【大垣弥生(おおがきやよい)】
奈良県生駒市いこまの魅力創造課課長補佐。
百貨店で販売推進を10年間担当後、2008年10月に生駒市へ転職。広報広聴課で広報誌の改革、シティプロモーションの立ち上げ、採用広報等に携わる。2016年、新設された「いこまの魅力創造課」に異動。市民PRチーム「いこまち宣伝部」の運営やアウトドアイベント「IKOMA SUN FESTA」の実施など多様な仕掛けで、まちの参画者や推奨者の増加に取り組む。
-大垣弥生氏は、前職のキャリアと持ち前の負けず嫌いを生かし、9年間の広報・プロモーション担当の間に全国広報コンクールでのべ11回入選、読売新聞社賞3回受賞。特に2016年には広報誌、ホームページ、広報企画、動画の4部門で入選するなど、生駒市の広報力を底上げした立役者である。
一方、役所の外では全国の行政広報担当者が学び合う『広報基礎 愛の100本ノック』をフェイスブック上に立ち上げ、自治体広報のレベルアップに貢献した。今回は大垣氏の活動や取り組み、民間企業経験者から見える地方公務員の世界について伺った。
広報スキルや仕事の目的を共有する「100本ノック」
加藤:地方公務員アワードを受賞されましたが、特に『広報基礎 愛の100本ノック』『新100本ノック』の実績で推薦を受けていました。この活動について教えて頂けますか。
大垣氏:福岡県福智町の日吉由香さんと、フェイスブック上に非公開のグループを作って『100本ノック』を始めました。2015年2月のことです。
自治体の広報・プロモーション担当者の集まりで、広報誌の作成に必要な文章の書き方、写真撮影や誌面レイアウトなど、実務の中で培ったノウハウを1本1500文字程度で伝えました。他にも、SNS、メディア対応、危機管理広報、仕事の目的や心構えなど幅広いテーマを投げかけました。
『100本ノック』は、日吉さんと私が50本ずつ合計100本を、実績のあるメンバーが「特別ノック」を随時担当。その後、メンバーが持ち回りでノッカーをつとめる『新100本ノック』に移行し、2017年12月に終了しました。今は、ノックのメンバーが新しいグループ「ひと・まち・つなぐ広報カフェ」を立ち上げ、学びの場を継承してくれています。
最大160人の広報担当者が参加
加藤:すごい数の投稿ですが、どのくらいの頻度で投稿されていたのでしょうか?
大垣氏:1週間に1回です。生駒市は月に2回広報誌を発行しているので、年中締切りに追われています。残業のあと、家事をすませてから、夜中にノックの原稿を書いていました。「何でこんなこと始めたんやろう」と何度も後悔したし、投稿へのコメントが少ないと「読み逃げするなんてありえへん」とイライラして、精神不安定になりました(笑)。
加藤:『100本ノック』にはどのくらいの方が参加したのでしょうか?
大垣氏:30~40人ぐらいから始まりました。メンバーが知り合いを誘ったり、研修や講演の時に紹介してくれたりして、一番多いときで160人くらいまで増えました。
加藤:志の高い広報担当者が160人集まるというのは、すごい会ですね。
いつ狙撃されるかわからない緊張感
加藤:「投稿にコメントをしなければ強制脱退」というルールや厳しい意見が飛び交っていたのが、ノックの特徴の一つでもあると思います。何か目的があったんですか。
大垣氏:誰かに寄りかかっていればいいというマインドを叩き直すことです(笑)。
加藤:「会議に出るなら発言しろ」みたいなものですか?
大垣氏:一生懸命な公務員って「意識高い系」とか言われて、職場で浮いた存在になりがちです。だから、仕事への熱意を表に出すことに慣れていない。ノックを立ち上げたときも、「勉強させてください」と自己紹介はするけれど、後は完全に受け身。これじゃあ、成長できないなと思って。
加藤:実際、すごい数のコメントが付いていて、学生の部活みたいな雰囲気が垣間見えました。
大垣氏:積極的な参加を促すためにエクセルでコメントの回数を管理し、発言を強要しました。「大垣さんにいつ狙撃されるかわからない緊張感がある」と言われるほどでしたが、みんな非日常な空気を楽しんでいた気がします。
加藤:当然、全員がノックの方針に賛同するわけではないですよね。
大垣氏:だから、非公開にして、ディスカッションしやすい雰囲気をつくりました。日頃疑問に感じている職場のおかしなルールや組織の愚痴を吐きだす場にもなって、かなりブラックなときもありました。
加藤:変に隠すという訳ではなく、本音で意見交換できる場を作られていたんですね。
学びが成果につながった
加藤:ノックをやってみて良かったことは何ですか?
大垣氏:目的が明確なグループだったので、広報コンクールの受賞や誌面改革など目に見える成果を出す人が続出したことです。これが単発の研修会や講座との違いです。
ノックが中盤になったときに入会してきた、入庁10年目くらいの若いメンバーがいました。オフ会で初めて会ったとき、「頑張っている姿を見せるってカッコ悪い気がして、恥ずかしいんですよね」と話しかけられたんです。いつもの調子で「しょうもない仕事を続けるほうが、よっぽどカッコ悪いで」と答えました。
半年後、彼が担当した財政の特集は日経新聞で紹介されました。広報から異動した今も、庁内報を発行したり、隣のまちと合同で若手勉強会を立ち上げたりと、頑張りを隠さずに活躍しています。「ノックに出会って、仕事への向き合い方を変えることができた」と伝えてもらったときは、心底嬉しかったです。
広報のノウハウを共有するために始めた活動でしたが、自分たちが何のために働いているのかを確認し合ったことで、マインドまで変える場になりました。やる気のある公務員同士がつながる場をつくって良かったと心から思います。
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 参加者のマインドを変えた熱い勉強会
第2話 自治体同士は学び合い、日本を元気にできる
第3話 組織文化の違いに自信を喪失
第4話 広報の専門性への無理解
第5話 「ラクしたい」から公務員になった
第6話 頑張っても、頑張らんでも一緒やん
第7話 いいまちだと思えるって、幸せなこと