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週刊 寺本英仁「巻き込む力」と「ビレッジプライド」の育て方 第16号(HOLG版)

本記事では、有料メルマガ「週刊寺本英仁@島根県邑南町/「巻き込む力」と「ビレッジプライド」の育て方」の一部(A級グルメ連合についてのストーリー)をご覧いただけます。なお、掲載するメルマガは約3か月前に配信した内容です。最新かつ、全文の閲覧を希望する場合はコチラからお申込みください。

【第16号の目次(2019年9月25日配信)】
1.近況ーーみなさんは、100歳のときの自分を想像できますか?
2.<A級グルメ連合>の仲間たち 西ノ島町編(3)
3.スペシャル対談「巻き込む力」(4)
4.著書の案内、質問募集!など

メルマガの一部をHOLG.jpに公開いただいています。

3.<A級グルメ連合>の仲間たち 西ノ島町編(3)=志を同じくする5市町の取り組みを連載形式で紹介します!

 また西ノ島町は、若者が挑戦しやすい土壌をもっている。
 島の人口は約3000人。都会では何百万分の1の小さな歯車にならざるを得ないのとは対照的に、ここは一人一人が主役になれる島なのである。
 とくに、起業を目指す若者には本当に手厚い補助金の制度がある。
 町独自の補助金制度として500万円(上限)もあるという魅力に加え、役場の職員が親身に国や県の補助制度を上手く活用するアドバイスをしてくれるのがすごい。
 人口の多い町では、これほどきめ細かい接し方はしたくても、できない。西ノ島町の人口規模ならではの事例だと思った。
 役場職員は無料コンサルタントといってもよいが、それでは聞こえがわるいから、やっぱり「島家族」と言う言葉で括りたい。住民を家族のように思える風土があるのである。
「島って閉鎖的なんじゃないの?」と思っている人も多いかもれない。
 しかし、この島は昔から漁業の手伝いする人を本土から多く受け入れていたため、邑南町と同じように、外から来た人間にとって本当に風通しが良いのだ。
 その証拠に役場職員85人のうち移住者が33人もいる。移住者の受け入れに寛容であることがわかると思う。そんな風通しの良いさがあるから、「島家族」として若者が集まってくるのである。
 この西ノ島で活躍する移住者や若者を紹介していこう。
 最初はラッセル夫妻。奥さんの早紀さんは福岡県出身で、学生時代にワーキングホリデーで渡航したカナダで運命の人、ステファン・ラッセルさんと知り合う。以後、ステファンさんの実家のあるフランスで生活を始めるが、パリのテロ以降、フランス国内の治安が悪化したため、日本に帰国を決めた。
 その際、ネットで「地域おこし協力隊」の募集を調べたところ、西ノ島町の受け入れの条件が他の自治体よりよく、海がある場所、とくに島に移住したいとの思いから、未知の土地である西ノ島町に移住を決めた。
 ラッセル夫妻は「地域おこし協力隊」での3年間の研修を終えた今年、ご主人のステファンさんが料理人だった経験を生かし、島で移動販売車によるピザ屋を開業した。
「フランス人なのにピザ?」と疑問が湧いた僕は、早紀さんに質問した(日本語で訊けるから)。
 ステファンさんの出身地、フランス、サヴォワ県の人々は日常からピザを食べ、彼自身ピザは大好きだったらしい。しかもイタリアのピザよりフランスのピザは豪華なのだそうだ。
「好きこそはものの上手なれ」ということわざどおり、たしかにステファンさんが作るピザは豪華で美味しい。
 しかし、この西ノ島町の高齢化率は約44%、邑南町に負けず劣らずの高さである。本当にピザが町で流行るだろうか。
 邑南町の高級イタリアン「AJIKURA」がオープンしたときも、町全体に「なぜ田舎でイタリアン?」という雰囲気が漂ってしまったので、少し心配をして、オープンしてからの売り上げをサキさんに恐る恐る尋ねてみた。
「売り上げは好調です」とのこと。数字までバッチリ聞いて納得した。
 それというのも「地域おこし協力隊」として3年間、西ノ島町の人に受け入れられながら暮らしたことから、「ステファン夫妻がお店を始めたなら応援してあげないと」という空気になったらしい。
 そして次第に「ピザってあんまり島では馴染みなかったけど、意外と美味しいね」と、町の人の気持ちが変化していったのだろう。その様子は手にとるようにわかる。
 この経過は、邑南町の「てらだのパン」と同じなのだ。
「てらだのパン」の寺田くんはお店をオープンする直前まで、なかなかパンが膨らまなくて、町の人に心配されていたけれど、いざオープンしたら、みんなの気持ちは「自分の町にできたパン屋を応援しよう」となっていった。
 パン屋で買い物をするだけでなく、寺田くんの仕事を手伝ったり、パン屋の宣伝を自らの口コミで宣伝する。某プロ野球チームを応援する僕のように、自分にはまったく利益はなくても、共感してファンになれば声援を送りたくなるものなのだ。
 30年前のバブルの時代、日本全体に人口が増えていて、だまっていてもものは売れ、観光客は来た。人口減少社会を迎えた今、ものは買わなくなり、人は出かけなくなった。そんな時代にこそ、共感力が大切なのである。
 ステファン夫妻も西ノ島町で3年の時を過ごすうち、まさに共感されていったのだと思う。
 早紀さんは、大手コンビニが一軒もないこの町を「なんの不便も感じない」と堂々といい切る。欲しいものがあれば、Amazonで注文すると遅くとも翌々日には届く。病気をしてもあの白石院長のいる隠岐島前病院があり、都会の病院のようにたらい回しにされることもない。
 西ノ島の小学校に通う児童は移住者3割、地元の人7割といった割合で、夫妻の娘さんも当たり前のように迎えてくれると言うのである。
 この西ノ島町では、小さな島のコミュニティの中で、自然と調和がとれる。ムリをすることもなく、お互いに気遣っている奥ゆかしさを早紀さんの話を聞きながら感じていた。
 そんな精神面だけでなく、西ノ島町役場の支援制度はほんとうに素晴らしい。
 ステファン夫妻が起業するにあたり900万円の資金が必要だったそうだが、そのうち600万円は町の支援を受けることができた。自己資金は300万円で済んでいるのである。
 こんなこと、東京でチャレンジしようと思っても絶対にできないと思う。繰り返しになるが、若者がチャレンジできる町なのである。
 訪問したころは、ステファン夫妻はピザの移動販売だけでなく、西ノ島町の人たちが気軽にランチやデザートを楽しめるカフェを、海の見える場所に作っているところだった。
 今度、僕が西ノ島を訪問するときには、きっと西ノ島の町の人がステファン夫妻を囲んで、お店が賑わっているに違いない。
(つづく)

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