転職当時のミッションは広報誌の改革
加藤:なぜ、『ノック』を立ち上げようと思ったのでしょうか。
大垣氏:話がさかのぼりますが、百貨店時代は広告企画が担当業務の一つでした。プロのカメラマン、コピーライター、デザイナーがそれぞれの業務を担当し、私は企画と商品セレクトと校正だけしていれば良かったんです。
転職当時、私のミッションは広報誌の改革でした。入庁したら突然、触ったこともなかった一眼レフを渡され、取材に行き、文章をまとめ、デザインまでして、40ページくらいある広報誌を作らなくちゃいけなくなった。キャリア採用のはずなのに、未経験の業務内容。先輩に「ほんまに何もできひんねんな」と苦笑いされたほどの仕事ぶりで、「私にできるわけがない」とものすごく落ち込みました。
でも、民間経験者の能力を冷静に値踏みされる空気を感じて、「やらないと」と負けず嫌い精神が疼いたんです。単に私の被害妄想だったかもしれませんが。(笑)
加藤:(笑)
生駒の広報誌に赤入れをしてくれた他市の職員
大垣氏:誌面を良くするノウハウは組織内になかったので、他の自治体の広報誌から学びました。転職してすぐに、全国広報コンクールに連続入選していた新潟県燕市の方の事例発表を聞く機会に恵まれたんです。切羽詰った様子が伝わったのか、「わからないことがあれば、いつでも連絡して」と言ってもらいました。
それ以降、本当に毎号毎号、発行前に誌面を送り、真っ赤に手直ししてもらいながら、基礎的な技術を少しずつ身につけました。半年後に作った広報誌が、運良く全国広報コンクールで入選したんです。生駒市初のことでした。
その結果、入選団体を中心にしたつながりに入れてもらい、さらに多くの方々から知識を教わるようになりました。広報誌はセンスでつくるものではないことを知ったし、生駒らしくアレンジできるようにもなっていきました。私はこの広報ネットワークに育ててもらったと、とても感謝しています。
縦のつながりをフラットなつながりに
加藤:どんな人たちがそのネットワークの中にいたのでしょうか。
大垣氏:私がお世話になった人はフラットでしたが、「レジェンド」と呼ばれる神みたいな存在の担当者も数人いました。その下に第2層、さらにその下に第3層などがあって、ものすごいヒエラルキー。第3層は神と話せないとか(笑)。
加藤:面白いですね(笑)。
大垣氏:当時は「行政広報の価値は、広報コンクール受賞歴が全て」と考える狭い世界にいました。だから、上下関係がわかりやすかったんです。
レジェンドを囲んでいた人に、自分の名刺を片手で受け取られたとき、ものすごく悔しくて。「いつか、この人たちと同じ目線で話せるようになるまで頑張ろう」と決心しました。
加藤:聞いている限りだと、自治体職員らしくない集まりですよね?(笑)
大垣氏:レジェンド達はみんな男性でした。その人たちの技術やマインドを教わる縦社会だったんです。「オレに聞いてるのに、あいつにも教えてもらってたの?」と怒られたこともあったし。
数年たつと同じ志をもった同年代の担当者と切磋琢磨するようになりました。フラットな関係だからこそ気を遣わずに何でも相談し合えたので、こんなつながりが広がったら助かる担当者も多いだろうなと思っていたんです。
加藤:それもノックにつながっているわけですね。
惜しみなくノウハウを共有
大垣氏:そんなときに、日吉さんと「デザインで魅せる見た目重視の誌面がもてはやされて、行政広報の本質が置き去りにされているのが悲しいですよね」と意気投合して、勉強会の企画を温めました。私たち二人は女性。新しいことを始めようとしたとき、仲間の協力も得やすかったんです。
加藤:でも、『100本ノック』では、女王様キャラみたいに扱われていましたよね(笑)。
大垣氏:あれは、雰囲気づくりのための演技です(笑)。
民間企業が惜しみなくノウハウを共有することってないじゃないですか。でも、行政は先進自治体が情報を提供して、みんなで学びあって、日本全体を元気にしていくんですよね。その精神に共感したから立ち上げたグループでした。恐らくどんなセミナーや研修よりも内容が濃かったし、質も高かったと自信を持っています。20年後に同窓会をする約束もしました。もう幹事も決まっているんですよ。
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 参加者のマインドを変えた熱い勉強会
第2話 自治体同士は学び合い、日本を元気にできる
第3話 組織文化の違いに自信を喪失
第4話 広報の専門性への無理解
第5話 「ラクしたい」から公務員になった
第6話 頑張っても、頑張らんでも一緒やん
第7話 いいまちだと思えるって、幸せなこと