補助金を切ってくれてよかった」と受益者が発するのは信じられないことだ。

 時代に合わなくなったものに対して引導を渡す、そして、本来あるべき行政の姿に立ち帰る、そのような先駆的な役割が全国に広がってほしいと心から思う。全国には強い意志を持って、人知れず利権と対峙している首長や地方議員、公務員も多くいることだろう。そういう真摯で正しい想いが、世の中に伝わり評価される時代に入ってきたのではないか。

 本来は政治家が話しづらいセンシティブな内容を、世のためになるとの想いで語っていただいた東市長に心より感謝したい。

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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