政党内での議論の深め方
加藤:たとえば、最初に意見の齟齬があった民泊という問題については、党としてどのように結論を出していかれたんですか?
海老澤氏:民泊のように影響の大きく賛否が分かれるものは、推奨している賛成派と、反対派の両方の話を聞きます。他にも、既に民泊をやっている一般区民の方にも話を聞いて、多角的に知識を入れていきます。
その後、各人が議会で言いたい放題言って、他の会派の意見も聞きながら、少しずつ党内の意見を詰めていくという感じですね。
加藤:勝手なイメージですが、完全に党内で議論を尽くし、ガチガチに決まった状態で議会に上がってくるのかと思っていました。
海老澤氏:いえいえ、代表質問で党全体の雰囲気と違うことを言う人もいて、他の会派から「あんなこと言わせていいの?」と言われることもありますよ(笑)。
でも、代表質問のときはまだ議決前ですから、委員会中はそれぞれの委員が自分の意見を言って、最後にはまとめましょうという感じです。
議員がその時点で自分の意見を言えないとダメ
加藤:そういう決め方は、珍しくないんですか?
海老澤氏:おそらく、これも文京区で自民党が第一党ではなかったところと関係があるかもしれません。
議長も民主党から出ているし、今もその前の区長も元民主党。自民党は今でこそやっと第一党になって議長も出していますが、ほんのちょっと前は第2党でしたからか、上からガチガチに決められて、落とされてくるということは起きないですよね。
加藤:ただ、議会で議論の経緯が見えるほうが区民にとっても、行政にとっても良いですよね。議員個々がそれぞれ思っていることを議場で発言して、議事録に残してほしい。党内で決まったことを、「これで決まり」と言われても、その過程が議事録には残らない、それは将来振り返ることもできないので、区民から見たら大きな損失ですよね。
海老澤氏:さっきの代表質問をした方も、最終的には議会で揉まれて反対側の意見に着地していました。それを批判的に言う会派もいますけど、まだ、議決の直前でもないのに、それぞれの議員がその時点で自分の意見を言えないとダメですよね。だって、常にきちんと意見を言うことが仕事じゃないんですか。
加藤:そう思います。意見を変える時に、変えた理由に妥当性があれば良いですよね。知っている情報や環境は常に変化しますから、意見が変えられないほうが問題だと思います。
他会派との連携
加藤:他の会派とはどのように関わっているのでしょうか。
海老澤氏:我々は最近やっと第一党になれたんですよ。ただ、今の人数だと公明党と組んでも過半数を取れないから、毎回、どこかの会派に仲間になってもらわなきゃいけないんです。
今年の6月から旅館業法が緩和される中で、文京区だけ独自に議員提出議案を出して、その議案を全会派全員一致で議決し、新しい条例を作りました。実にこれが16年ぶりらしいんです。この時は全部の会派を回って説明して、それに賛成してもらいました。
本当は33人がまとまることが一番大事なことなんですけど、なかなか今回のようにはいかないですよね(笑)。
加藤:過半数を取るためには、3人以上いる「ぶんきょう未来(7名)」、「共産党(6名)」、もしくは「文京永久の会(3名)」のどれかと歩調を合わせにいくのでしょうか?
海老澤氏:そうしたいですが、どちらかと言うと、共産党とぶんきょう未来がしょっちゅう一緒にやっています(笑)。未来と共産党が委員会の中で賛成すると、過半数を越えてしまうので、文京区議会だけ「辺野古建設の中止を求める要望書」を国に出したこともあります。
私たちはさすがにそれに乗れないですけど、人数が拮抗していますからね。いまの議長は自民党から出ていますけど、その要望書を出したことが沖縄新聞にも掲載されて、辺野古の方が大喜びでお礼に来ました。
他にも、区の上を飛行機が飛ばないようにと要望書を国に出していたりもします。東京都23区の中では独特ですよね。
党関係なく接する
加藤:仮に、次に選挙で過半数を取れたとしたら、他会派を説得しにいく文化は残ると思いますか?
海老澤氏:残るんじゃないですか。
加藤:でも、優先すべき時間を考えると、人間心理的には他党との調整の優先度は下がりませんか?
海老澤氏:どうでしょう。今まで過半数をとっていないのでわからないですけど、地域によっては自民党と共産党が仲悪いとか聞くけど、文京区では意見の違いはあっても仲が悪いことはないと思いますね。
委員会の視察なんかをしても、党関係なく普通に仲良く接していますよ。みんな住みやすい文京区を作りたいという目的は同じですからね。
少数会派でも発言ができるように
加藤:思想が違くとも、お互いに寛容性を持てると良いですよね。
海老澤氏:ちょうど今、画期的な話をしています。文京区議会の常任委員会は4つあるんですが、今のルールだと3人以下の会派は、所属出来ない委員会が出来てしまうのです。
少数会派でも発言の機会を設けるよう、自民党としては委員外発言という形式で、委員でなくとも申し出があれば、委員長と議長が了承をした場合に、発言を可能とすることを検討しています。
他の会派からは、本会議での発言という意見もありましたが、委員会に常時参加していない人が、いきなり本会議で発言するものおかしいということで、これについては自民党案で進める方向で決まりそうです。
加藤:多様性を担保するために、少数派に機会を与える。それは良い事ですね。
海老澤氏:もしかしたら、少数会派の方は自民党が威張っていると思うかもしれないですけど(笑)、そんなに威張っていないと思うんですけどね(笑)。
※この記事はテレビ東京とのタイアップ企画です。海老澤敬子氏の議員を志し、そこに至るまでの経緯はテレ東プラスでご覧いただけます。
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※本インタビューは全4話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 大政党でも地方議会で自由に発言できる
第2話 自民党文京区議団の他会派との付き合い方
第3話 行政は既存事業をやめてから、新しい事業を起こすべき
第4話 多くの地方議員は二元代表制の本質を理解していない