インタビュー

【野洲市 生水裕美氏:第1話】夜道に気をつけろ

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【生水裕美(しょうずひろみ)氏の経歴】
野洲(やす)市役所、市民生活相談課課長補佐。1999年4月から野洲町(平成16年合併により野洲市)の消費生活相談員(非常勤嘱託職員)となり、2008年より正規職員。内閣府の「社会保障改革に関する集中検討会議」や、厚生労働省の事業である、家計再建支援モデル調査研究事業と生活困窮自立促進(社会参加)プロセス構築モデル事業統括委員会、当事者から見た相談支援事業検討委員会、家計相談支援事業の実施・運営に関する調査・研究事業、家計相談支援に関する調査・研究事業の委員を務める。

 その他、家計相談支援事業検討会委員、一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク理事、社会保障審議会臨時委員(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)を歴任。著書に「生活再建型滞納整理の実務」。

―地方自治体では『個』の力で成果を出す事例が増えて来ていると感じる。1999年に嘱託職員として野洲市に入庁した生水裕美氏は、消費者相談員として『ヤミ金』という社会問題に向き合いながら、目の前に存在する一人ひとりの生活困窮者や多重債務者を救った。
 その経験で培った生活困窮者支援のノウハウを、役所全体の仕組みへと昇華させた生水氏は、地方自治体職員として現場で得た知見を国に伝え、法律制定にも影響を及ぼした。圧倒的な成果を上げる生水氏の働き方や考え方の中に、活躍する職員『個』としてのヒントが隠れている。

消費生活相談 生活困窮相談などを担当

加藤(インタビューアー):現在のお仕事では何を求められていますか?

生水氏:今は野洲市役所という人口5万人の町で、消費生活相談や生活困窮相談を担当しています。求められている役割は、課長補佐としてチームを上手くまとめて動かすことと、市民さんが安心して安全な暮らしができるように、必要な制度を作って運用していくことです。

嘱託の生活相談員に応募

加藤:野洲市でお仕事をされるきっかけは、どのようなものでしたか?

生水氏:1999年に合併前の野洲町が消費生活相談の窓口を新設するということで、人材の募集がありました。私は消費生活アドバイザーという資格を持っていたので、それ生かせる仕事として嘱託の相談員に応募させていただきました。

市民の様々な相談に対応

加藤:具体的にはどのような業務をされましたか?

生水氏:新設の相談窓口で私一人の体制でした。通常、消費生活相談というのは契約のトラブルとか、商品苦情など消費生活に関する相談だけを受けるんですね。ただ、私が配属された部署は生活環境課という環境関係の窓口だったことから、いわゆる消費生活相談だけではなくて、様々な市民のお困りごと、例えば、ごみ問題とか野焼き、犬の予防注射とか、お墓の問題などもお聞きすることになりました。

 それは当時、合併前の人口3万6千人の小さな自治体だったからできたことかも知れません。それによって、市民さんが生活の中でいろいろな困りごとがあるというのが分かって、その後の生活困窮者への対応のベースになっていきました。

仕事の環境が整っていなかったから 一から作り上げることができた

生水氏:私にとっては新鮮で面白かったんですが、消費生活相談に関する本は一冊も職場にはなく、この領域の仕事をするための環境が整っていませんでした。逆に、そのまっさらな状態だから、一から全部作り上げることができるという、ラッキーな環境でもありました。前例がない、というのは、縛られないことなので。

 当時の上司もすごくいい方で、市役所の仕組みを何も知らない私が働きやすいように応援してくださいました。「市役所とはこういうことで連携するんだよ」と、様々な窓口も一緒に回って教えてくれたり、「消費生活相談窓口が始まりました」というのを市民さんだけじゃなくて、各部署の窓口に話をしてお願いに回ってくれました。

「ヤミ金」が社会問題になっていた

加藤:業務の中ではどういった課題がありましたか?

生水氏:私が入った当時は「ヤミ金」といって、貸金業者としての登録がない者がお金を貸して、法外な金利を要求したり、ひどい取り立て行為を行う社会問題がありました。2000年、2001年にはどんどんそういう相談が増えてきて、法律で禁止されていることなのに堂々と行われていました。しかも、警察も民と民の借金問題ということで民事不介入だという。「それっておかしいでしょ」と、思いました。

「夜道に気をつけろ」

生水氏:資格の勉強のときには悪質業者について、「契約トラブルにはこういう法律を使えば解決できる」と教科書に書いてあったのに、それを言っても事業者は「なんやそれ」みたいに全然対応しない(笑)。「教科書に書いてあることと違うやないか!」と(笑)。経験のない私には全然対処法がなくて、どうしたら相談者を救うことできるのかと悩みました。

 国や都道府県と違って、市役所は悪質業者に対する行政処分権を持っていないんです。だから、事業者に働きかけても「何で呼び出されなあかんねん」と拒否されたら対応する術がない。それを国や県に処分してくれと伝えても、当時はなかなか動かなかった。

 目の前に救わなくちゃいけない人がいるのに、壁というか理不尽さというか、上手くそれがまわらずに打ちひしがれていました。しかも、相手の業者から、「電車のホームでは前に立つなよ」「夜道に気をつけろ」と脅されることもありました。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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