業務をカバーし合う風土が生まれた
加藤:働き方改革を通じて、職場の風土に変化が起きてきたのでしょうか?
安田氏:どこの課の職員も自分がいないと仕事が回らない、そんな意識に縛られています。しかし、ある課では業務の共有化も図ることで、職員が一時期欠けた状況でもお互いをカバーし合える体制を作り上げました。
加藤:特定の人に負荷がある時には、お互いを支える空気が生まれているわけですね。
安田氏:そうですね。モデル課の一つでは、職員の欠員が生じました。通常は職員に欠員が生じてしまうと、確実に人事課には「臨時職員を配置して」という依頼が来ます。しかし、この課では人事課に人員要求をすることなく、お互いが協力することで解決していきました。
加藤:素晴らしい。それは全庁的な広がりを見せているんですか?
安田氏:率直には、まだ全庁に意識が浸透しているとは言い難いです。ですが、徐々に裾野を広げ、自走する力が備わった課においては、働き方改革が本質的に進み、残業時間などにもその効果が現れたことが実際に確認できました。
他にも、有給休暇の取得や男性の育児休業への理解も進んでいますね。
加藤:逆にデメリットのようなものを感じましたか?
安田氏:デメリットとは少し違うかもしれませんが、働き方改革でせっかく生まれた余暇時間を、少しは自己研鑽や地域活動などにも使ってくれているのかなという心配はあります。次の日の生産性を高めるために、ゆっくり過ごすことや趣味のために時間を使うことも非常に重要ですけれど。
働き方改革には数字目標は不要
加藤:実際に実行してきた道を振り返ると、何を思いますか。
安田氏:私にとってはとても壮大で重たいイメージがあった働き方改革ですが、やってみると「案外できた」というのが今の実感ですね。
加藤:働き方改革って抽象的で、人によってイメージが違いますよね。
安田氏:東市長が非常に素晴らしかったところは、数字の目標を定めなかったところです。例えば、何%超時間外勤務を減らしますとか、具体的な数値目標を掲げたり、我々に強いることは一切言わなかったんですよ。画一的に時間外勤務を何%減らすよう言われても、時間外勤務が必要な職場もありますからね。
加藤:具体的な目標だけでなく数字上の削減目標もないなかで、どうやって進んでいったのですか?
安田氏:「目標数値を決めて、目標達成できたら、はい終わり」では職員自らが自走できないのです。働き方改革はずっと続いていきます。もちろん、画一的な目標がないというのは難しい面もあるのですが、そこは自分たちでそれぞれの目標にむかって課題解決をずっと考え続けて進めていかなくてはいけません。
小さな成功体験が組織風土を変える
加藤:モデル課で一定の成果が生まれた後、どのように働き方改革を推進していますか?
安田氏: 2018年度は、「四條畷市役所をより良くするためにどうすべきか」ということを話し合うプロジェクトチームの参加者を庁内で募りました。常勤職員だけでなく、任期付職員の方まで、部署を問わずいろんな方に参画してもらい、人事制度とか給与制度を含めていろんなことを話し合ってもらっています。
加藤:四條畷市の常勤職員は320人ぐらいですよね、そのうち何人くらいの方が参画されているのですか?
安田氏:だいたい20人ちょっとです。全体からすると、6%ぐらいですかね。年齢的には20代から40代が中心です。
加藤:参画した方はどういう方なのでしょうか?
安田氏:組織に対して、こうなったらいいのにという思いを持っている人たちが参加しています。
加藤:要望と不満は紙一重じゃないですか。みんなの意見をうまく調整する難しさがありますよね。
安田氏:そうですね。それがプロジェクトチームの運営においては怖いところです。そこで市長からは、このプロジェクトチームは文句を言う場ではなく、主体的に解決の方法を探していく場だと伝えてもらいました。
加藤:要望はいくつか出ているのかと思いますが、具体的な施策にするうえでの肝はどこにありますか?
安田氏:要望はいくつかでているのですが、プロジェクトチームの考えをまとめて、今後どのように施策に落とし込めるかは、全く白紙の状況ですので、今後の四條畷市の動きにご期待いただければと思います。
(編集=文書編集チーム、加藤年紀)
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。