副市長の公募に1700件の応募
加藤:四條畷では副市長やマーケティング監の登用に際して、公募という思い切った手段を使われましたね。応募状況はどうでしたか?
安田氏:もともと市長が選挙公約で女性副市長ポストを創設すると掲げていました。実際に公募するとなったら、役所内からも驚きの声があがりました。多くの自治体では、副市長は行政内部や行政経験のある人から登用するという手法が主流ですからね。募集はエントリーにエン・ジャパン様の全面的な協力をいただき、エン・ジャパン様のサイトを通じて行いましたが、膨大な件数の応募がありました。副市長は1700件、マーケティング監は790件に達しました。
加藤:すごいですね。この人数をどのようなフローで選考しましたか?
安田氏:選考についてはエン・ジャパン様の選考支援のもと、市長が直接選考資料に目を通され、副市長選考では書類審査から選ばれた約30人に1次試験面接を受けていただきました。
WEB面接方式を導入
加藤:大変な数から絞り込みましたね。1次試験ですが、面接は直接、市役所に来てもらったのですか?
安田氏:遠方の方には1次、2次試験はLINEかSkypeで面接をする、いわゆるWEB面接も可としました。面接時間については副市長選考が、1次、2次、3次面接とも1人1時間かけています。また、マーケティング監は1次面接が30分で2次、3次面接が1時間かけました。
すべての面接に市長自らが入られ、私も同席させていただきました。最終の3次試験は市長の他に総務部長や若年層の職員にも参画してもらい、多角的に面接を実施しました。
加藤:WEB面接の導入や面接官なども斬新で面白いですね。1次と2次では何を基準に選考したんですか?
安田氏:書類審査で市長が応募者のいいと思ったところを、1次試験ではさらに掘り起こして聞いていました。書類上でのイメージと違っていないか、組織に順応できるかを判断され、ここで半数の約15人に絞りました。2次試験では、市の状況や組織の上層部の役割とかもお伝えした中で、副市長の責務を果たせるかどうかを判断し6人に絞りました。
加藤:そうすると1次では候補者の強みや人間性を見る。2次では市のおかれている状況や抱える問題点なども話して、その反応から任せられそうな人を選ぶということですね。
市長も悩んだ最終選考
加藤:最終選考はどのように進めたのでしょうか。
安田氏:市長は面接官全員の意見を聞きました。例えば知力であったりコミュニケーション力であったり、面接時に感じたことを忌憚なく話しあいました。市長は面接官全員の話を聞いたうえで、大変悩まれたようですが、熟考され、林副市長が選任される運びとなりました。
加藤:1700件から6人に絞り込まれた時点で、候補に残ったのはすごく優秀な人たちでしょうから、評価をするのも大変ですね。現在の副市長のキャリアもすごいですよね。
安田氏:そうですね。本当に難しかったです。最後に残った候補者の方は、皆さま素敵な方々でしたから。
加藤:ちなみに安田さんは、どういう人がくるのが理想だと考えていましたか?
安田氏:これまで四條畷市の副市長は、行政マンの出身者が着任していたので、どのような人が民間から来られてマッチングするのか具体的な考えはありませんでした。ただ、私一個人としてはリーダーシップを持って引っ張っていただける方がいいのではという漠然としたイメージはありました。
加藤:そのリーダーシップというのはガーっと進めていくタイプの人ですか?
安田氏:はい。そういうイメージがありましたね。ただ、今考えると、市長が意志を強くもって施策を押し進めていくタイプなので、対話を重視して取り組まれる林副市長と非常にマッチしていると思っています。
内部登用では実現が難しかった
加藤:公募したメリットはどのようなものでしたか?
安田氏:非常に多くの方に申し込んでいただけたおかげで、民間での新しい知見を持つ副市長、マーケティング監に着任いただけたのは、組織にとって良かったと思っています。組織に新しい風が吹き込まれていると思っていますが、これは内部登用では実現が難しかったことかもしれません。
加藤:役所内では民間アレルギーがあると聞きます。そういう問題は起きませんでしたか?
安田氏:議論の場では、考え方の違いからきつく出る職員もいますがそこは副市長、「ははは」と笑って受け流すと言うか、応えないと言うか(笑)。大勢の方の中から選ばれただけあって、副市長はメンタルも強いです。もともとコミュニケーションスキルが非常に高い方なので、「いろんな考えがあって当然」だと感じておられるようです。
加藤:そういう寛容性を持つ人が組織の根幹にいることは大事ですよね。
候補者が面接を辞退したことがきっかけ
加藤:一般職においてもWEB面接とSPIを導入されました。これは、安田さんが自発的に進めたのですよね?
安田氏:市長が着任されて、四條畷市としても話題性があった2017年度でも、職員採用試験の事務職大学卒業程度の募集枠6人に対して、29人しか申し込みがありませんでした。たった4.9倍の応募倍率。倍率が高ければ良いと言うことではありませんが、その時に、これではまずいという非常に強い危機感がありました。四條畷市に付加価値をもたらし、戦力となる応募者でないと採用できないことから、応募者数を増やさないと現場に配置できないと。
直接のきっかけとしては、2018年5月に専門職種の採用試験を行った時に、受験者が面接を辞退することがありました。理由を聞いたら「子どもが熱を出したので行けません」とのこと。その時にWEB面接をやるべきだという気持ちが芽生えました。「お子さんが熱を出したら家を離れられない。でも、オンラインでのWEB面接だったら受けることができる」と。
WEB面接が先進的なイメージにつながる
加藤:応募総数はどのくらいでしたか?
安田氏:事務職大学卒業程度2名の募集枠には213人の応募がありました。
加藤:そのうち、辞退数はどのくらいでしたか?
安田氏:118人でした。四條畷市の採用試験日が大阪府内の統一試験日と同日での実施だったため、倍率をみて他の自治体の受験に流れてしまったと考えています。
加藤:213人から118を引いた95人が面接したわけですね。そうすると、2017年度の29人比べたら3倍近い。95人のうち、WEB面接された方は何人くらいでしたか?
安田氏:事務職大学卒業程度で25人、民間企業職務経験者で15人、合わせて40人いました。ただ、対面で面接を受けに来た方も、WEB面接というのが面白いので受験に来てくれた方も大勢いらっしゃいました。「四條畷市って新しいことをしているよね。前向きなことをしている市っていいよね」と。そこは大きな収穫だと思っています。
地域を越えて思いを持った方に来てほしい
加藤:WEB面接導入について反対はなかったのですか?
安田氏:特に反対はなかったですね。ただ、四條畷市内在住者からWEB面接の応募があったことについては懐疑的なご意見をいただくことはありました。その時には、いろいろなご事情を抱えていらっしゃる方が大勢おられます、とご説明してご理解いただきました。
加藤:メディアからも注目を集め、取材もされました。施策として話題性があることは、当初から算段に入れていたんですか?
安田氏:非常に後向きなコメントで申し訳ないですけど、注目されることが苦手なので、メディアには恐怖心があるんです(笑)。だから、メディアを意識していたわけではありません。単純に面接を受けやすい環境を作って、受験者を増やしたいと思っただけなんです。結果としてメディアに取り上げてもらえ、おかげでこれだけ応募がありましたので感謝していますが。
加藤:今後もWEB面接は行なっていく予定ですか?
安田氏:続けたいと思っています。いろんなところから、いろんな思いを持った方が四條畷市を良くしていくために受験してくれるのが一番いいと思っています。
今年度の取り組みを次年度に生かしていくためには、応募者から受験辞退者をどれだけ抑えられるかについて検討しています。
例えば、美容室や病院などの予約ってネットでピピッっと簡単にできますよね。四條畷市でもそのようなシステムを使って面接を予約制にしたら、受験者はスケジュールを選んで都合のいい日時に受験してもらうだけで済みますので、辞退者も減るんじゃないかと思っています。前例にとらわれないことを、これからも進めていきたいと思います。
(編集=文書編集チーム、加藤年紀)
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。