インタビュー

【野洲市 生水裕美氏:第2話】ニコニコして 滞納していた税金を払う市民

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知識を蓄え 悪徳業者と粘り強く交渉

加藤:どうやって『悪質商法』の問題を解決していったのでしょうか?

生水氏:県内の先輩の消費生活相談員や、国民生活センターに電話でいろいろ聞いて教えてもらったり、シンポジウムや知り合いのネットワークの勉強会にも行かせていただき、少しずつ対応ができるようになってきました。消費生活専門相談員やFP2級の資格も取りましたが、結局、解決するためには、自分があきらめずに悪徳業者と粘り強く交渉することが必要だ、というのはすごくわかりました。

ニコニコして 滞納していた税金を払う市民

加藤:その後、困っている方を救うための仕組み化をされていきました。

生水氏:ある日、税金を滞納して税務課へ相談をしていた市民さんが、消費生活相談に来られたんですね。そこで、借金問題を解決することができたのですが、その後に滞納されていた税金を払って帰られたんです。

税務職員が「いくら言っても払ってもらえなかった人が、ニコニコして税金を払いに来てくれた」と驚いていました。市民さんがサービスに満足をしてくださって、払える状態になれば進んで払ってくださるんだな、とそのとき気が付きました。

滞納から始まるSOSのサイン

生水氏:それから、「滞納から始まる市民のSOSのサイン、そこをキャッチすればいいんじゃないか」と考えました。役所に税金や使用料を滞納している方に対して、それぞれの担当課が「借金はないですか?」と声をかけることで、その方を救うことが出来れば、各部署にとってもウィンウィンの関係になるんです。そこから始めたのが『野洲市多重債務者包括的支援プロジェクト』です。

滞納者に支援をできる体制を役所全体で構築

加藤:『野洲市多重債務者包括的支援プロジェクト』とはどのようなものでしょうか?

生水氏:本当に相談が必要な人は、自ら相談に来られることが難しいのです。それは相談窓口の情報が届かなかったり、しんどい時ほど相談しようという気力がなくなるからです。例えば、市民が市に支払うものとして市民税や固定資産税、国民健康保険税、介護保険料、保育料、水道料、学校給食費、市営住宅の家賃などがあります。各課の納付相談のとき、滞納している市民に対して「なぜ払えないんですか?」と声をかけてもらう。当時、「借金がありますか?」と市民さんに聞くのは、プライバシーの問題とクレームがでないか? と他市の自治体職員からよく聞かれましたが、私はこれで相談者からクレームを受けたことはありません。

 そこで、もし借金があれば市民生活相談課を紹介しつないでもらい、当課の相談員がよく事情を聴いて必要に応じて弁護士や司法書士につないで、借金、多重債務の解決をしていく。また、借金の問題だけではなく、生活再建のために必要な行政サービス、例えば、生活保護に繋げるケースもありますし、心のケアが必要な人であれば健康推進課や精神科医にもつないでいきます。そして、相談者が抱える問題が解決したら市民さんは税金を払える状態にもなります。

加藤:滞納に着目するというのは素晴らしい視点ですね。

消費者相談と生活困窮支援を併せた条例を作る

加藤:野洲市では新しく条例を作られたとお聞きしました。

生水氏:2016年に消費者相談と生活困窮支援を包括的に取り込んだ条例、『野洲市くらし支えあい条例』を作りました。検討にあたっては、行政法についてピカいちである京都市職員の岡田博史さんや、消費者法の第一人者である、明治学院大学の圓山茂夫准教授、滋賀弁護士会の土井裕明弁護士、また地域の事業者を代表として野洲市商工会会長をはじめ様々な方にご尽力いただき制定できました。まさに、名前のとおり、支えられて誕生した条例です。ありがたいことに、2017年第12回マニフェスト大賞の優秀成果賞を受賞させていただきました。

 訪問販売という自宅を訪ね、密室での状況下では高齢者を狙った被害が発生しやすい状況にあります。また、相談を解決しようとしても、事業者の所在が分からなかったり、連絡を取ることが出来ず、相談者の被害を救済できない悔しさがありました。そこでこの条例によって全国初の「訪問販売登録制度」というものを作り、今年の10月1日からは訪問販売を野洲市内でするときには、市に登録しないと訪問販売できないこととしました。11月20日現在では、553社に登録いただいています。この登録制度の良かったところは、今までは消費者からの苦情相談があって初めて事業者と話をするので、まずは苦情から事業との関係が始まるのですが、この登録制度によって、苦情がない状態のフラットな関係で話ができるので、市の取組に対する理解を持ってもらえやすいのです。

自分一人で出来ることなんて全くない

加藤:人脈やネットワークはどうやって広げたのでしょうか?

生水氏:ネットワークというと仰々しいんですけど、普通に友達になっていくだけです(笑)。例えば、研修会とか勉強会で、「ちょっと教えて下さい」とか言っている間に仲良くなっていく。良さげな人を見つけたら、「仲間になりましょう!」、飲み会などの場で相手が油断した時に、さっと巻き込んでくとか。気が付いたら、「あ、仲間になってた」、って。

 結局、自分一人で出来ることなんて全くないんです。要所要所にスペシャリストがいて助けていただけている。野洲市の条例を作るのに、違う自治体である京都市長の許可を得て、京都市の職員である岡田さんから全面的に協力していただいた。そういったところが面白い、そして、ありがたいですよね。一生足向けて寝れません!(笑)。

加藤:(笑)。

繋がりは『笑い』と『涙』から

生水氏:繋がりができるのは『笑い』と『涙』からかなって。吉本系の「おち」と「つっこみ」入れながらやってます。関西人なんでね(笑)。

 ちょっとお菓子を食べてもらうと、血糖値が上がって頭がぼーっとしてくる。そのときにお願いごとを刷り込んでいくみたいな(笑)。うちの部署が良い場所にあって、役所の人間が帰るときとか外出するときに通るんです。そこで、呼び止めてお菓子をどんどん渡しながら「ところでね…」みたいな(笑)。

 でも、お願いを聞いてもらう代わりに、彼らに困りごとがあったら必ず相談にのる。例えば、専門的な話であれば、その場で弁護士の先生に電話をして「相談聞いてあげて」という感じでつなぐ。だから、全然私の力じゃないのに、人の力を借りて「お得やん」みたいに思ってもらう(笑)。「使えるものは何でも使う」ことで、みんながお互い助け助けられていくかなっと。互助の仕組みかな。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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