インタビュー

【平戸市 黒瀬 啓介氏 #4】自治体の金稼ぎに住民を利用していないか

黒瀬啓介4

お得で釣った人は、お得に釣られる

加藤:過度なお礼の品によって、ふるさと納税で自治体同士が税金を食い合うのは不毛だと感じています。

黒瀬氏:私は、お得で釣った人は、また別のお得に釣られるって思っています(笑)。自治体同士で競争を始めると、結果的に地方を安売りしてしまう。ふるさと納税は逆にもっと地方の価値を高める事業でもあると思うんです。なので、逆に地方を安売りしている自治体には疑問があります。

 ただ、最近は地方の魅力的なお礼の品だけでなく、寄附金の使い道に関心を寄せる寄附者が増えてきている中で、「モノ」で関心を持ってくれた人たちに、きちんと自治体の想いやどういう活用をしているかを伝えられるかが大事だと思います。

 実は、先進的にふるさと納税を取り組んだ自治体って、寄附額を増やすことをゴールとして取り組んでいなかったんですよね。純粋に「地場産業のここに光を当てたい」「地域の課題を解決したい」という想いを伝えるツールとして使っただけにすぎません。

 でも、後から参入してきた自治体は、「平戸市が10億集めているから、うちも10億集められるだろう」と寄附金額がゴールになってしまう。そういう部分で、ふるさと納税に対する取り組み方は全然違うものになってしまうんです。

過剰なお礼の品競争に巻き込まれる背景

加藤:過剰なお礼の品競争に突入しなければいけない背景もあるのでしょうか?

黒瀬氏:おかしい寄附金の集め方している自治体は、上層部の発信が強いように感じます。周りの自治体と寄附金額を比較されたりすることもありますし、時には、議会からの声もあると思います。

 それと、ふるさと納税そのものが「お礼の品を出して、地場産業の活性化に繋げる」という大義名分を掲げることができるので、寄附金をどんどん集めることに何の疑問も持たずに正当化し、おかしな方向に加速してしまうこともあります。これはとても怖さを感じます。今まで自治体職員にとって、こんなにも数字をダイレクトに追っていく制度はなかったので、とても刺激的に感じる背景もあると思います。

寄附金を新たなチャレンジに投資するべき

加藤:集まった寄附金は何に使われているのでしょうか?

黒瀬氏:少子化対策を重点的に、産業振興や教育、移住定住などに活用しています。

加藤:もし、ふるさと納税の寄附金額が減少すると財政的に困りますか。

黒瀬氏:自治体が寄附金を経常経費に充てるのか、投資的なこと使っていくのか、どの分野に充てていくかが重要です。私個人としては経常的なものに充てるべきではなく、これまでできなかったことに投資すべきだと考えています。

 行政の施策は失敗してはいけないという風土が強すぎるゆえ、なかなかチャレンジができないことが課題です。ふるさと納税は自治体が努力をし、次の挑戦を行うために必要な財源を生み出すべきものだと思っているので、寄附金が減っても困ることはないと思っています。

1度もらうとまた欲しくなる

加藤:ふるさと納税が長期的な視点で、地域の事業者を駄目にしてしまうこともあるのでしょうか?

黒瀬氏:そういったこともあると思います。補助金なども同様だと思うのですが、やはり1度もらうと、また欲しくなってしまいますよね。事業所さんからすると稼げるときに稼ぎたいというのはあるでしょうから、この制度にどれだけウエイトを置いて活用してもらうかが大事だと思っています。意識一つで結果は全然変わってきますから。

加藤:そのうちに、他で頑張るモチベーションをそいでしまうのかも知れませんね。

黒瀬氏:そうですね。ふるさと納税は、行政が営業しますから、事業者にとっては勝手に注文が入ってしまいますし、そういう意味でも奇跡の事業ですからね(笑)。だからこそ危うさがあると思っています。

市民や事業者の人生を背負う覚悟はあるか?

加藤:ふるさと納税を担当している人に、伝えたい事はありますか?

黒瀬氏:ふるさと納税は経済的な部分でも地方にとても大きなインパクトを与える制度なので、「事業者・生産者を利用していないか」、「事業者・生産者の人生を背負ってやっているか」、「自治体の金稼ぎに付き合わせてないか」というのは問いたいです。

 本当に大切なのは、一時的な売上よりもその先に何が残るかです。ふるさと納税という制度によって、新しいチャレンジができて初めて成功だと思っています。

 この制度がもし終わってしまったときに、自治体は事業者・生産者を救えないのですから。だからこそ、この制度を通して何を実現したいのか、何を解決したいのか、明確なビジョンを持つ必要があると感じています。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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