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【野洲市 生水裕美氏:第6話】「嫌われていないですか?」

公務員は制度を作ることができる

加藤:最後の質問です。地方自治体で働くことの醍醐味は何でしょうか。

生水氏:まさしく制度を作っていける、これですよね。これは公務員にしかできない。せっかくだったらそれをフル活用するのが大事だと思います。例えば、国でやろうと思っていたらものすごく大変だと思うし、大きな自治体でも大変。

 地方の人口5万の市だからこそ、今回の条例を作れただろうし…。注目されないうちに、こそっと知らない間にできるっていうね(笑)。

自治体の影響力は大きくなっている

加藤:今は、自治体の現場の『知』を国が拾って、全国に広めようとするじゃないですか。だから先進的なことを行う自治体の存在価値はものすごく大きくなっていますよね。現場の肌感覚はやはり重要で、民間企業でも何かのプロジェクトで失敗するのは大抵、現場感のない人が意思決定しているときだと思います。

生水氏:人口5万の小さな自治体の、こんなしょぼい職員に対して、好き勝手話していいと言ってくれて、その話に真剣に耳を傾けてくれる消費者庁であったり、厚生労働省がいるという構図は面白いですよね。市民の生の声を直接伝えられる立場だからこそだと思います。

消費者庁長官 岡村和美さんとの写真

消費者庁長官 岡村和美氏との写真

今まで「生活困窮者」という言葉は役所で使われていなかった

生水氏:そもそも「生活困窮者」という言葉自体、今まで市役所で使われていなかったんです。それが、生活困窮者自立支援法という法律が出来たことで、直接、相談に関わりのない総務とか人事とか財政とかそういう部署から「生活困窮の視点は…」とか「生活再建は…」とかの言葉が聞こえてくるんです。それがすごく面白いなと思います。

 こういう法律ができると、行政は真面目だからパッと動くんですよね。今まで放置されていた分野にスポットがあたって、「生活困窮者支援」というカテゴリーができていく。さらに、そこに制度までもが出来ていくので、現場を知っている者が、必要なこと、大事なことを発信していかないといけないと思います。

いろんなグランドを持つ

生水氏:もっと、公務員がチャレンジをすればいいと思うんですよね。市役所というホームグランド以外にも、いろんな場面のグランドを持つ。時にはアウェイであっても、どんどん積極的に関わっていく。私は、滋賀では、しが生活支援者ネットの副代表、全国では、一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワークの理事をさせてもらっています。楽しいし、すごく仕事の励みにもになります。役所は、公務員の様々な活動を認めてもっと自由にできるように応援すべきだと思いますね。

一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク

一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク 懇親会

「嫌われていないですか?」

生水氏:よく私、同じ公務員の方から「嫌われていないですか?」って質問を受けるんですよ(笑)。

加藤:(笑)。

生水氏:仕事のお願いに行ったら嫌がられるという経験を皆がしているから、「嫌われていないですか?」と聞くんでしょうね。もしかしたら嫌われているかもしれないけど、そこはもう気にしていないです(笑)。

 中学・高校でもね、まわりの人達と上手くやっていかないといじめられるでしょ。いじめられないためには目立たず同調して、争わないようにしていこうとする。そうやって学生生活を送ってきた中で、いきなり「就職活動では個性を出せ」とか言われて。おかしいやんって(笑)。

加藤:生水さんが愛されるのは、相手に返しているからなんでしょうね。

生水氏:おやつあげたりね(笑)。まあ、愛されているのではなく、いじられているかと。

加藤:おやつは罠のときもありますけど(笑)。

生水氏:そうそう。おやつあげて、また、おやつあげて仲間になる(笑)。

加藤:大事ですね、おやつ(笑)。

何か笑っておく

生水氏:あと何かと笑うのって重要ですよね(笑)。笑っておくと何となく「楽しいんちゃう? あそこの課」みたいな感じになる。

加藤:そう思います。

生水氏:うちの部署に異動したい人を増やしたくて、うちの課の職員には「ここの課は楽しい、楽しい」って言いまくってくれるよう頼んでます。「何かあの課は楽しい」みたいな評判がでるように(笑)。

加藤:お仕事としては大変な部署なので、一般的な役所ではそんなに人気が出る部署ではないのかもしれないですね。

生水氏:それが結構ね、聞くところによると、市民生活相談課に異動したいという「隠れファン」がいるみたいなんですよ。ただ気になるのは「隠れ」って何で隠れてんのやろって思ってますが(笑)。でも、やはり、困っている市民を助ける相談支援の仕事を魅力的なものにしていきたいですね。

一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク

一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワークの皆さん

編集後記

「一人の相談者も救えなければ失敗だ。一人の支援が上手くいけば制度を普遍化すればいい」、この山仲善彰 野洲市長の言葉は本当に素晴らしいものだ。そして、これを実際に体現する生水裕美氏もまた素晴らしい。

 企業のマーケティング戦略では“マス”を意識するがゆえに、マスの構成要素の最小単位としての個が不在となることが散見される。その状態に陥ると、人間個としての心や存在が無視されてしまい、期待しているほどの成果が上がらないことになる。残念ながら、同様なことが行政に起こっている可能性は高いと思う。なぜなら、公務員と民間人が本当に心を通わせながら付き合っているケースというのは社会全体から考えると、決して多くはないからだ。

 “個”を考慮するときに、私は生水氏のような周りを楽しく出来る雰囲気を持った方を尊敬する。というのも、人を幸せにするのも不幸にするのも、最も力を持っているのは、その周りに存在する“個”としての人間ではないかと思うからだ。

「世の中を良くするんだ!」という社会起業家の存在も重要ではあるし、公に関わる組織の存在も必要なものである。しかしながら、我々一人ひとりが日頃のコミュニケーションによって、周りの人を幸せにすることができるという事実は意外と重要視されず、見過ごされている。世の中の全ての人が自分以外の誰か一人を幸せにすることができるのなら、計算上は世の中全ての人が幸せになれるのである。

 恐らく、生水氏は仕事かそうでないかに関わらず、一人ひとりの人間と真剣に向き合って生きているのだろう。そして、そこを起点としながら、条例や法律という大きな枠組みに反映させるのだ。この順序は、一人ひとりの個が尊重されやすくなった今の時代では、とても重要な心の在り方ではないかと私は考える。

(文=加藤年紀 写真=砂庭萌 場所=SENQ霞が関)

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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