インタビュー

【平戸市 黒瀬 啓介氏 #1】ふるさと納税日本一 「先行者利益」と「寄附者ファースト」

黒瀬啓介1

【黒瀬 啓介(くろせ けいすけ) 経歴】
1980年生まれ、平戸市出身。2000年に平戸市役所に入庁。市教委生涯学習課を経て、広報を5年間担当。在籍中に長崎県広報コンクール広報紙の部5年連続最優秀賞受賞、2008年全国広報コンクールの広報紙の部(市部)で6席受賞。
 その後、税務課住民税係や企画課協働まちづくり班を経て、2012年から移住定住推進業務とふるさと納税を担当し、2014年に寄附金額日本一を達成。2016年7月から株式会社トラストバンクに1年9か月出向し、2018年4月より平戸市財務部、企画財政課で主査を務める。

-広報担当として成果を上げた後に、ふるさと納税で2014年に寄附金額日本一の達成に貢献した黒瀬啓介氏。その経験を生かし、2016年7月からふるさと納税サイトを運営する民間企業に出向し2018年3月に平戸市へ帰任。本インタビューでは、ふるさと納税を日本一に導いた活動や要因、さらには、民間企業への出向から感じたことを率直に伺った。

ふるさと納税の3つの柱

加藤(インタビューアー):平戸市は2014年のふるさと納税の寄附金額が日本一となりました。その特徴を教えていただけますか?

黒瀬氏:1つは全国に先駆けて、カタログポイント制を採用したことです。カタログポイント制とは、寄附者に対して金額に応じてポイントが付与され、カタログの中からポイントに応じてお好きなお礼の品を選ぶことができるものです。もちろん、カタログ掲載しているお礼の品は全て平戸市の特産品です。

 2つ目は、そのポイントに有効期限がないこと。そのため、寄附者は寄附した後にポイントを使って好きな時にお礼の品を請求することができます。納税の駆け込み時に、多く方から注文いただきました。

 3つ目は、お礼の品の配送指定ができること。当時のふるさと納税はお礼の品を選ぶのみで、配送に関するケアは全くなかったです。主な特産品は生鮮品でしたので、配送する際のサービスを充実させることで地場産業の活性化につなげる狙いがあります。

寄附者ファースト

加藤:これまで行われていなかったカタログポイントや、配送の工夫はなぜ取り入れたのでしょうか?

黒瀬氏:まず、ふるさと納税がこれから伸びると直感的に感じていましたが、その上で平戸市にどういう戦い方ができるか考えていたんです。
 当時のふるさと納税は自治体側の都合によって、寄附者に不便な部分も多かった。でも、平戸のファンになっていただくためには、『寄附者ファースト』の環境を整えることが必要だと感じたんです。だから、全国どこの自治体もやらないことを、手間を惜しまずにやろうと考えていました。

加藤:『寄附者ファースト』を考えた時に、お礼の品の小分けや配送に着目したのはなぜでしょうか。

黒瀬氏:単純に、いつ届くかわからないものに寄附するのって怖くないですか? しかも、平戸市の主力の特産品は生鮮品ですので、不在で受け取りができない場合にお互いロスになってしまいます。

あえて1商品2価格帯というルールを設けた

加藤:お礼の品を提供する事業者側へ課すルールにも特徴があるのでしょうか?

黒瀬氏:平戸市はどの事業者も1商品2価格帯という共通ルールのもとで出品しています。自治体によっては、出せる事業所はいくつでも出品可能としていて、お礼の品のラインナップが1,000品を超えている自治体もあります。

 全国のお礼の品の数が年々増加傾向にある中で、あえて1商品2価格帯というルール続けている理由は、1つの商品のあるべき販売方法を見極めきれない中で複数の商品を扱っても、結局、分析ができないと感じたからです。掲載できるのが1商品2価格帯だからこそ真剣に考えてもらい、寄附者のニーズに向き合ってもらえるのだと思いました。

日本一の要因は先行者メリット

加藤:納税金額が日本一になった要因はなんでしょうか。

黒瀬氏:やはり「先行者メリット」が大きいですね。ふるさと納税総合サイト“ふるさとチョイス”を立ち上げ当初からいち早く活用していたので、ふるさと納税が注目され、サイトのアクセスが伸びた時にきちんとユーザーを取り込むことができました。その際に、面白い取り組みをやっている自治体として、カタログポイント制などをメディアに取り上げられたことも大きかったと思います。

 2つ目は、ほとんど流通していなかった珍しい特産品である「ウチワエビ」を扱っていたこと。市も独自のお礼の品として積極的に売り込みをかけて、メディアへの露出がとても多かったために、沢山のご注文をいただきました。

 3つ目は、「高額寄附者向け」の戦略ですね。当時のふるさと納税の調査で、東京都民の寄附金額の平均が10万円と知ったんです。10万円の寄附をする際に、1万円の寄附を10箇所にするには面倒だろうと感じました。カタログポイント制で1度寄附すれば、後は好きな時にお礼の品を注文することができる。その結果、駆け込み時には全国と比べても3倍くらい高い寄附単価となりました。

多くのメディアからの取材

加藤:メディアの取材は、どのような経路で依頼があるのでしょうか。

黒瀬氏:ふるさとチョイス経由や市へダイレクトに依頼があります。1つの番組に出ると、必ず他局や同局の別の番組から連鎖的に連絡があります。特に「得する人損する人」や「金スマ」は反響がとても大きかったですね。一番驚いたのは、海外メディアにも注目いただき、ニューヨークタイムズやエコノミストの取材も受けたことです。

 ただ、初めはオファーがあればメディアの取材を積極的に受けていたんですが、途中からはお得なお礼の品だけを推すメディアが増えてきたので、お断りすることもありました。私たちは“お得”でこの制度を運用してはいなかったですし、“お得”でこの制度を盛り上げる危険性も感じていましたので。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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