『MICHIKARA 官民協働FORUM2017』が11月22日に日本財団ビルで開催され、官民から約160名が参加した。「自治体、民間企業、地域の3つのチカラで地方創生実現を」をコンセプトに行なわれたこのイベントは、参加者を結びつける場となった。
午前のプログラムでは総務省から神奈川県庁に出向している脇雅昭氏、長谷部健渋谷区長、渋谷区役所渋谷駅周辺整備課長 奥野和宏氏らが登壇し、講演、パネルディスカッションを行った。脇氏は官民連携において行政が『信頼』を活用することの重要性を、また、長谷部区長は行政トップが挑戦を認める風土を醸成することの重要性を述べた。
続くランチタイムでは、興味が近い参加者同士が交流できるような仕組みが企画されていた。自分が話をしたいトピックをアピールするピッチが開催され、先着で20人が発表した。
ランチでは一緒に話をしたい人のもとに集まるという斬新な試みであった。
午後のプログラムでは、はじめに釜石市と日立製作所の連携事例を釜石市役所オープンシティ推進室長 石井重成氏と、日立製作所 CSR・環境戦略本部企画部担当部長の増田典生氏が登壇し紹介した。
続いて、塩尻市役所地方創生推進課 古畑久哉氏、リクルートホールディングス 幸田泰尚氏、信州大学 林靖人准教授らによって、この3者の連携事例が語られた。
行政はそもそも新しいことへ踏み出しづらい文化がある。一方で、企業側にも収益性が不透明な場合には、プロジェクトを進めることの障壁は高い。登壇者による連携事例に共通するエッセンスをやや強引に抜き出すとすると、『とにかく動き出すこと』が重要だという。
しかし、ただ何か始めれば良いというわけではなく、『着眼大局着手小局』という言葉が何度か飛び交った。つまり、大きなビジョンを決して忘れてはならないが、実行可能な小さなことから着手しなさいということだ。ビジョンがあれば、動いたその先に何かが必ず生まれるのだという。
最後のプログラムでは参加者同士、官民交えて深く交流した。各人が興味のある課題を掲げ、その課題が近しいもの同士で4~5人のチームを作り、課題解決の方法やその後に行うべきアクションが導き出された。
イベント全体を振り返ると、参加者同士の交流を深める仕組みの緻密さと、温かい雰囲気を醸成する巧みさがあった。では、それを生み出しているのは何かというと、「MICHIKARA実行委員」個人の能力の高さと、チームワークの強さなのではないかと感じた。実は私がこのイベントに参加して、最も印象的だった点はそこであった。
本イベントを開催したMICHIKARA実行委員会は4人のメンバーで構成されており、今回、各自に役割が存在した。「実験者」塩尻市役所 山田崇氏、「リアリスト」(株)チェンジウェーブ 佐々木裕子氏、「イノベーター」(株)フューチャーセッションズ 野村恭彦氏、「根っこ掘るダー」コクリ!プロジェクト 三田愛氏。
各人がそれぞれの役割のもと、各登壇者に対する質問や意見を述べたが、その個性を随所に垣間見ることが出来た。また、その意見によって参加者の視点を高めたことは間違いない。
そのうちのいくつか言葉を記したいと思う。考えてみれば、彼らは既にMICHIKARAという大規模な官民連携プロジェクトを実現している実践者である。だからこそ、その言葉には重みがあるのだろう。
野村氏[イノベーター]
初めからすごい成功を望まなくていい。ただ「協働するか、しないか」なんじゃないか。昔は協働することが難しい時代だったが、今はすることが当たり前になってきている。
『楽しい』に勝る官民協働はない。(分かりやすい)メリットよりも楽しさに従ったほうがいいのではないか。
佐々木氏[リアリスト]
官民協働には3つの要素が重要ではないか。「動く人×動く人 の出会い」「仲間がいること」「失敗したら『ごめん』と言えること」。
出来ることから始める。まず動かないと何も始まらない。現実に動き出すと嬉しい。嬉しいともう一歩先に行ける。
山田氏[実験者]:
行政も実験者であるべき。だから今、全国で行われることが増えた『実証実験』はとても良い。もっとやるべき。
三田氏[根っこ掘るダー]:
続けることも大事。共感できる多様な人と会い続けると、何か生まれるのではないか。
(行動する)種火は何なのかを意識しないとエネルギーがなくなる。新しくやることも大事だが、やらなくてもいいことを止めることも大事かもしれない。
「やらなくてもいいこと」というキーワードは、「ビルド&ビルド」の文化だと言われる日本の行政運営を考えるうえで、とても大事だと思う。これから先、国も地方公共団体もさらに厳しい財政危機を迎えることとなる。その点においては、コストカットを絶えず行なってきている民間と連携し、「ビルド&ビルド」ではなく、「スクラップ&ビルド」を徹底していくことや、経済的観点から継続可能な事業スキームの構築へ向けて強くコミットしていくことも、行政の価値を高める一つの大きな力になるのだと思う。
イベントの冒頭に、実行委員である塩尻市役所の山田崇氏は「ここから必ず何かが起こることを確信している」と発した。今日この日の新たなつながりが、未来の官民連携事例の創出につながることを願う。(記=加藤年紀)
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